殺し屋レオン:破
「レオン、携帯に電話が来てたよ」
「誰からだ」
「クラスメイト、と言えば分かる?」
「……電源を切っておいてくれ」
あの日から僕は無断欠席をしている。
苗字名前を演じきれないと分かった僕は、表に出るのではなく、裏側から監視することにした。
……何か遭った時、すぐに駆け付けることはできないデメリットはあるけど、これ以上ボロが出るよりはマシだ。
僕はラファエルに携帯電話の電源をオフにするように言い、ソファーに横になる。
「そういえば今日、椚ヶ丘中学校では演劇発表会があったみたいだよ」
「知ってる。そして、今の僕に演劇というワードを聞かせないでくれ」
「相当参ってるね、こりゃ」
確か、桃太郎という日本では有名な童話だったか。
それをやるって話をしていたのを聞いて、桃太郎がどのような話か知らなかったから、台本と見比べながら原作を読んでみたんだけど……演劇でやる方の桃太郎がダークすぎたを覚えている。
ちなみにだが、役を決めるという話になった瞬間、僕は空気になって教室から退室した。だって、二重で演技なんてできるもんか。めんどくさい。
これはそれぞれの役が決まった後に聞いた話だったが、桃太郎の脚本を書いた綺羅々曰く、僕を主演とした話を考えていたらしい。なんでだ。
だが、脚本を考える前に僕が却下したことで諦めたらしい。その時の会話がこれだ。
『あなた演技が得意でしょ。演劇で主演やらない?』
『却下』
この一言に詰まった僕の嫌だという感情をくみ取ってくれたようだ。良いやつだな、綺羅々。
「……君はこのままでいいの。近くにいる方が安心できるから登校していたのに」
ふと、ラファエルがそう僕に問うた。
そんなこと、言われなくても分かってるさ。だからここできちんと役目を全うしているんだろう。
「苗字名前としてあの場所にいることができない。そう判断した。それでも目に見えていないと不安だから、遠隔で確認している」
「それはもう聞いた。……暗殺期限まで、そう時間はないんだよ。ここで畳み掛ける存在がいてもおかしくないだろう」
「……普通の殺し屋は、ターゲットのスペックに心が折れている。100億に目が眩み狙う輩はもういない」
そう、その点については心配する必要はないんだ。
僕の計画が果たすほうが早いか、期限が早いか……その勝負なだけだ。
「……そうだといいけど」
「なんでお前が不安になるんだ」
「まあ、確かに僕が不安になるのは変だけどさ……何もないからこそ、不安なんだよ」
不安になりやすいやつなのかな、ラファエルって。
意外だ。
「国の動きは常に把握してる。お前だってそうだろう」
「そりゃあ、うん」
「限定された人間で行っているプロジェクト……電子データに入れていないことは褒めてあげたいけど、それだけで防げるとは思わないほうがいい」
学校に登校していない間、僕は自身で立てた計画のために動いていた。E組の監視についてはラファエルに任せてね。
「君の変装術には驚かされるよ」
「セキュリティ対策がまだまだだね。どう頑張ったって回避できる方法はあるんだ。電子化は完璧のようにみえるけど、それをクリアできる頭があればセキュリティなんて意味のないことだよ」
とあるプロジェクトの現場にもぐりこむのは簡単だった。
まずは適当な人間に化け、セキュリティが必要な場所は化けた人間を証明する生体認証さえ確保すれば問題はない。
どうしても難しい場合は、ハッキングで一瞬だけ制御を外し、何もなかったかのようにログを偽装すればいいだけだ。
「でも、そのプロジェクト……君1人で止められるものなの」
「まだ設計段階だ。もし完成してしまったのなら、それを発動しないようにバグを入れてやるさ」
「よく頭が回るねぇ……」
そうだよ。お前が思っている以上に僕は頭を使っているんだ。
あーあ、甘いものが食べたいね。
……触手を着けてからは甘いものを食べたいという欲が増えた気がする。これも関係しているのか?
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2024/06/03
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