殺し屋レオン:序



「このアングルだと、一部の生徒しか映らないなァ……。いいなァ……!中学生が苦しむ顔!100億円手に入れたら、中学生沢山買って毎日ウイルス飲まそうかなァ……!」


部屋に入ると、ボリボリと肌を掻きむしる音が聞こえた。それと同時に、非道徳的な発言が飛んでくる。


「そんなに掻きむしってしまったら、傷が深くなって痕が消えなくなってしまいますよ?」


そう声を掛けると、何かがこちらへ飛んできた。投げられた物は壁にぶつかって床に落下した。振り返って投げられた物を見ると、それは起爆スイッチだった。


「酷いじゃありませんか。私は貴方を心配しているだけだというのに」

「……」


ボリボリ。
……無視か。まあ今の依頼人はある意味危険……クレイジーな状態だ。扱いを考えなければ本当に死者が出かねない。


「なァレオン。俺が始めに言った事、覚えてるか?」

「ええ勿論。……“潮田渚を半殺しにする”ですよね?」

「ああそうだ。分かってンじゃねーか……!」


不気味に笑う依頼人。
この空間には僕と依頼人の二人だけだ。さっきまでガストロがいたようだけど。…なんで分かるのかって?においが残ってるからさ。

じゃあどんなにおいがするのかって?彼奴からはよく火薬の臭いがするんだよ。銃を使ってるだけあって、火薬の臭いが染みついてるんだよな〜。


「彼らはすごいですね。まさか殺し屋相手に張り合えるとは」

「あぁ?レオンお前、まさか向こうを味方するのかァ?」

「いいえ。今私は貴方に雇われている身、依頼人の味方ですよ」


……はぁ。今までの中で一番面倒な依頼人だ。
何故僕がここまで気を使わなければならないんだ。

だが、先程彼らに向けた言葉は本心だ。今回同じ依頼人に雇われた暗殺者達は僕が知る暗殺者の中でも腕が立つほうだと思っている。

暗殺者……または殺し屋と呼ばれる人達は、その名の通り『人を殺す人』の事だ。彼らはそれぞれ得意とした分野があり、中には素の戦闘能力が低い者もいる。

それでもだ。まだ一年にも満たない時間で、一般人を殺し屋に通ずる程に成長させた軍人の指導力には素直に拍手を送ろう。あのロヴロも認めていたしね。僕は……まあまあ認めてやってもいいかな。僕には及ばないけど。


「……おや、ガストロが敗れたようです」


通信機から聞こえてきた声。それを判断材料にして向こうの状況を推定すると、ガストロは彼らに敗れた。
……まあ彼奴らには一応言ってある事がある。依頼人には言っていないあるお願い・・・を。


「レオン」

「はい」

「客を迎えに行け」

「……了解」


もう少しでここに彼らがやってくる。命令通り、接待に行きますか。
……しっかし、この依頼人。暗殺者の使い方が下手だなぁ。絶対分かってないだろ、暗殺者の扱い方。
お陰でやりづらいったらありゃしない。


「また会えるね。……E組の皆さん?」





2021/03/30


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