微かな光が光輝になるまで



『お、みんなおかえり。おや? その子は?』



いつもの練習場所へ戻ると、こちらに気づいた兄さんが声をかけてくれた。そして、一人増えていることにも気づいた。

……今からこの人の紹介をするよ。


『ただいま、兄さん。この人は前に萄兄さんが言っていた従兄弟さんの絵野修二さん』

『あぁ、君が!』


兄さんは萄兄さんが言っていた従兄弟のことを覚えていたようで、表情が明るくなった。まさか、まだOK貰えてないのにチームに入ったとか思ってないよね……?


『初めまして。俺はこのチームでコーチをしている苗字悠。君のことは萄からいろいろ聞いてる、会えてうれしいよ』

『え、えっと。貴方のことは萄と名前さんから聞いてます。絵野修二です。よろしくお願いします……』


兄さんと絵野修二さん……修二兄さんが自己紹介を終えた後。練習中だったメンバーも自己紹介をした。
人が多いからなのか、修二兄さんは萄兄さんの服をつかみながら自己紹介してたなぁ……。


『修二はDFだって萄から聞いてるよ。是非このチームでもDFをやってもらいたいんだけど……』

『もともとそのつもりで来ました』


まただ。あの雰囲気……先ほどまでの弱弱しさを疑ってしまうような口調。
兄さんもそれに気づいたのか、一瞬だけにこにこしていた顔が真顔になってた。


『僕が言えたことじゃないですけど、萄は結構サッカーが下手で、自信がなさげでした。普段は明るいけど、サッカーのことになると不安になる萄が、こんなにも自信満々になってたことにずっと驚いていたんです』


めちゃくちゃ喋るようになった……。
きっとこれは余計なツッコミだから黙っておこうっと。


『そんな萄が変われたこのチームがどんなものなのか……興味があるんです』

『へぇ。じゃあその言葉は、チームに入るって意味でとらえていい?』


兄さんはそう問うた。
その問いに対し、修二兄さんは迷わず頷いた。


『僕も負けたくないですから。ブランクあるし、萄に負けてられないもん』

『言ったな? 俺だってお前のDF破ってやるんだからな!』

『ふふん、それじゃあどれだけ成長したのか見せてもらおうかな!』


というわけで、修二兄さんが正式にチームに加入することになった。
修二兄さんは萄兄さんと簡単な試合を始めちゃったので、それを観戦することになったんだけど……それが終わったと、DF陣が修二兄さんに言い寄ってた。

どうやらDFに新しいメンバーが増えたことが嬉しかったらしい……。まあDFは2年生組が多いし、修二兄さんもきっとすぐに打ち解けられるだろう。一度怖い思いをさせた真太郎もDFだけど。


『絵野修二、か。また面白い人がチームに加わったな』

『これも悠さんと名前ちゃんのお蔭です。ありがとうございます!』

『顔上げろって。それに、修二の件は名前の力だろ?』


な?
そう言って僕に問う兄さん。

その場にいなかったのに、どうして僕の力だって言いきれたんだろう?
むしろ、僕はお礼を言う方だ。


『ううん、そんなことないよ兄さん。むしろ、修二兄さんは僕に強い影響を与えてくれたんだ』

『へぇ、どんなのだ?』

『兄さんなら分かってると思うけど……僕、修二兄さんと同じで人が怖いと思うことがあった。だけど、いつの間にかそう思うことも少なくなってきて、今日は修二兄さんに考えていることを伝えられるようになった。人を怖いと思わなくなったんだって強く実感できたんだ』


だからね、兄さん。
僕は兄さんの方へと身体ごと向いた。兄さんも僕に合わせて身体ごとこちらへ向いてくれた。



『___ありがとう、僕にチームを作ろうって言ってくれて』

『!』



兄さんが目を大きく開く。
そんなに僕の言ってることおかしかったかな……。ちょっと恥ずかしくなったから、すぐに目をそらした。

それに、お礼を言う人は兄さんだけじゃない。


『萄兄さん。僕が人を怖くなくなったって思う機会を与えてくれてありがとう』

『どーいたしまして。って、そんなつもりはなかったけどな』

『えへへっ、じゃあ……お互いに「ありがとう」だね!』


自然と上がった手は、萄兄さんの手と重なった。
それはお礼の意味である握手となった。




***



■人物紹介


絵野えの 修仁しゅうじ

茶髪でサラサラした感じの髪を1つに結んでいる髪型が印象的な男の子。瞳の色は赤。一人称は「僕」
前に所属していたサッカーチームでの苛めにより、家に引きこもっていた。その間に絵を描くことの楽しさを知ったようで、絵を描くことが好き。人間不信になる前は塩対応だったとのこと(萄談)。
歳は名前の1つ上。

髪型のイメージは「Free!」の「松岡 江」。





2024/03/30


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