私を待ってくれた人達
「あの、ちょっと気になる事が……・」
「うん? 何?」
互いに想いを打ち明け合った後、先程迅さんが言っていたもので気になっていた事があった。
「さっき可能性が低かったって言ってたじゃないですか」
「……うん」
「その、可能性が高かったのって誰だったのかな〜って……あはは」
言ってみたはいいものの、目の前にいる迅さんの表情が怖い。というより、拗ねてるように見える。
「……なんで知りたいの?」
「そんな嫌そうに言わないで下さいよ……ただの興味本位なだけですから」
迅さんは私の問いにイヤイヤながらも答えてくれた。終始ムスッとした顔だったから、笑いを堪えるのに必死だったのは内緒だ。
……でも、本当に私の事をって改めて分かるから、その嬉しいなって思っちゃう自分もいるんだ。
「……特に可能性があったのは出水と秀次。その次に京介と嵐山」
「本当に嫌そうに言いますね……」
「名前ちゃん。おれの副作用が作用してないこと分かって遊んでない?」
「ま、まさか〜っ、純粋に気になっただけですよ〜」
ジト目でこちらを見る迅さんから目を逸らす……が、逸らした先に入ろうとしてくる。べ、別に迅さんの副作用がって思って言ったわけじゃないんですよ?
ほんとなんですよ??
「それにしても、公平と秀次ですか……」
2人とも大事な後輩だ。けど、その2人との可能性があったと言われて正直驚いている。……だって私、2人とも弟の様に思ってたから。
「そして嵐山さんと……きょ、京介」
嵐山さんのことは数少ない頼れる人だ。……だって、ボーダーにろくな先輩いないんだもん……。
そして京介、か……。京介……
『俺、先輩のこと好きになりました。だから、覚悟しておいてくださいね』
そう言えば私、京介に好きって言われたんだ……!
そのことを思いだした瞬間、顔が赤くなる感覚がした。
「ちょっと名前ちゃん。何思いだしたの」
「え?」
「京介と何かあったの?」
「えっ!? えっと……」
「正直に話して欲しいなぁ〜」
言って良いものなんだろうか……貴方より前に京介に告白されてましたなんて。
「まあ、何となく想像付くかな。……京介に告白されました、でしょ」
「っ、!」
「その反応、図星だね」
まさか副作用で読まれた……!?
どうしてこういうときに限って作用が働いたんだ……!
「あぁ、因みに副作用じゃないから」
「え」
「京介の態度から分かってたよ、彼奴が名前ちゃんのこと好きだってこと」
副作用使わなくても分かってたって訳か……!
どっちにせよ、バレてることに変わりない。
「当然、断るよね?」
「へ?」
「……だっておれ達、恋人同士でしょ」
迅さんの言葉に私は目を見開いた。私を捉える蒼い瞳はいつもより澄んで見える。
「違う?」
「……私、迅さんの彼女って言って良いんですか?」
「むしろ何でダメだって思ってるのか知りたいな」
私、迅さんの彼女なんだって言って良いんだ……。そう思った瞬間、目元が熱くなって視界が歪んだ。
「なあに? 泣くほど嬉しいの?」
「だって私、今まで……」
「おれには可愛い声にしか聞こえなかったよ」
この気持ちに気づくまで私は迅さんに恋という気持ちはなかった。そんな中ぶつけた言葉だったのに、どうしてこの人はずっと私を好きで入れたんだろう。
「どうして……」
「だって名前ちゃんはおれを突き放さなかった」
「!」
「何だかんだ言って一緒にいてくれた。口ではイヤイヤ言っててもおれから離れなかった。……それが嬉しかったんだ」
本当に嬉しそうに微笑むんだもん……疑う気持ちなんてなかった。
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2022/9/25
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