殺し屋レオン:序

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『……どうだ?見えるか』

「ええ見えますよ。……結果が知りたいですか」

『勿論だ。早く教えてくれ』


山頂に立てられたホテル……『普久間殿上ホテル』。そのホテルのバーフロアにある見透しの良い場所に立っているのはプラチナブロンドの少年だ。
顔立ちは若々しく、恐らく年齢は10代後半と見える。服装は暗めの色のスーツを着用している。

少年は単眼鏡で海の方向を見つめ、片耳に付けた無線通信機で誰かと会話しているようだ。


「……暗殺は失敗したようです。貴方の獲物は死んでませんよ。しかし……」

『なんだ』

「……あの様子は…………なるほど」


少年は単眼鏡を覗きながら不気味な微笑を浮べた。


「これは私の推測になりますが、今のあの怪物は無敵状態です。ですが、無敵の代償とでもいいましょうか、自力では動けないようです。そんな状態にした本人である子供達も戸惑っているようです」

『そうかそうか……だが、そこにいる事に変わりねェんだろ?』

「はい。それは間違いありません」


くくく、と笑い声が通信機越しに聞こえる。少年はその声を微笑を保ったまま景色を眺める。


『これより計画を実行する。……頼むぜ、スモッグ、グリップ、ガストロ___レオン』

『了解』

『承知したぬ』

『オーケー』


クスッと少年が笑う。
片耳に付けた通信機に手を当て、少年は口を開いた。


「___はい、依頼人」


レオンと呼ばれた少年は、澄んだ青い瞳を少し細めて返事をした。
プラチナブロンドの髪を靡かせながら、少年はバーの奥へと消えていった。


「お兄さん、私達と一緒に飲まない?」

「ええ構いませんよ。では移動しましょうか」


二人の女性に腕を絡まれながら少年はその場を去って行く。女性の目は少年の美しい容姿に釘付けであり、その表情はうっとりと頬を染めて完全に見惚れているようだ。


「ねぇお兄さん。名前なんて言うの?」

「『リン』と申します」

「リンさん、飲んだ後も一緒に遊ばない?」

「ええ、勿論ですよ」



***



「……あぁ、すみません。この女性達の介抱を頼みます」

「畏まりました」


数分後、少年は酔い潰れて眠ってしまった女性達を店員に預けてその場を去って行った。彼自身もアルコールを摂取していたはずなのに、変わらないその微笑は酔いを感じられない。


「さて……今頃スモッグかグリップが相手してるところかな」


少年の呟きは誰にも拾われる事なく、バーに流れるBGMにかき消された。





2021/03/30


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