参戦! 雪原の皇子
「お前なぁ……一之瀬も鬼道もこっちに回せって掛けてるだろうが!」
「だって……僕、いつもこうしていたし」
「白恋じゃそうでも雷門じゃそんなの通用しねーんだよ! お前は雷門イレブンに入ったんだ。俺たちのやり方に合わせろ!」
「そんなこと急に言われても……そういう汗臭いの疲れるなぁ」
「誰が臭いって!? 誰が!!」
「まあまあまあっ」
「落ち着け、染岡!」
吹雪さんの発言が頭に着たのか、染岡さんの怒りがピークになる。
そんな染岡さんを一之瀬さんと土門さんが押さえ込む。
別に吹雪さんの肩を持つわけじゃないけど、今までやってきたことがダメだと言われる気持ちは分かる。
僕がこれまで出た大会は、兄さん以外知らない人ばかりだったから、他の人と合わせるって結構難しいんだよね。
でも、そんな問題すらも兄さんは考慮して、今いるメンバーに合う方法を導き出していた。
それを雷門でできるかといえば……まぁ、染岡さんがあんなんじゃ、ちょっと厳しいかなぁ……。
「とはいえ、世界トップレベルのチームの中には、個人技を活かしたプレイスタイルを重視する所もあります」
「つまり、白恋中は吹雪さんを中心としたチームって事ですね」
「僕の台詞……」
目金さんが何か言っている様な気がしたけど、多分気のせいだね、うん。
「雷門は雷門だ! 白恋じゃねぇ!!」
いや、そんな怒鳴って否定することはないじゃないですか、染岡さん……。
目金さんと壁山がビビってますよ?
「どんなにスピードがあろうとも、こんな自分勝手な奴と一緒にやれるか! 無理なんだよ……こいつに豪炎寺の代わりなんて!」
そっか、染岡さんがなんで吹雪さんを嫌っているのか分かった。
吹雪さんを豪炎寺さんの代わり……つまり、エースストライカーだと思い込んでいて、それを認められないんだ。
そもそも、染岡さんは考え方を誤ってる。
そう思って静まり返った空気の中、口を開こうとした時だ。
「どうかな。……俺は吹雪に合わせてみる」
静寂を破ったのは風丸さんだった。
「はぁ?! お前、何言って……」
「俺には吹雪のあのスピードが必要なんだ。エイリア学園からボールを奪うには、あのスピードがなくちゃダメなんだ。……そうでなきゃ、また前の繰り返しだ」
どこか風丸さんの表情は暗くて。
僕はまだエイリア学園の実力について把握してないから、彼らの実力がどれほどなのか分からない。
だけど、風丸さんがあれだけ思い詰めたような表情をしているということは、相当な強さなのだろう。
「だったら、”風”になればいいんだよ」
「え、風?」
「おいで、見せてあげるから」
吹雪さんが向かった先は、白恋中の校舎裏だ。
「すげ〜、校舎の裏がゲレンデなのか」
そこはなんと、ゲレンデになっていた。
すごい、テレビでしか見たことない景色が目の前にある……!
こういう場所でスキーとかスノーボードをするんだよね?
「名前。キョロキョロし過ぎよ」
「だ、だって……ゲレンデなんて初めて見たから……っ」
春奈からの言葉にそう返していると、ヘルメットを被った吹雪さんがスノーボードに乗って現れた。
「スノーボードか!」
「それでどうやって……?」
「まあ見ててよ。雪が僕達を風にしてくれるんだ!」
風丸さんの問いに吹雪さんはそう答え、ゲレンデへと滑り降りた。
「すご〜い!」
「かっこいいッス!」
「やるな〜、吹雪!」
「ハッ、ただのスノボじゃないか」
僕はスノーボードなんてやったことないから、率直な感想しか出てこないけど、何か楽しそう……!
「吹雪君は小さい頃からスキー、スノーボードが得意で、よく遊んでいたんだって! 走るよりも雪を滑る方が、もっと速くなって風を感じるから好きだって言ってた」
へぇー。
長年やってるものがサッカーに影響を与えているわけか。
白恋中の女子選手の言葉に、様々なものがサッカーと紐付けることができるんだと思っていた時。
「みんなー、よろしくー!」
「「「はーい!!」」」
さっきからずっと思っていたこと……白恋中の人達が自分たちほどの大きさの雪玉を前にゲレンデに立っていると思ったけど、まさか___あれを転がす気!?
「危ないッ!」
円堂さんが思わず声をあげる。
しかし吹雪さんは雪玉をジャンプして軽々と躱したのだ。
着地した先にも雪玉が……と思ったが、それも分かっていたのか躱す。
「すげーな……。雪玉のめちゃくちゃな動きを完璧に見切ってるぜ!?」
「吹雪君が言うには、速くなればなるほど感覚が研ぎ澄まされて、自分の周りのものがはっきり見えてくるんだって!」
「確かに速いよ!」
「この特訓、面白そう!」
「あぁ! 俺もやりてぇ!」
僕もやりたい。
だけど吹雪さんみたいにあんなに雪の上を滑ることできるかな……。
あとで教えて貰えないかなぁ……。
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2021/11/14
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