ブラックトリガー争奪戦
迅さんと別行動を開始した私が向かうのは……
「見つけた」
「!」
現狙撃手No2の奈良坂君の元。
優先するなら彼だと最初から思ってた。
「っ、来ると思ってました」
「それは嬉しい……なッ!」
弧月を抜いて思いっきり振りかぶる。
奈良坂君には当たらなかったが、持っていたイーグレットは真っ二つにした。
「ッ!」
ライトニングを取りだし、こちらに銃口を構えた奈良坂君。
でもね、それは私にとっては悪あがきにしか見えないんだよ。
「……まず1人」
「逃げろ章平!!」
奈良坂君の頭と胴体を真っ二つ。
トリオン伝達脳とトリオン供給器官が離れたことで、奈良坂君はトリオン体を維持できなくなった。
無機質な女性の音声と共に奈良坂君は緊急脱出した。
「逃げろって言ってもねぇ……私の視界内だから逃げられないよ」
それに、この距離なら1分で着く。
副作用で古寺君の居場所を把握し、走り出す。
私にバッグワームは通用しない。
やるならカメレオンかな。あれは背景に溶け込むオプショントリガーだから、見る事に長けている私の目でも、カメレオンを使われてしまえば視界に捉える事は不可能だ。
「みーつけた」
「!?」
「そんな怯えた顔しないでよ。……私が悪者みたいじゃない」
バッグワームを解除し、弧月を抜く。
そして振りかぶったが空振り。どうやら躱されたらしい。
「すごいね。私の攻撃躱すなんて。……でも、もう外さない」
もう1本の弧月を抜いて、横線を描くように斬りつけた。
うん、今度は当たったね。
「……流石です、苗字先輩」
「ま、これでもS級背負ってますから。ブラックトリガー使わなくてもその階級に見合った強さを持ってなくちゃ、示しが付かないからね」
彼の言葉にそう返答した後、古寺君は緊急脱出し戦線離脱。
「……狙撃手は処理しました。ま、必要なかったかもしれませんが」
今は太刀川さんと風間さんの相手に精一杯だろうから、内部通話で集中を切らしてしまったら悪いだろう。
「さて、ちょっと嵐山隊の方を見に行ってみるか」
***
「……へぇ、嵐山さんを囮に当真を撃破。その隙を狙って佐鳥君が秀次と公平を奇襲、ね」
「! 苗字、見ていたのか」
「途中からですが」
現場に向かうと、片腕を失った秀次と公平、鉛弾があちこちに付着した嵐山さんと、片足が……多分スコーピオンになっている木虎ちゃん、イーグレットを両手に持った佐鳥君がいた。
「三輪隊の狙撃手は全滅。そして、風間さんと太刀川さんも迅さんが倒したので私達の勝ちですね」
私がそう言うと同時に遠くで緊急脱出した太刀川さんと風間さんが目視できた。
まあ私は視界内だったから、ずっと迅さん達の戦闘を見ていたけれど。
「任務達成ですね」
「うん」
「嵐山さん、苗字先輩、見ました!? オレの必殺ツインスナイプ!」
「うん、バッチリ。また上手くなってたね」
「えへへ、褒められた!」
「木虎、賢、苗字、よくやった。綾辻と充もよくやってくれた」
木虎ちゃんの言う通り、私達の任務は達成された。
……それと同時に迅さんが風刃を手放すことが確定した。
この事を知っているのは、この場でもこの戦場でも、ボーダー内でも……私だけ。
「あ〜、負けた〜っ! 5位のチームに一敗食わされたのは腹立つな〜」
「うちの隊はテレビや広報の仕事をこなした上での5位なんです。普通の5位と一緒にしないで貰えます?」
「相変わらずクソ生意気だな、木虎」
「出水せんぱ〜い! オレのツインスナイプ」
「うるせぇ。帰れ!!」
「うぅ、苗字せんぱああい」
「よしよし」
「あぁっ、佐鳥ずりぃ!!」
抱きついて来た佐鳥君をなだめていると、公平が佐鳥君を引き離そうと近付いてくる。
その光景が面白くてつい笑ってしまった。
さっきまで争っていたのに、戦闘が終わっていつもの雰囲気に戻った気がした。
何だかんだでこの光景が好きだ。
やっぱりボーダー同士の争いは良くないよ。
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2022/2/13
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