ビジョンの時間
「さあて、とどめにかかろう。イトナ」
「っおい!!」
「寺坂君」
「よくも俺を騙してくれたな!」
寺坂竜馬は滝壺に降り、シロに向かって自分を騙した事に吠えた。
「まあそう怒るなよ。ちょっとクラスメートを巻き込んじゃっただけじゃないか。E組で浮いてた君にとっちゃ丁度いいだろう」
「うるせェ!!テメェらは許せねェ……イトナ!!テメェ俺とタイマン張れや!!」
赤羽業が寺坂竜馬に出した作戦
寺坂竜馬に一瞬でいいから堀部糸成の気を引けと言うものだ。
触手は強力だ。生身の人間が受けるのは危険だろう。
だが寺坂竜馬はそれを実行するため、堀部糸成と対面している。
「ふふっ、健気だねぇ。……黙らせろ、イトナ」
シロが堀部糸成に指示した。
……これで寺坂竜馬が死んだら元も子もないぞ、赤羽業。
「カルマ君!!」
「いいんだよ。あのシロは、俺達生徒を殺すのが目的じゃない。生きているからこそ、殺せんせーの集中を削げるんだ。原さんも一見危険だけど、イトナの攻撃の的になることはないだろう。……だから寺坂にも言っといたよ。気絶する程度の触手は喰らうけど、逆に言えばスピードもパワーもその程度。死ぬ気で食らいつけって」
とんだ鬼指令だな、赤羽業。
打撃戦じゃなきゃ多少無茶な指示も頷いてあげるけど、僕が寺坂竜馬の立場だったら絶対嫌だ。
彼の言葉にそう思っていると、打撃音。
視線を向ければ、そこにはシャツを脱いで堀部糸成の攻撃を受け止めている寺坂竜馬が。
「よく耐えたねぇ。ではイトナ、もう一発上げなさい」
これ以上はもう耐えられない。
本当に死ぬぞ……ん?
「へっくしゅんッ!!!」
「え」
響く堀部糸成のくしゃみにポカンとしてしまう。
ほら、シロも予想外って顔してるよ。目元しか見えないけど。
「寺坂の奴、昨日と同じシャツのままなんだ。って事は、変なスプレーの成分を至近距離でたっぷり浴びたシャツだって事だ。イトナだってただで済むはずがない」
……もしかして、寺坂竜馬の側に行った時にくしゃみが出そうになったのはただの生理的現象ではなく、あのシャツが原因だったのか!
抑えるの必死だったんだからな!?
てか洗うか別のシャツを着ろよ!衛生的じゃないな!!
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2021/01/04
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