参戦! 光のストライカー



「名前」


適当にボールで遊んでいると、後ろから瞳子姉さんが話しかけてきた。
ボールを蹴るのを止め「なあに?」と後ろを振り返る。


「本当に10人を1人で相手にするつもり?」

「瞳子姉さんも春奈みたいな事言うー。大丈夫だってば」


元より一点も取らせないつもりだから。
そう付け加えると「大した自信ね」と瞳子姉さんが小さく微笑んだ。

久しぶりに見た瞳子姉さんはあの頃のような優しさがなく、少し怖いと思ったけど何も変わってない。僕の知る瞳子姉さんだ。
……それよりまだなの?


「ねぇまだー!?」

「終わったー!!」

「よし!!」


僕と瞳子姉さんが少し話している間に雷門はアップを終えたようだ。
ならば次にやるのは一つだ。


「さぁ、始めようよ。瞳子姉さん」


視線を瞳子姉さんの方へ戻してそう言うと、「ええ」と一言返事が返ってきた。



***



「苗字の強さは『スピード』。そして、そのスピードを維持する『体力』だ」

「それに加え、必殺技を使用しない状態でのシュートの威力……ただ者ではないな」


お兄ちゃんと風丸先輩が名前の分析を行っている。
私はサッカー自体したことがないから、みんなみたいなプレイはできないけどこれだけは分かる。

私の友達である苗字名前はすごいサッカープレイヤーなんだって。


「その事なんだが……恐らくだが、苗字は必殺技を使ってくる」

「本当か!?」

「ああ」


先程名前が言っていた言葉を思い出す。


『僕、秋葉名戸との試合では実力の半分も出してないから』

『最高の試合を約束してくれるなら、もう少し待ってあげる』


きっとお兄ちゃんは、名前があんなことを言っていたからそう予想したんだと思う。


「俺が知っている苗字の必殺技はいくつかあるが……使用してくる可能性が高いのは二つ。一つはシュート技、もうひとつはオフェンスとディフェンスのどちらにも使用できる汎用性の高い技だ」

「オフェンスとディフェンス両方を兼ねる必殺技……!?」

「ああ」


お兄ちゃんはキャプテンの驚いている声に相づちを打って、既にフィールドの中にいる名前を見た。


「苗字名前という選手はGK以外のどのポジションにも適応できる。彼奴らしい必殺技と言えるだろう」


確か名前という選手について調べたとき、いろんなポジションに配置されていたと思う。
特に多かったのはMFみたいだけど、次に多かったのはFW、ついでDFだ。
守りに下がっていた試合のデータは少なかったけど、どの試合データでも名前はDFとしての役割を全うしていた。

名前について色々と調べているとこんなものが出てきた。当時小学生である名前と名前のお兄さん二人によるダブル司令塔による試合だ。
兄妹による息ぴったりの指示は他のチームメイトを易々と動かしており、すごいとしか言えなかった。
いくら日本全国から集められた選手とは言え、これが小学生による試合だとは思えなかった。


「ふん。すごい必殺技を持ってるか持ってないかは知らねーが、一点は取らせて貰う」


染岡先輩は吐き捨てるようにそう言うと、グラウンドに入っていった。
続くように他のみんなもグラウンドへと入っていった。





2021/06/21


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