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side.碧色



俺はまさっちが戦っている姿に惚れ込んでボーダーという組織に入った。それもあるけど、その頃俺は生みの親である母と揉めていた時期で、父さんが病気を患った事が判明した時期でもあった。

俺達の母親は顔だけ良い最低な親だった。


『病気?……どうして私が看病しなきゃならないの?面倒よ』

『はぁ……?父さんを見捨てるっていうのかよ!!』


彼奴は父さんを愛していなかった。愛していたのは父さんの整った容姿だけだった。俺と名前はそんな二人から生まれた為、綺麗な顔立ちとよく言われてきた。
家事も禄にしない、職にも就かない所謂専業主婦。そんな奴が俺と名前の生みの親だ。
父さんは優しくて、人の頼みを断れない性格だった。…そうだな、名前の性格は父さん似だな。
一人で家計を担っていた父さんは、間違いなく疲労で病気を発症してしまったんだ。だから父さんをこんな風にしてしまった要因は母親こいつだ。


『香薫、名前。あんな人、放って置いて三人で暮らしましょう?大丈夫、生活には困らないわ』

『誰があんたと暮らせるかよ!!名前、父さんと俺、名前の三人で暮らそう。大丈夫、俺が頑張るから』


その頃、俺は両親の遺伝子の結果とも言えるその容姿と高身長でスカウトされ、モデル雑誌のバイトをしていた。それなりに人気もあって、バイトの割には結構稼いでいたと思う。
名前は俺と母親の言い合いにすっかり怯えてしまった。結局母親が家を出て行き、病院で入院している父さんと俺、名前の三人で暮らすことになった。


『怖い、怖いよ兄さん……っ』

『大丈夫、俺が何とかしてやるから……!』


俺はその日からモデルのバイトを本格的に始めた。
学校が終わればすぐに現場に直行なのは当たり前で、たまに撮影の為に学校を休む事もあった。そんな毎日が俺を追い込んだんだろうな。……だから気付かなかった、後から迫っていた脅威に。


『大丈夫か?』


近界民ネイバー……トリオン兵に襲われそうになった所をまさっちに助けて貰った。
それが俺とまさっちの出会いであり、俺がボーダーに入ろうと思ったきっかけだった。


『あの化け物は一体なんですか?どうして俺を狙ってきたんです?』

『……一般人である君を巻き込みたくはないんだが、少し一緒に来てくれないか』


まさっちに言われ、着いてきた場所にいたのがきどっち、最上さん、りんちゃんと後に呼ぶ大人達。それと……


『進さん?!』

『おっ、香薫!久しぶりだな〜。前に会った時よりヒョロヒョロになってないか?』


俺の同級生の兄がいたことだ。どうやら弟元い俺の友達はボーダーに入っていなかったようだ。
その日はどうやらあまり人がいなかったそうだが、俺にとっては衝撃を与える日だった。


***


ボーダーと呼ばれる組織の目的について教えて貰い、最上さんから俺が近界民ネイバーに狙われた理由も判明した。
俺はトリオンと呼ばれるものが異常に多いらしく、それが原因で狙われたのではないかと言われた。


『お願いです、俺をボーダーに入れてください!俺は、そんな奴に捕まる訳にはいかないんです……!』

『訳を聞いてもいいか』

『……妹と、病に冒された父がいます。母は父の病が発覚した後、出て行きました……。だから、俺が頑張らないと……!』


顔を下げていた俺の方に誰かの手がポンっと乗った。


『分かった。君をボーダーに歓迎しよう。僅かだが我々からも援助をしよう』

『本当ですか……! ありがとう、ございます……っ』


俺がボーダーに入って暫くした後にやって来たのが___


『香薫。今日から新しく入る迅悠一だ。暫くの間、面倒を見てくれないか』

『ん、いいよ』


悠一は名前より1つ上だった。
俺は名前がいるからなのか、年下の面倒をみることに抵抗はなかった。りんちゃんがいないときは桐絵の面倒もよく見てたしな。だから、悠一の面倒を見ることを頼まれても特になんとも思わなかった。


『そんなに離れていないで、こっちこいよ』


離れた場所に座った悠一にそう声を掛けるが、こちらをチラチラとみるばかりで近寄ってくる気配はない。だから、俺から近付いたんだよな。


『俺、苗字香薫。よろしくな、悠一』

『は、はい。よろしく、お願いします。苗字さん……』

『やだなー。香薫って呼んでくれよ〜』


最初はよそよそしかった悠一も、女性のお尻を触るとかいう変な趣味が出来たくらいに明るくなったので、俺としてはまあ方向性に首を傾げる事はあったが嬉しい事である。
……ただ、名前が悠一の事をすごく嫌っていたのが微妙だったけど。


「考え頃?余裕だね名前ちゃん」


おっと。どうやら思い出に浸かりすぎていたらしい。


「では、終わりにしましょう」


さっさとケリを付けちゃおうか、悠一。





2021/02/25


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