期末の時間



「苗字、ちょっといいか?」


休み時間
何か連絡が入っていないか携帯を弄っていると、影が差した。見上げるとそこにいたのは磯貝悠馬だった。


「何か僕に用かい? 磯貝悠馬」

「磯貝でいいよ。今日の放課後空いてるか?」

「放課後? ちょっと待ってくれ………あぁ、空いてるぞ。で?」

「放課後、本校舎の図書室で勉強するんだけど……良ければ分からないところとか教えて欲しいんだ」


磯貝と話していると、彼の後ろに何人か集まってきた。えっと、潮田渚、茅野カエデ、神崎有希子、中村莉桜……かな。


「君含めこの6名でいいのかい?」

「ああ」


本校舎、ね。まぁ理事長には近々顔を出さないといけなかったし……。


「わかったよ。どちらにせよ、本校舎にはちょっとした用があったし」


まぁ、まだ時間はあるし向こうは僕の都合が良い日にって言ってたから今日じゃなくてもいいか。急ぎでもなさそうだし。
とりあえず今日は本校舎の構造でも把握しておこうかな。


「どの科目をご所望かな? 何にせよ、この僕に任せたまえ!」

「じゃあ放課後、よろしくな!」



***



放課後


「……君達の校舎と本校舎の造り、差がありすぎじゃないか?」

「あっははは……」


僕の呟きに潮田が苦笑いで返してくる。
本人達も自覚しているわけね。


「そりゃあ、うちらは『エンドのE組』だからね」


エンドのE組……ふうん、あのボロボロの校舎を与えられていたり自分で自分を嘲笑うような発言を聞くに、これは一種の縛りだな。
E組という差別対象を作る事で、自分もあーなりたくない、勉強を怠れば笑われる等のやる気とも言えるその心を作り出す。
何とも面白いシステムじゃないか。なぁ、理事長殿?


「人間は本当に弱いなぁ。そんな風に言われるだけで自信を無くすんだもの。見てて笑っちゃう」

「なんか、苗字さんって怖いものとかなさそう」

「そりゃそうさ、僕は恐怖を与える側なんだから。それに、僕より強い人なんてそういないもの。怖がる必要がない」

「自信家だ……」


色々と話している間に図書室へ着いた僕達。
ふむ……まあまあ広いって所かな。


「図書室というものには興味がある。少し見て回るから、何かあればこれで僕の携帯を鳴らしてくれ」

「分かった。迷子にはならないか?」

「僕を何だと思っているんだ君は。それとも、この僕を馬鹿にしているのか?」

「そうじゃなくて。うちの学校の図書室、結構広いからさ」


ふむ、善意だったのか。君等なりの心づかいって訳だ。


「心配はいらない。僕はここより広い図書室…というより図書館に入った事があるからね」

「どこの図書館?」

「アメリカ」

「アメリカに行ったことがあるんだね」

「まあそこに在住の人間から依頼が来たから……むぐっ」


神崎の質問に答えていると、誰かが僕の口を塞いだ。
まあ誰かは分かっている。隣にいた茅野だ。


「あんまり外でそういう話をしちゃダメだよ!ここでは苗字さんも普通の生徒なんだからっ」

「あぁ、そうだったな。すまんすまん」


小声で注意する茅野に適当に謝っておく。
謝る気がない?当たり前だ、なんで僕が気を使わなきゃいけないのさ。


「じゃあそう言う事で。10分もすれば戻ってくるから」


そう伝えて彼らの元から離れ、5分程。
人間の身体の構造についての本を見ていたときだ。


「……騒がしいな」


図書室というのは静かにする場所だろう?一体誰だ騒いでいるのは。
本を持ったままその場所に向かうと、まさかのその騒ぎの中心はE組等だった。……はぁ、どういう了見なんだ。


「ねぇ、そこのお嬢さん」

「? は、はい!!」


近くで向こうの様子を見ていたであろう女子生徒に話しかける。……あ、ついいつも通りに話しかけてしまった。今女子制服着てるのに。
いつも女性に話しかけるときは男性の姿だからなぁ……。あと、最近変装したのが男性だったのもあってちょっと抜けてなかったかな。ま、裏社会じゃないんだし気にしなくてもいっか。


「あれ、何が起きているんだい? というより、あの男子生徒達は誰?」

「え、あなた知らないの!?」

「知らないから聞いているんだろう?」

「あの方達は『五英傑』の方達よ!!」


五英傑。はて、知らんな。まあ知らなくて当然なんだけどさ。だって知る必要無いし。
あの場にいる人物達は『榊腹蓮』『荒木鉄平』『小山夏彦』『瀬尾智也』というらしい。もう一人いるらしいが、あの場にはいないそうだ。
教えて貰った彼女には悪いが、別に名前を覚える気はない。だって容姿にも惹かれないし。


「実は最近この学校に転入してね、あまりこの学校について知らないんだ。教えてくれてありがとう」

「べ、別に?てか、そうならそうって最初から言いなさいよ」

「はは、すまないすまない。それじゃ」


と、適当に笑顔を貼り付けておけば大体女は堕ちる。最後に見たあの赤らめた顔がその証拠さ。
仕方ないね、僕の顔は女受けが良い。イリーナだって僕の顔好きだしね。勿論男にも受けるよ?

正直落としてきた人間の数はイリーナより多いと思う。だって男女両方だもの。この顔に演技力、それさえあれば誰だって落ちちゃう。
……だから殺し屋レオンは“悪魔”だと呼ばれているんだ。





2021/03/26


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