変幻自在な殺し屋、現る



「……はぁ。もー、かっこよく決めたかったのに! 邪魔しないでよ、イリーナ!!」

「そうはさせないわよ?ナルシストな所は全く変わってないわね〜」


ゼェハァゼェハァ言いながら、イリーナの胸で窒息しそうになっていた呼吸を何とか落ち着かせる。
突進されて倒れた身体を起こし、こちらにどや顔を向けるイリーナを睨む。



「お前自分の胸が大きいの分かってやってるだろ?! 殺す気かよ!?」

「だって!! 前に会った時冷たかったから寂しかったんだもん!!」

「20歳がもんって言うな!」

「ぎゃッ!!?」


お前は僕の彼女か何かなのか!?はぁ……疲れる疲れる……。
そもそもイリーナに対して態度が冷たかった云々は理由がある。大きな理由としてはイリーナ、お前が此処にいる事が予想外だったんだよ……。

とりあえず先程のやり返しと称してイリーナの肩に思いっきり拳骨を落としておく。負けた感がするから。
……え?変な音がした?気のせい気のせい♪
イリーナは胸大きいんだし、きっと肩こりしてると思うんだ〜。僕ってば気が利く〜。


「あんた、ワイヤーなんて使うのね」

「まあね。ま、縛るよりも先に仕留めた方が早い事が多いから、あんまり使わないけどね」


イリーナの質問に答えながら、天井に放置したままだった糸を回収する。
このまま切って散らせて捨てても良いんだけど、後処理を任せられそうだから止めた。


「で? 男か女か分からないって?」

「そう! うちには似たような奴がいてさ〜」

「ちょっと前原君!?」


似たような奴……あぁ。
前原陽人の発言に出てきた似たような奴と言われた人物へ視線を向ける。
その人物は視線がぶつかった瞬間、ビクッと肩を揺らす。
視線を合わせたままその人物の元へ歩けば、段々と困惑の表情を浮べ出す。
仕方ないよね。だって君、僕好みの容姿を持っているんだから。


「潮田渚。……彼の事だろう?」

「あ、あのっ……近い、です……っ」

「当たり前だろ? 態と近付いているんだから」


誰かが後ろから押せばキスできてしまう距離。
ま、綺麗な顔が目の前にあるんだから、照れちゃうのは当然の反応だよね。

可愛らしい顔を赤面させる潮田渚だが……何処か違和感を感じる。
照れているのは間違いないはずなのに、どこか慣れを感じる。
……まさか。


「既に手を出した後だったか……」

「へ?」


目を点にした潮田渚に背を向け、ニコニコと表情を緩ませているイリーナをジッと見る。
いや、ニコニコではないな。ニヤニヤだ。


「あら、分かっちゃった?」

「手が早い事で」

「貴女も気になるの? 渚の事」

「まあね」


前に見た彼の才能……えーっと確か、鷹岡っていう男との実践は見物だったなぁ。
何をどう見たって僕と同じ世界で暮らしている人間ではないのは間違いないのに……面白い存在だ。





2021/01/04


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