参戦! 雪原の皇子



「え、監督にトレーニングメニューを聞きに行く?」

「はい! 僕、瞳子姉さんのトレーニングメニューやりたかったのに、空気を呼んで我慢したんです」

「……分かった。自主トレ付き合ってくれてありがとう」


暫くして瞳子姉さんのトレーニングメニューをやりたいと風丸さんに言えば、意外とすんなり許して貰えた。
と言うわけで休憩エリアにいるであろう瞳子姉さんを探す。

……あ、いた!


「瞳子姉さーん!」

「あら名前。どうしたの?」


携帯を見ていた瞳子姉さんの元へ駆ける。
僕の声に気づいた瞳子姉さんは携帯をしまい、こちらを向く。


「僕、瞳子姉さんが考えたトレーニングメニューやりたい!」

「……作ってないわよ、そんなもの」

「え?」


どうやらあの発言は、自主トレをしろと言っても従わないメンバーに自主トレをさせるために言ったらしい。
つまり……最初からトレーニングメニューなんて存在しなかった、というわけだ。


「えー、そんなぁ。……あ、じゃあじゃあ! 僕にだけメニュー作ってよ!」

「え?」

「自然相手も悪くないけど、瞳子姉さんの作るトレーニングメニューが気になるんだ!」

「……へぇ。言うようになったじゃない。昔の貴女からは想像できないわね」


いいわ、作ってあげる。
そう言って瞳子姉さんはタブレットを取りだした。

何か操作した後、僕にそのタブレットを手渡した。


「この内容を残りの時間までに出来るかしら?」

「……余裕」


内容をざっと確認し、瞳子姉さんを見上げる。
きっと今の僕は、嬉しさを隠しきれなくてニヤニヤしているんだろうな。口が緩んでいる気がするもん。


「じゃ、行ってきなさい」

「はーい!」


タブレットを落とさないように持ちながら、一つ目のトレーニングメニューに利用する場所へ向かった。



***



「お、帰ってきた!」

「どーもー」


トレーニングメニューを終え、休憩エリアへ戻ってきた僕。
そこには既にメンバーが揃っていた。


「風丸と分かれたあと、誰も行き先を知らないって言うから、迷子になったのかと思ったぜ」

「心配してくれたんですか、染岡さん?」

「ば……、ち、ちげーよ!!」

「えー、ざーんねん」


なーんだ。心配してくれてたわけじゃなかったんだ。
ちょっと悲しいかも。


「苗字、お腹空いただろ? おにぎりがあるぞ!」

「えっ!? おにぎり!? 実はお腹が空いてたんです!」

「食べるのは手を洗ってからよ」

「はーい」


夏未さんに言われ、手を洗って再び戻ってきた後。
円堂さんからこっちこっち、と僕を呼んだ。

そこには大量のおにぎりが山盛りになっていた。
……これ、完食できるのかな。


「……お。このおにぎり、すっごい塩の味がする」

「え、マジ?」

「はい! すっごく美味しいですよ!」

「嘘だろ〜?」


僕がおにぎりの味を褒めると、あり得ないと言った様子でこちらを見る一ノ瀬さん。
……僕、味覚ははっきりしてますよ。ただ塩辛いのが好きなだけです。


「……あれ、なんで夏未さん嬉しそうなんですか?」

「え? な、なんでもないわよ」

「ふーん、そうですか」


僕には夏未さんがガッツポーズしているように見えたんだけど……気のせいだったかな。





2021/11/3


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