対 世宇子中



お化けの正体……ではなく、壁山と影野さんが見たという影は、イナズマイレブンのOBの方だった。
響木さんは、壁山と影野さんが見たと言った影の正体をなんとなく分かっていたらしい。

で、OBの方達が何故此処にいるのか。
それは、


「『“マジン・ザ・ハンド”養成マシン』、ね」


これを持ってきていたらしい。……これ絶対重いよね。どうやって運んだんだろう。
現在、イナビカリ修練所にて、その“マジン・ザ・ハンド”養成マシンを見ているサッカー部の人達の背後にいる僕。
壁によりかかって腕を組み、ジーッとその養成マシンとやらを見つめる。

これは、“マジン・ザ・ハンド”のポイントとなる『臍』と『臀』の使い方らしく、そのポイントを重視できるように40年前に作ったものらしい。
……だが、完成はできなかったようだ。


「あのマシン、どうやって動かすんだろう……」


OBとサッカー部の人達の会話を適当に流して、養成マシンを眺める。
ま、今の円堂さんにとっては嬉しいものだろうね。

経験者である響木さんから説明を受ける円堂さん。
そして、その横には6つの取っ手がある。……まさかの手動。
鬼道さん、豪炎寺さん、一之瀬さん、染岡さんが回す事で、機械が動き出す。
錆びていて最初は動かなかったが、菅田先生が持ってきていた油でさ錆びを落とし、気を取り直して。


「……うぇ〜、痛そう……」


足をぶつけ、背中をぶつけ……。
やる人も回す側の人も疲れる奴だ。


「大丈夫か?」

「あ、あぁ……」

「ちょっと、休憩するか?」


鬼道さんと染岡さんの会話を聞いて、円堂さんがそう聞く。


「だったら、俺達が回すでヤンス!」

「え?……お前等…!」


栗松の声が聞こえた。
その方向を見ると、1年生ズが固まっており円堂さんをジッと見ていた。


「先輩達が頑張っているのに、俺達だけ休んでいるなんてできないッス!」

「俺達にも手伝わせて下さい!」


続いて壁山、宍戸がそう言い、


「キャプテン!私達にも手伝います!」

「ここまできたら、完成させたいもんね!」


春奈、木野さんが言った。
この6人だけじゃない。
サッカー部全員が円堂さんの力になりたい、と言っているのだ。
……これでも気付かないかな?


「……何やってんだ俺は…!こんな仲間がいるのに、“マジン・ザ・ハンド”ができないからって、1人で焦って……!俺は世界一の大馬鹿者だ!!」


……やっと気付いたようだね、円堂さん。
必殺技も大事だけど、何よりも大切なものって『仲間』だと思うよ。
特に、このサッカー部は貴方が中心となって生まれたんだから。


「頼むぜ、皆!俺、絶対完成させてみせるから!」


円堂さんの言葉に、上がるサッカー部の声。


「円堂!続けるぞ!!」

「はい!」


響木さんの言葉に円堂さんは元気よく返事をする。
その表情は、何処かすっきりしている。


「さて、あんなのやりたくないし……」


皆の視線があのマシンに向いている隙に、忍び足でその場を去る。……去ろうとした。


「お前はキーパーではないが……。あれを全て躱してゴールまで辿り着く事ができるんじゃないか?」

「へっ!?ど、ドウカナー」


いつの間にか横にいた響木さんに驚きながらも、なんとか聞かれたことに答える。


「ま、まあでも?一発でできるかって言われたら絶対無理かな」

「“光のストライカー”にとっても難しいか」

「そもそも、サッカー部の練習メニュー可笑しいと思うんだけど……。それに、僕キーパーじゃないし、する必要ないでしょ?」

「サボろうとしていただろ。お前も参加しに行け」


ば、バレてた……。
渋々あのマシンの元へと足を進めた。





2021/02/21


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