微かな光が光輝になるまで



いつの間にか時期は夏。
僕たちが通う小学校も、あと一週間で夏休みに入る。

そんな中、ある人物がこんなことを言ったのだ。



『海、行こうぜ!!』



その発言者は真太郎である。
僕の出身地は日本の中でも熱い気候の場所で、この時期の海は本当に楽しいのだ。

そんな真太郎の提案に誰もが頷いた。
つまり……


『『『海だーーー!!!』』』


海に来たってことなんだよね!!
水着持参で僕たちは近くの海へやってきたのだ。

……けど、ただで海で行かせない人がいるわけで。


『名前、空、真太郎。トレーニングメニューは忘れてないだろうな?』

『ギグッ』

『え〜っとぉ……』

『忘れるわけないだろ、悠さん……』

『そうだよな。じゃ、まずは砂浜で走り込み10分、普通のダッシュ20本、伏せてからのダッシュ20本、ドリブル10分。後は…』


そう、兄さんである。
僕たちの顔がだんだんと引きつってきていることを兄さんは気づいていないんだろうな……。だって楽しそうに練習メニューを言っているんだから。


『『『はぁ〜い……』』』


約束は約束だ。
言われた通り練習しよう。



***



砂の上での練習。
思うように足が動かないので、パスも頭の中で思い描く軌道で飛んでいかないし、シュートを打とうとすればボールを上手く蹴ることができない。

砂の上ってこんなにも難しいんだ……!
前の僕だったら落ち込んでいたかもしれないけど、今の僕はやる気がわいてくる。やってやるんだって気持ちがね!


そう思っていた時だ。



『ひゃっほーーーう!!!』



海に響いた誰かの声。
……数秒後、近くに誰かが着地した音が。


『なにやってるんだ? ん? ……お、サッカーやってるのか!』


音が聞こえた方へ振り返れば、そこにはやや肌が焼けた少年がいた。明るい人なのか、笑顔がまぶしい。これが陽キャラってやつか……。


『う、うん。そうだけど……うわあっ!!?』

『ん? あぁわりぃ。いつもの癖でサーフボード飛ばしちまった』


そう思っていた時、突然響いた大きな音。
それは少年の近くへ落ちてきたサーフボードによるものだった。


『いやあ、驚かせてすまんな!』


僕の驚いた声に謝る少年。
……それについては別に気にしてないけど、その……。


『な、なんでそんなに僕を見るの……?』


めちゃくちゃ僕を見てる。
何か僕の顔についてる?
それならそうと言ってほしいんだけど……恥ずかしいから。


『お前、誰かに似ているんだよなぁ……。あっ、思い出した!苗字悠に似てるんだ!!』


そう思っていた時だ。少年の名前から兄さんの名前が出てきたのは。
だからなのか、僕は思いっきり目を見開き、驚いているってことを教えてしまった。



『俺に何か用かな?』



自分を呼ぶ声が聞こえたからか、兄さんが近づいてきた。
兄さんの声を聴き、少年は振り返る。その少年の反応は……


『すっげぇ! ホンモノだ!!』


兄さんを知る人って感じの反応だ。
つまり、ファンってこと。

……僕にとっては苦手なタイプの人だ。だって、そういう人はみんな、僕を嫉妬の目で見るから。

ちなみになんで兄さんの名前が知れ渡っているのかと言うと、少し前にテレビで紹介されたんだ。それもサッカー関係の特集で、兄さんを取材しに来たんだよ!

その番組をリアルタイムで見たんだけど、プロのサッカー選手も兄さんに注目していたんだ。それだけで自慢だよ、僕は!


……って、話が逸れた。
つまり言いたいことは、兄さんを知っている人は思っているより多いかもしれないってことだ。

でも、これまでにチームに入ってくれたメンバーは兄さんのこと知らなかったんだよねぇ……。
そう思っていた時だ。



『苗字悠、俺と勝負しろ!』



少年が兄さんに勝負を申し込んだのは。





2024/03/30


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