その背中が重なった



「……はっ!!」


バサリと音を立てて起き上がる。
……なんだ、夢か。

時計を見ると、朝の5時だった。私にしては早起き過ぎる時間だ。
折角の休みだというのに、目覚めの悪い朝だ。……これも、先日お母さんに会ってしまったからだ。
二度寝出来る気もしないので、起きることにした。

ここ最近ずっとあの出来事の夢を見るのだ。お陰で寝不足気味である。この夢を早く忘れようと、トリガーを持って自室を後にした。



***



「はぁッ!!」


弧月を振り下ろすと、目の前の仮想近界民ネイバー……元い、トリオン兵はトリオンとなって消滅した。
これで何体目だろうか。無我夢中でやっていたため、何時間経過したのかもわからない。

トリオン体は疲労を感じないはずなのに、酷く疲労を感じる。……精神的に疲れているのかな。


「名前。ここにいたのか」

「……忍田さん?」


部屋に誰かが入ってきたと思えば、そこには忍田さんがいた。
どうやら私を探していたらしい。


「お前にお客さんが来ている。準備が出来たら出口に来てくれ」

「?……分かりました」


忍田さんは要件を伝えた後、さっさと退出していった。
私にお客さん?誰だろう……。

嵐山隊に入隊してから、私個人に用事があるという人はいるにはいた。だから突然のことではない。むしろ、最近は多い気がする。
訓練室から出て、時間を確認すると9時を過ぎた所だった。


「……はぁ。行くか」


今日は気分が晴れないまま、1日を過ごしそうだ。
そう思いながらノーマルトリガーを起動する。

トリオン体に換装し、嵐山隊の隊服になっている事を確認してボーダー基地の出入り口へと向かった。
……私宛のお客さんが誰なのか知らないまま。



***



忍田さんと合流し、ボーダー基地を後にする。
車で向かった先は、何処かの企業の建物。

ボーダー本部基地はボーダーの人間以外は立ち入り禁止のため、こちらから来訪しなければならない。
もう慣れた経験に、今回自分に用のあるという人は誰なのだろうか。
そう思いながら入室した部屋にいたのは___


「……え?」

「どうしたんだ、苗字隊員。早く入りなさい」


忍田さんが私を呼んでいる。
でも、私の身体は動いてくれなくて。

だって……


「な、なんで……!!なんで貴女がここにいる___お母さん……!!!」


そこにいたのは、先日とは違う格好をしたお母さんがいたからだ。





2021/07/22


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