期末の時間

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彼らの相手に疲れたので外の空気を吸おうと外に出た時、誰かの会話内容が耳に入った。


「流石にA組は強い。しかし総合一位は君も知っての通り苗字さん。その次に総合七位の片岡さんと竹林君が同点です」


この声はターゲットだな。
話している相手は誰だ?どうやら木の陰にいるようだが、ここからは綺麗に隠れていて姿が見えない。
しかし、何となく予想はできる。……僕のお隣の席の彼だろう。だって教室出る前に姿が無かったからね。


「A組の皆も負けず劣らず勉強した。テストの難易度も上がっていた。怠け者が着いていける訳がない」

「……何が言いたいの?」


あ、当たってた。やりぃ。ターゲットの会話相手は赤羽のようだ。
彼、手を抜いていたからね〜。ま、当然の結果と言えばそうかもね。順位とか総合点とか知らないけど。


「『余裕で勝つ俺かっこいい〜』とか思ってたでしょう〜? 恥ずかしいですね〜!」

「っ!?」


……えーっと?会話から察するに、僕がここE組に来る前に行われた中間テストで赤羽は良い成績だったのだろう。
そりゃあ確かに慢心しちゃうだろうね。

これはあまり聞いてやらない方が良さそうだ。まあ本心でいうなら弄るネタにしてあげたいところだけど。
その内戻ってくるだろう赤羽が来てから外に出よう。


「……苗字、さん」

「あぁ、話は終わったのかい?」


意外と早く戻ってきたな。少し顔が赤いけど、まあ空気を読んで気づかないフリをしておこう。
んじゃ、外に出よう。そう思って赤羽の隣を通ろうとした。


「アンタはすごいよね……本当にオール100点取って、浅野に勝って」

「何? 嫉妬かい?」

「そうだよ。 ……悪い?」


こちらを見下ろす赤羽の瞳。うん、良い殺気だ。


「そう睨むなよ、綺麗な顔なのに勿体ない」

「嫌味に聞こえるんだけど?」

「この僕が褒めてるんだ。素直に喜びたまえよ」


まあ正直に嫉妬しました、と言えた君に少しだけアドバイスしてやろう。


「僕が何でも出来る人間だと……君はそう思ってるんだろう」

「そうなんじゃないの?」

「違うさ。一部の例外を除いて、人間は初めから何でもできる訳じゃ無い」


天性の才能ってものは信じて無くても実際にある。……僕はその才能ってものを持っていた人物を知ってるからね。


「僕はこの力を“努力”で手に入れた。恐れられる殺し屋だと呼ばれるようになったのは、その実力を勝ち取ったからだ。……僕に才能というものはないよ」

「一位取っといて良く言うよ」

「これも努力さ。僕はこれでも覚えが悪い方でね、よく叱られてたよ」


どうやら赤羽は僕とのおしゃべりをご所望みたいだから、もう少し付き合ってやろう。


「人間は忘れる生き物だ。だからメモを残す。過去に記した事を思い出す為にはそのメモを見直す。……この行為、学生をやってる君なら分かるだろう?」

「ふく、しゅう……」

「そう、復習さ。勉強に必要なのは予習・復習。当たり前の行為だよね〜?」

「! まさか、さっきの話聞いて……」

「少しだけね。全部は聞いてないよ」


目を逸らし視線を外す赤羽。
そして何故か顔が赤い。もしかしてさっきターゲットと会話していた内容を思い出したのか?


「君が中間テストの時、どんな成績をとっていたかは知らない。知る興味もない。……でも、負けた方が恥ずかしいのは確かだろう?」

「ま、まぁ……」

「君は予習・復習の行為が恥ずべき行為だと認識しているが、そうでもないさ。見られたくなければ、隠れてやればいいのさ。別に人の目に着く場所でやる必要はない」


今回は自分の自意識から来た自業自得みたいだけどね?と言うと、赤羽は悔しそうに唇を噛んで顔を歪めた。
あーあ、そんなに唇を噛んだら血が出てしまうよ?


「大丈夫さ。テストはまだあるんだろう?その時にリベンジするといい。今度はきちんと勉強して、ね?」


赤羽の唇に指を当て、噛むなと伝える。
その動きに赤羽は目を見開いて僕を見ていた。


「今度は僕に勝てるといいね?」

「……そうだね。次こそは……アンタを超える」

「口を開いたと思えば……その言葉、覚えておくよ」


なんて会話をしていたら、いつの間にか会話を盗み聞きしていたターゲットにキャーキャー言われて色々と話をせがまれたのは別の話。





2021/03/27


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