ビジョンの時間



まさか、僕に慈悲の心があったなんて。
自分自身の行動に驚きながらも、一度口に出してしまった事は変えることも取り消す事もできない。
ポカーンとしている寺坂竜馬に溜息を着くながらも、同じ言葉を口にした。



「もう一度問おう。君はどうしたい、何がしたい」

「俺に何ができるって言うんだ……」

「今君の頭は何で埋め尽くされている」

「!そ、それは……」



彼の頭を埋め尽くすのは、先程の3年E組の子供達が流されてしまった事。シロに騙され、利用されていた事。


「……その様子だと、反省しているようだね」

「でも俺は、下手すりゃ取り返しのつかない事をやった!こんなの、許されるわけ……」

「大丈夫さ、彼らは死んでいない」

「!」

「ターゲットは君達を大切にしている。死なせる訳がないだろう」


その言葉を口にしたとき、何故か自分の胸がチクリと痛んだ気がした。
……いいや、気のせいだ。


「確かに君は取り返しのつかない事をやってしまった。だけど、まだ君はやり直せる」


君は騙され利用されただけなのだから。
……それを分かっている人物がいるんだから。
さあて、そろそろ合流しないといけないかなー?


「どうして……」

「?」

「どうして、俺にそう言葉を掛けてくれるんだ……?」

「………気まぐれだよ」


そう、気まぐれだ。
すぐに答えられなかったのは、気のせいだ。

……それにしても、かなり鼻が痒いんだけど。何で?





2021/01/04


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