「危ない!!」
それは偶然だった。
近くに停止していたと思っていた遺跡ハンターが急に動き出したのだ。一緒に行動していた男性……タルタリヤの声に振り返った時には、その鋭い腕がこちらへ振り下ろされている所だった。
間に合わない……!
武器を顕現させながらそう悟った時だった。
「あ、れ……?」
ガキンッと固い音が真上から聞こえ、恐る恐る目を開けた。そこには半透明な壁の先に遺跡ハンターがいた。
そういえば少し寒いような……待って、前にもこのような事があった。もしかして!
「凍りなさい」
とある人物を思い浮かべた瞬間、聞こえた声。その声の主は遺跡ハンターの弱点に一撃を食らわせた。
「氷柱よ!」
落下する遺跡ハンターを追うように落下攻撃をしかけた淡い水色。その攻撃は遺跡ハンターを完全に停止させた。
その人物は面で顔を隠していたようで、それを外しながらこちらを振り返った。
「お怪我はありませんか……って、空さんとパイモンさんではありませんか!」
「やっぱり名前だ!」
「大丈夫、名前さんが守ってくれたお陰で怪我してないよ」
彼女の問いかけにそう答えると、名前さんはその青緑の瞳を丸くした後、「ありがとうございます」と頬を少し赤らめてお礼の言葉を告げた。
前に彼女の旦那である
から聞いた事がある。名前さんは守る事に対し誇りと自信を持っていると。だからこそ、その点で言葉を貰えると嬉しいんだろう。
……だけど、その笑顔は自身の旦那に向けて欲しい。変な勘違いを生みそうだから。この様子だと、おそらく名前さんは気づいていないだろうが、
は彼女が異性と仲良くしていることが嫌いだろう。その場面を見たら間違いなく機嫌が悪くなる。
それに気づいてから、未だに望舒旅館で一緒の部屋で一夜を過ごしたことを言えていない……。いくらパイモンも一緒だったとはいえ、それを知られてはいけない気がする……名前さんが言っていないことを祈ろう……。
「そこの貴方もお怪我はありませんか?」
名前さんが振り返った先にいたのはタルタリヤだ。何故彼と一緒に行動していたのかというと、冒険者協会からの依頼で遺跡調査を行っていたのだが、偶然その場に居合わせた彼に同行して貰っていたのである。
どうやらタルタリヤも名前さんの氷で守って貰っていたようだ。
「……もしかして『白銀の炎』かい?」
彼女の問いかけに対し、タルタリヤはそう答えた。明らかに名前さんの問いかけと言葉が噛み合わない。
それに、その言葉……どこかで聞いたような……あ、思いだした!
その言葉を聞いたのはモンドだ。確か、それは名前さんが記憶を無くしていた頃で彼女を探していたファデュイが言っていた言葉だ。
忘れていたわけではなかったけど、タルタリヤはファデュイだ。それも、ファトゥスである。名前さんの事を知らない訳がない。まさか、彼女を捕まえる気か……?
「……その言葉を知っていると言うことは、貴方ファデュイですね」
「如何にも」
「お二人とも、私の後ろに!」
「いいねぇ、戦り合うのは大好きだよ」
まずいまずいまずい!
放置したら間違いなくここで戦いが始まってしまう!
というよりタルタリヤ、戦いが好きだからってすぐに武器を構えない!!
