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side.緋色



二日後

今日は忍田さんからブラックトリガーの性能テストがあると言われた日だ。
一昨日に私はブラックトリガーを起動をしたのだが、その時の記憶が一切ないのだ。しかし忍田さんは「何の問題もなかった」としか言ってくれず、正直不安しかない。


「大丈夫、大丈夫……」

「……何をブツブツ言っているんだ、名前」

「へ?……あっ。し、忍田さん」


緊張して呪文のように大丈夫だと呪文の様にいいながら呼ばれた部屋に向かっていると、いつの間にか隣に忍田さんがいた。どうやら着いていたらしく、忍田さんは部屋の前で待ってくれていたようだ。
……聞かれた。は、恥ずかしい……。


「体調はどうだ?なんともないか?」

「うん。でも、トリオン体になれば体調治るし、大丈夫」

「……名前、だからそれは治っているのではなくだな……。はぁ、何度言えば分かるんだ」


あれ。治っているんじゃないの?
溜息をつく忍田さんを首を傾げながら見つめる。


「まあいい。もうみんな集まっている」

「えっ。あ、はい」


忍田さんが先に入室し、続いて私も入室する。
ここは上層部が集まる部屋だ。前にブラックトリガー…兄さんを取り返しに来たときと似た雰囲気だ。
それもそうだ、ブラックトリガーを扱えるようにならなければならないのだから。


「きたか、苗字隊員」

「はい」

「忍田本部長から聞いているとは思うが、今日はブラックトリガーの性能を知る為に此処へ呼んだ。ブラックトリガーの適合者に選ばれた以上、扱えるようになって貰わなければならない」

「……はい」

「ブラックトリガーは最後の切り札なんだ。前のような失敗は許されんぞ!」

「……はい」

「では、早速始めて貰おう」


忍田さんから聞いた話だが、どうやら一昨日ブラックトリガーを起動した時に性能が分かったらしい。私1つも記憶にないのに、どうやって性能を見抜いたんだろう。
そんなことを考えていると、仮想空間へと転送が完了した。
通信機器を通して換装の指示を出される。


「……大丈夫、兄さんは応えてくれている……」


起動できているということは、私は兄さんに認めて貰えている、応えてくれている証拠だ。でもその後が不安なんだ。
このブラックトリガーは私しか起動できなかった。だから私が扱えるようにならなきゃいけない。でも私はブラックトリガーを…兄さんを扱えない。今までずっと失敗している。だからこうして呼び出されているんだ。


「……お願い、兄さん」


あの日、ブラックトリガーが私のものだと忍田さんに言われてからずっと左耳に付けている。そういえば一昨日、忍田さんからブラックトリガーをずっと付けているようにって言われたけど、言われなくても外すつもりはない。
ブラックトリガーを付けていると、兄さんが近くにいる気がするから。


「私に応えて……!!」


言葉にトリガー起動の意思表示を込める。
___どうか、私に兄さんを扱わせて……っ。


「……っ」


視界が真っ暗に染まった。
また、失敗した……。
そう思った瞬間


「当たり前だろ、名前」


はっきりと兄さんの声が聞こえた。





2021/02/25


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