殺し屋レオン:破



「レオン、大変だ!!」



次の日。
今日も僕は無断欠席を決めこんでおり、今は国が計画中の例のプロジェクトについて調べていた。E組の監視はラファエルに任せていたんだけど……。


「どうした」


慌てた様子で部屋に入ってきたラファエルに、モニターから目を離す。
一応切断を切ってログも消したから大丈夫だ。

それで……何があったんだい。



「___茅野カエデが、あの人を襲撃した!!」



へぇ、珍しい。
前にプリンなんたら作戦とやらの計画をしていたから、それ以来か。


「普通の暗殺だろ。あの教室では日常茶飯事だ」

「違うんだ。……彼女は、触手を持っていたんだ!」

「!!」

「この意味、君なら分かるだろ」


無意識に椅子から立ち上がる。
まさか、僕とイトナ以外に触手を持った生徒がいたとは。

それに、ラファエルが言うことをそのまま受け取ると……茅野カエデは触手を使ってあの人を襲撃したってことだ。


「ラファエル。 茅野カエデは今どこに」

「E組校舎から離れたみたい。盗聴器から得た情報だと、明日また暗殺をやるって言ってた。場所については直前に連絡するとだけ」


___ラファエルの不安が的中した。
まさか、まだあの人を襲う独立した刺客がいるだなんて!

やられた。
このまま放置できない。


「ラファエル、茅野カエデの位置情報を割り出せ。連絡すると言っていたんだ、形態は持っているはず」

「分かった」


部屋から出たラファエルを見送った後、僕は茅野カエデという人物について調べ始めた。
まさかただの生徒の中にとんでもないやつが隠れていたなんて……気づかなかった。

茅野カエデは一体何者なんだ?



「……なに? 茅野カエデは偽名だと?」



国のデータベースにアクセスしても、茅野カエデという名前は存在しない。
その時点で怪しい気がしていたが、同年代の殺し屋が紛れ込んだという話は聞いていない。

だったら、茅野カエデが椚ヶ丘中学校へ来た経緯を辿ろう。
……なるほど、中が2年後半に転入してきたのか。この時期には次のE組選出がはじまっていたから、そのタイミングで紛れ込んだ、と。


そもそもどうやって学校に入れたんだ。偽名で入れるような機関じゃないだろう。
それに……偽名という事は、本名があるはず。彼女が僕と同じ戸籍のない人間ではないことが前提となるが。

彼女は何をどう見たって日本人だ。日本人は暗殺とは無縁な人間が多い。例外はいるにはいるけど、普通は暗殺に手を染めるほど窮地に至る人間は、日本では生まれないはずだ。なにせ、日本は良い意味で平和だからね。



「……雪村、あかり」



生体認証……顔認証をもとに検索をかけた結果、1件ヒットした。
そこに表示されていた名前は___雪村あかりだった。


「まさか、ここで聞くことになるとは思わなかったよ」


雪村。
……その苗字は、僕の頭の片隅にずっとあった。

だって、その苗字を持つ人物が、あの人に強く関わっているんだ。忘れることなどできなかった。


それと同時に、ある人物も浮上した。
この雪村という苗字は、あの人以外にも関連している存在がいる。



「……触手も合わさったとなれば、もう確定だ」



ズキッと項が痛む。
触手が反応しているんだ。なぜかって?



「……どこまでも僕の邪魔をしたいようだな。柳沢……!!」



脳裏に映った憎い男の姿。
目の前にいるわけでもないのに、僕の計画を嘲笑っている映像がよぎる。その怒りを僕は机に叩きつけた。






2024/06/03


prev 

戻る














×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -