対 ジェミニストーム
どこか既視感を感じる今の状況。
いや、既視感というか前半戦の時にあった。
女の宇宙人がボールを持っていて、鬼道さんと一之瀬さんがボールを奪おうと様子を窺っている状況。
前半戦ではボールを奪えず、点を取られてしまった。
……またボールを通す気ですか、2人とも。
「!」
宇宙人がパスを出した。
その先には当然別の宇宙人がいて、ボールを受け取ろうと待っている。
……また攻撃が来る!
そう思って下がろうと思った時だ。
「 ”フレイムダンス”!」
一之瀬さんが必殺技でボールを外に出したのだ。
それってつまり、動きが読めたってことだよね?
「やったな、すごい技じゃないか!」
「何故分かったんだ?」
僕も一之瀬さんの元に駆け寄り、鬼道さんの質問の答えを待つ。
「クセがあるんだよ。パスを出す方向が分かるんだ」
「クセが?」
「宇宙人にもクセがあるんだ」
一之瀬さんに聞いた宇宙人のクセをインプットした所で試合再開。
再びあの女の宇宙人が攻めてきた。
そこを塔子さんと一之瀬さんが立ちはだかる。
先程一之瀬さんに教えて貰ったクセとやらを見るため、ジッと宇宙人の顔を見つめる。
「!」
分かった。
あの宇宙人はパスを出す瞬間、舌舐めずりをしている!
宇宙人が舌舐めずりした向きが、パスを出す方向って訳か!
そう思ってパスを出すであろう方向を見ていると、一之瀬さんが間に割り込み、ボールを奪った。
よし、僕も分かったぞ!
「さあ、俺にシュートを打たせろ!」
「……よし!」
一之瀬さんが吹雪さんにボールをパスする。
当然目の前にはDFが立ちはだかっているわけで。
また同じ事の繰り返しになるのでは、と思ってしまう。
相手は吹雪さんを警戒している。
僕がもし吹雪さんのポジションだったら、今ノーマークの……と思っていた時だ。
「来たな。……染岡!」
なんと吹雪さんがパスを出したのだ。
それも、ゴール前で。
ゴール前で他の人にパスを出すということは、シュートを譲ったって意味になるわけで。
……確かに相手は吹雪さんを警戒して、染岡さんをマークしてなかった。だから僕は、染岡さんにパスを出した方がいいのではって思ってた。
だが、吹雪さんは自分でシュートを打ちに行くだろう。そう思ってたから、吹雪さんの行動に驚いてしまった。
「いけェ!!!」
染岡さんが必殺技を使った。
だがその必殺技は”ドラゴンクラッシュ”ではなく、見た事の無い必殺技だった。
もしかして、新しい必殺技!?
「何っ!?」
吹雪さんのシュートが来ると思っていたのか、それとも単に不意を突かれたのか、相手は動けないままゴールを許した。
「よっしゃああああッ!!」
1-1
後半戦でようやく一点を奪い返した!
「やったあっ!!」
「遂にエイリア学園から一点を奪ったぜ!!」
皆が染岡さんの元に集まっていく。
僕もその1人だ。
「よーし! やったぞ染岡!!」
「どうだ、決めてやったぜ!」
「あの技は”ドラゴンクラッシュ”の進化版、”ワイバーンクラッシュ”と呼ぶべきでしょう!」
あ、また必殺技に名前着けてる。
目金さんにそう思っていると、少し離れた所にいた吹雪さんが口を開いた。
「ふんっ。まだ勝ったわけじゃねーだろ。決勝点は俺が決めてやる」
そうだ。
まだ勝ったわけじゃない。同点に並んだだけだ。
それに試合時間もそう残っていない。
……ここで点を奪われ、差を開けてはいけない。
とは言え、守りに入りすぎて延長戦で勝ちに行けるとは思えない。
どう動くか……ちゃんと考えないと。
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2022/2/20
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