参戦! 雪原の皇子



しばらくしてキャラバンが出発。
僕の席はというと……


「へぇ〜! 染岡さん物知り!」

「ははっ、まだまだこんなものじゃないぜ?」


先程と変わらず染岡さんの隣だ。


「さっきまでの喧噪が嘘みたいだ……」

「染岡と苗字が仲良くなってくれて良かったぜ!」


染岡さんと喋っていた僕が、風丸さんと円堂さんがそんなことを言っていた事を知らない。


「急に仲良しになったな、2人とも」

「妹ができたみてーな感じでさ、なんか甘やかしたくなるんだよな」

「苗字は兄ちゃんがいるから、自然と妹らしい雰囲気が出てるのかもな」


自然と出てる妹さって何。
土門さんの言葉に首を傾げる。


「まあでも、染岡さんなら良いお兄さんになれるよ!」

「良いお兄さんになれるなんて初めて言われたんだが……」


苦笑いを浮べる染岡さんを見ていた時だ。


「苗字」

「ん? なあに鬼道さん」

「敬語」

「……あ」


鬼道さんの言葉にそういえば、と思い出す。


「いやあ〜。今まで歳の近い人に対して敬語なんて使ったことなかったので、中々慣れないですー」

「何でだろう……敬語を使っているはずなのに敬語に聞こえない」

「何でですか!! どうしてですか!! 酷いです、一ノ瀬さああああん!!」

「俺は一之瀬じゃねぇ!!」


目の前にあった肩を掴み大きく揺らす。
僕の目の前は染岡さんしかいないので、必然的に染岡さんの肩を揺らすことになる。


「さっきより楽しそうだな」

「ええ」


その様子を『財前塔子』さんと木野さんが遠くから見ていた事を僕は知らない。



***



「そういえばこれから北海道に向かうんですよね? 何しに行くんですか?」

「……」

「えっと……染岡さん?」

「北海道にいる『吹雪士郎』さんって方をチームに入れるためよ」

「あ、ありがと春奈」


北海道へ向かっている事だけは響木さんから事前に知らされていた。
だけどその目的だけは聞いていなかったのだ。

なのでその理由を染岡さんで聞いたんだけど……。


「……」


そういえば春奈が言っていたっけ。
豪炎寺さんが抜けて、染岡さんが少し気が立っているって。
染岡さんに豪炎寺さん絡みの話をするのは暫くやめておいた方がいいな。


「ねー春奈ー。その吹雪士郎って人、すごいの?」

「調べて出てきたのは噂ばっかりだったんだけど、それでもいい?」

「うん、いいよ」


どうやら僕がキャラバンに加入する前にその吹雪士郎って人について調べたらしい。
出てきた内容としては、『熊殺しの吹雪』やら『1試合10点。たった1人で叩きだした』やら『熊よりでかい』やら『ブリザードの吹雪』……と、全て噂らしい。

しかも公式試合に参加したことがないようで、画像も録画での試合記録もないそうだ。


「フットボールフロンティアに出たことないのかー。じゃあ僕も知らないね」

「小学生部門でも?」

「北海道の中で選ばれた選抜メンバーのチームを見かけたことはあるけど、当たったことなかったから」


もしかしたら出てたのかなぁ。
でも強かったら僕の耳にも入ってるはずだけど。


「なんだか名前とは逆ね」

「逆?」

「噂ばかりの話は共通してるけど、これだけ実力があると言われているのに公式記録があるとなしってとこ」

「……なるほど」


知らない人に対してあまり興味がない僕。
円堂さんみたいに面白そうな人だったらいいなぁ。





2021/10/31


prev next

戻る














×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -