リーダーの時間



※種目捏造あり



「というわけで、もうすぐ体育祭だ。みんなに出場したい種目を選んで貰う」

次の日
時刻は午後


教卓の前にはターゲットではなく、学級委員である磯貝とメグが立っている。
二人の背後にある黒板には、体育祭の種目と思われる名前が書かれていた。


「一人一種目は参加だから、よく考えてくれ」


そんな誓約があるのか……チッ、棒倒しに出られないのならこの体育祭に出る理由はないと言うのに。


「ねぇ名前。二人三脚出よーよ」

「二人三脚?」

「そう。互いの内側の足首をひもで縛って固定して、二人で息を合わせて走る競技」

「……なるほど」


カルマの説明を聞きながらイメージを浮べる。
文字通りだな。
二人の足を縛るから、実質足は三本の状態。
その状態で競い合う競技、というわけか。


「ま、暇だしな。やるなら徹底的に勝つだけだ」

「いそがーい、俺と名前二人三脚の走者に入れといてー」

「……おう、分かった」


二人三脚と書かれた場所に僕とカルマの名前が書かれる。
他には……ひなたと前原の名前もあるな。
二人三脚は四組の走者が必要らしいので、あと二組だな。


「女子で長距離走の立候補者はいない? まだ誰も入ってないけど……」

「えー、結構疲れるしなぁ」

「そうね。体力に自信ある人だったら……」


長距離走ねぇ。
一体どのくらいの距離を走るんだろうか。
そう考えていると目線が集まっていることに気づく。


「……なんだ」

「名前さん! 長距離走、走れないかな!?」


ま、視線を向けられた時点で察せたよ。


「でも、君たちは一般人は受けていない授業を受けているじゃないか。別に僕じゃなくてもいいんじゃない?」

「それが……噂によると、この長距離走に記録会で大会新記録を出した人が出場するらしいの」


記録会というのは知らないけど、まあその大会で1番速い者が出る、ということだろう。

それに、長距離を走るのなら一気にスピードを上げるのは愚策だ。自分の体力が持つ一定の速さをキープしなければならない。
恐らくそこで皆、考えが詰まって立候補できないのだろう。


「へぇ。それは面白そうだね」

「押しつけているようで申し訳ないんだけど……どうかな」

「いいよ」

「ダメだよね……って、いいの!?」

「うん。かまわないよ」

「ありがとう……! でも、どうしてそんなに快く受けてくれたの?」

「メグ。君の中の僕はどうなっているんだ……」


僕がメグのお願いを聞いた理由。
そんなの一つしか無いだろう。


「思い上がっているその記録保持者とやらを上からねじ伏せたいからに決まっているだろう」

「良い性格してる〜」

「「「(カルマ、お前も人の事いえねーよ!?)」」」


相手は自分が上だと思っている思い上がりだ。
そんな人間の絶望した顔が何よりも大好きなのさ、僕は。


「ま、まあ理由はともあれ。いいんだな?」

「あぁ。長距離走、出てやる」

「分かった。……頑張れよ」

「誰に言っているんだか」


磯貝は心配性だな。
死を知らない一般人に僕が負けるわけがない。

こちらは死と隣り合わせで生きてきた人間だ。
鍛え方も、生活も……何もかもが真逆の中である僕に適うはずがない。


「楽しみだなぁ……彼の歪む顔を見るのが」


彼の事だ。
棒倒し以外でも負けたくないだろう。

僕を戦利品扱いしたこと、後悔させてやるさ……学秀。





2022/01/14


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