対 世宇子中



僕が思ったとおりに、後半戦は既に開始されていた。
フィールドを見れば、既に地に倒れている雷門イレブンが目に入る。
まだ後半戦が開始されてそんなに経っていないはず……。

今フィールドに立っている雷門イレブンは円堂さんただ一人……。
アフロディさんの蹴るボールは、円堂さんに向けて放たれているもので。
はっきり言って勝ち目はない。
倒れた円堂さんを、雷門イレブンを見る事ができず目を瞑った。


「……?」


瞑っていた目を開けた。
視界に入ったフィールドでは、倒れていた雷門イレブンが立ち上がっていたのだ。
会場からも応援の声があがる。


「圧倒的な強さを前にしているのに、諦めない……。そうだ、円堂守という人はそういう人だった」


帝国学園との練習試合でもそうだった。
圧倒的な強さだったのに、あの人は諦めなかった。
……だから僕は、あの人に惹かれたんだ。


「!」


……なんと、円堂さんは上半身を後ろへと捻ったのだ。
そして円堂さんの周りに発生したオーラ。


「“ゴッドノウズ”ッ!!!」


アフロディさんの声が此処まで聞こえてきた。
どこか怒りの表情をしているアフロディさんが、何故か目に焼き付いた。

放たれた、アフロディさんの必殺技。
その“ゴッドノウズ”は、今まで見た中でも威力が高いもので。


「……なに、あれ…っ」


円堂さんの方へ視線を向けた瞬間、目が見開く感覚がした。
円堂さんの背後に現れたのは……魔神だ。
もしかして、あれが……


「“マジン・ザ・ハンド”……?」


円堂さんが見せた必殺技は、“ゴッドノウズ”を完璧に止めた。
その光景に、盛り上がる会場。


「止めた……っ、止めたぁっ!!」


僕も、その盛り上がる観客の一人で。
きっと僕の声は周りの声でフィールドにいる人達には聞こえないだろうけど。

ボールは鬼道さんへと渡った。
DFの必殺技に掴まるも、ボールは豪炎寺さんの元へ。
二人の連携シュートが世宇子中ゴールへ向かっていった。


「入った……!」


1-3
ついに雷門イレブンは一点を獲得したのだ。

世宇子中のキックオフで試合再開。
ボールはアフロディさんへと渡り、一人突っ込んでいく。
そして“ゴッドノウズ”の体勢へと入った。

対する円堂さんは、“マジン・ザ・ハンド”を使った。
あの一瞬でものにしたんだ……!
円堂さんは“マジン・ザ・ハンド”で、アフロディさんのシュートを完璧に止めた。……もう、円堂さんからゴールを奪う事はできないな。
何故かそう思った。


2-3
____2点目



3-3
___3点目
雷門イレブンはあっという間に同点にまで追いついた。


「……」


膝を着いたアフロディさんの横を通り過ぎ、円堂さんはゴールを離れた。……あの不死鳥の必殺技だ。
一之瀬さん、土門さん、円堂さんが交差した部分から発生したパワーにより、不死鳥が現れた。
炎に包まれたボールに向かって上がっていったのは豪炎寺さんだ。
4人による合体技が世宇子中ゴールへ向かっていった。


「……逆転した」


4-3
雷門が逆転したのだ。
そして鳴り響いたホイッスル。___試合終了のホイッスルだった。

雷門が世宇子中に勝ったのだ。
それは同時に、フットボールフロンティアを優勝したと言うことでもあった。

前半戦を見ていたときは絶対に勝てない、って思ったのに……。
やっぱりあの日、帝国学園との練習試合を見て正解だった。


「……おめでとうっ、雷門!!」


周りに負けないような大きな声で、雷門イレブンに賞賛の声を送った。
僕の声は、会場の熱気に紛れていった。





2021/02/21


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