対 真・帝国学園
「だ、誰っ!!?」
突然腕を掴まれ、反射神経で後ろを振り返る。
そこには知らない男の子が立っていた。
「あんたが光のストライカー、苗字名前だな」
「そ、そうだけど……君は?」
知らない男の子に名前を知られている。けど、サッカーボールを持ってるから、サッカーやってる人という事で落ち着く。
自意識過剰のつもりはないけど、それなりに名前を知られているみたいだし、多分僕の試合を見ていた人じゃないかな。そう判断した。
「俺は『不動明王』。……影山総帥が、あんたをご所望だ」
「! 影山だって!?」
僕は思いっきり腕を振る。不動と名乗った男の子はあっさりと僕から腕を離した。
「どうした苗字!」
「円堂さんっ」
声が聞こえ振り返れば、そこには携帯を持った円堂さんがいた。
「おせぇ」
「っ、! なんだよ、いきなり!」
……突然、横から風を斬る音が聞こえた。
それは、隣に立っている不動という人が、円堂さんに向けてボールを蹴ったからだ。
「円堂君!?」
「……誰?」
騒ぎを聞きつけたのか、秋ちゃん先輩と夏未先輩が駆け寄ってきた。その隙に僕は3人の元へと逃げる。
「愛媛まで時間掛かりすぎじゃね、ってこと」
「なんだ、彼奴は?」
時間が掛かりすぎ?
一体何の事を言っているの?
そう思っていると、ヒールの音が聞こえた。瞳子姉さんだ。
「君、真・帝国学園の生徒ね」
「えっ!?」
真・帝国学園の生徒!?
なんで瞳子姉さん分かったの!? 僕、全く気づかなかったんだけど!
「そっちこそ遅いんじゃない? ……人を偽のメールで呼び出しておいて、今頃現れるの?」
偽のメール?
話が読めない。だって僕達は響木さんからのメールで愛媛に来たわけで……って、まさか!
「監督、偽のメールって?」
「そもそも、私達をここ愛媛まで誘導した響木さんのメールが偽者だったのよ」
「えっ」
「もう確認済みよ」
瞳子姉さんの発言は、僕が考えていた内容そのままだった。
じゃあ、偽のメールは一体誰が?
……そんなの、瞳子姉さんがあの不動って人に話しかけている事が答えだ。
「すぐに分かるような嘘、何故付いたの?」
瞳子姉さんの言葉に、相手は何を考えているか分からない笑みを浮べている。
「俺、不動明王って言うんだけど、俺の名前でメールしたらここまで来たのかよ?」
僕だったらスルーだね。まあ、内容は一応確認するけれども。
「響木の名前を語ったから、色々調べて愛媛まで来る気になったんだろ? 違うか?」
「そうね。で? あなたの狙いは何?」
そうだよ。この人は何故、僕達を愛媛まで呼んだのかが気になるんだよ。
わざわざ響木さんの振りしてまで僕達を呼んだんだ。何を考えているんだ?
「なあに、あんたらを真・帝国学園にご招待してやろうってのさ」
招待……何故?
そう思っていると、相手が誰かを捉える。その視線の先にいたのは……鬼道さんだ。
「あんた、鬼道有人だろ? うちにはさ、あんたにとってのスペシャルゲストがいるぜ?」
「スペシャルゲスト?」
鬼道さんにとってスペシャルゲスト?
……何故だろう、嫌な予感がする。
「ああ。___かつての帝国学園のお仲間だよ」
嫌な予感が的中した。
それと同時に疑問が生まれる。
あの人達は直に感じ、体験したはずだ。影山という人がどれだけ非道な事を行ったのかを。
「あり得ない……影山の汚さを身をもって知っている帝国学園が、彼奴に従うはずがない……!」
鬼道さんの言う通りだ。
何かの間違い、あるいはあの人の嘘に違いない……!
「そうだ、絶対にあり得ない!」
「下手な嘘を付くんじゃねーよ!」
「はぁ? だったら俺の目が可笑しいのかよ?」
「貴様……! 誰がいるって言うんだ、誰が!!」
「おいおい、教えちまったら面白くないだろ? ___着いてからのお楽しみさ」
相手はこの状況を楽しんでいるかの様に笑った。
僕はその笑みが読めなくて、不動明王という人に対する不信感が深くなる一方だった。
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2023/8/17
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