認識する

side.碧色



「……迅、さん」


……あっぶねー、危うく『悠一』って呼ぶ所だった……。名前は悠一の事名前で呼ばないからなぁ。
名前は悠一の事を嫌っている。何故嫌いなのか訊いてみた所、『彼奴がいると兄さんと一緒にいられる時間が減る』……だってさ!!つまり嫉妬してたって事だろ!?何この可愛い生き物!!俺を悶え殺す気か?!
近くにいたきどっちとまさっちからすっごい冷たい目で見られていたけど、俺は気にしない。いいじゃんか!可愛くて仕方ないんだよ!!


「ずっと寝たきりだって聞いていたから、心配してたんだよ?」

「そうですか」

「相変わらず冷たいなぁ」


ごめんな悠一。俺、香薫なんだわ。名前じゃないんだよなぁ……。
でも、心配してくれてありがとな。……そうさせてるのは間違いなく俺なんだろうけど。


『相手に負けを認めさせた方が勝ちだ。手を抜く事は許さん』


悠一は弧月を抜き、こちらへ構えた。その目は先程のおちゃらけてた雰囲気が嘘のように真剣だった。
……うーんと、ちゃんと換装出来てるのは間違いないんだろうけど、どうしても気になっちゃうなぁ……。例えトリオン体になっているとはいえ、大事な大事な妹の身体に傷を付ける訳にはいかない。
……こりゃあ、攻撃を全て躱すしかないな。


『始めッ!!』


開始の合図が切られた瞬間、悠一はその声とほぼ同時に動き出した。
接近する悠一。……正面か!
上半身を反らして躱し、横へと飛ぶ。
……そういえば、悠一にはとても厄介な副作用サイドエフェクトがあったな。

悠一が持つ副作用サイドエフェクトは『予知』。これがかなり厄介で、攻撃を見切られてしまう。……でも俺には効かなかった。それは生前の話だ。死んだ今、俺に副作用サイドエフェクトが残っている可能性はない。まあ別に副作用サイドエフェクト使わなくても悠一に勝てていたし、問題はないだろう。
でもとりあえずは、自分の能力がどのくらいなのか理解しないとな!


「……躱されちゃったか」


自分をどう操ればいいか考えろ。トリオンは十分に貯まっている。まさっちが名前に言ってくれたんだろう。
ではそのトリオンをそのように使うか。……そうだな、悠一が弧月持ってるから…同じ奴を作るか・・・・・・・。俺が愛用していたトリガー『弧月』を想像する。
すると、バチバチッと音を立てながら弧月に似た細長いものが足下から出てきた。


「! 流石ブラックトリガー、全く予想が付かないよ」


足下から現れたのは、ブラックトリガーおれに貯められたトリオンで生成した弧月似の『ブレード』だ。…形はよく出来ている。斬れ味、耐久力がどれほどのものなのか試させて貰うぞ、悠一!!


「ッ、一撃が重い……!」

「これからですよっ、迅さん!」


悠一に向かってブレードを振り下ろす。間一髪って所で弧月で受け止めた悠一の顔は苦い表情をしていた。
二発、三発とブレードを悠一に向かって振りかざすが、全て受け太刀した。

お互い飛び退き、少し離れた位置に後退する。
……うーん、もうちょっと速く動けるはずなんだけど、やっぱり名前の身体に慣れていない所為なのかな。少しだけ思う通りに身体が動かない。


「こんなに一撃が重いと、まるで香薫さんと戦っている気分だ……!」

「……喋っていないで、次いきますよ」


ブレードを回しながら悠一に最接近し、振り下ろす。が、また受け止められた。だけど、防いでばかりじゃ戦いになんねーよ!
……こうしてみると、懐かしいな。
昔こうやって悠一と訓練して、たまに名前も混ざって。
少しだけ悠一との思い出を思い出していた。





2021/02/25


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