「待て待て待て!? すぐに戦おうとするなよ!?」
「ですが、ファデュイは敵ですよね?」
「そうだけど、彼は事情が違ってて……とりあえず二人とも武器を下ろして。ちゃんと説明するから」
俺の言葉を聞いてくれたのか、二人は一度互いに目線を交わらせた後、武器を下ろした。
「仕方ない、君に免じて今は戦わないでおくよ」
「では、訳を話して頂けますか?」
二人が納得できるように説明しないと……この空気、かなり重い。
***
「なるほど……まぁ、あの御方が信頼している貴方の言葉ですから、今は目を瞑りましょう」
「ホ……ッ」
「それに、鍾離様と交流のある方となれば……敬意を持たなければなりませんね」
何とか二人に納得して貰える説明ができたようだ。しかし、名前さんはしぶしぶといった様子である。ファデュイに対して怒りの感情があるはずなのに、俺と鍾離先生と関わりがある人ということで、その気持ちを抑えてくれている。彼女の優しさに感謝だ。
「へぇ、まさか仙人だったとはね。人間じゃないことは何となく予想着いてたけど、それは知らなかったよ」
「ファデュイの中ではどんな風に通ってたんだ?」
「婆さんのお気に入りって認識。多分周りもそう思ってるよ」
「婆さん?」
タルタリヤが放った婆さんという人物に首を傾げる。誰の事を指しているんだ……って、もしかして。
「あのすっごく弱かった女性のファデュイか?」
「会ったことあるんだ」
「うん。名前さんが璃月を離れることになった元凶だからね。それより、なんで婆さんって呼んでるの?」
「見た目は結構若そうだったよな」
タルタリヤの言う婆さんは、俺が戦ったあの女性ファデュイで合っていたようだ。しかし、あの見た目は婆さんと呼ぶには若かったのだが……。
「公子さん。あの女性は、一体どのような方法で人の理を超えたのですか」
「え?」
「おかしいのですよ。彼女の外見は当時、私が対面したときと何一つ変わっていなかったのです。だから私は、あの場所で100年も閉じ込められていたとは思わなかったのです」
なるほど、名前さんが100年も監禁されていたことに気づかなかったのは、その環境とあの女性ファデュイが関係していたのか。
……って、今人の理を超えたって言ったよね?
一体どういう意味だ?
「んー、それは答えられないなぁ。なんせ、俺がファデュイに入った時期と君がファデュイにいた時期の差が大きすぎるもの。君が見たっていう婆さんの姿を俺は知らない」
確かにタルタリヤは歴とした人間であるはずだ。だから、名前さんの姿を見た事がないはずだろう。挙げられた特徴を元に、名前さんがファデュイでいう『白銀の炎』だと気づいたのは流石である。
「周りが婆さんって呼んでたから俺も真似したってだけ。そもそも、あの人に興味ないし。明らかに戦えませんって人だしねぇ」
「ということは、戦闘ではなく研究が主な役割であったという事ですね」
「ご名答。ま、その場所に囚われていたんだし、察しは付くよね」
「ならば、研究の過程で長寿、または不死に近い存在になる何かを見つけたとか……?」
「あれ、もしかして聞いてない?」
「なんかブツブツ言ってるな……」
名前さんは考え込むと自分の世界に入っちゃうタイプらしい。それに、何だかんだであの女性については気になるのだろう。自分を捕まえた存在であるのは勿論、彼女の記憶の中と全く変わらなかったことに対する違和感とか。
「それで、貴方は私が『白銀の炎』と呼ばれていた被検体と知った訳ですが……捕まえますか?」
彼女の中で疑問が解決したのか、定かではないが考え込んでいた名前さんがタルタリヤに声を掛けた。その口調は警戒と同時に少々の挑発を含んでいるように感じた。
「それなんだけど、あの婆さん寝込んでるらしくてさ」
「ね、寝込んでる?」
「そ。なんか精神的に参っているらしくてね、研究が進んでないって文句を言われてるよ」
タルタリヤのまさかな回答にパイモンが気の抜けた声を出す。俺もパイモンと同じ心境だ。
なんで寝込んでいるんだ?
名前さんを捕まえられなかったから?
いや、それだったら尚更名前さんを捕まえようと追いかけるだろう。なんせ100年も名前さんの行方を追っていたのだ。そんな人が簡単に諦めるとは思わない。
「……あれ、もしかして」
ファデュイと名前さんという事で、頭から抜けていたけどあの後の女性ファデュイについて思い出した事がある。
突如現れたヒルチャール王者によって、あの場に放置したままだったあのファデュイ。その後について全く知らないのだが……もしかしたら彼が何かやったのかもしれない。
「何か心当たりがあるのですか?」
「まあ。俺がやったんじゃなくて、別の人だと思うよ」
「別の人? 誰の事だい?」
「……あ、分かった!
の奴がやったんじゃないか?」
パイモンの言葉に名前さんは何かを察した様な表情を浮べ、タルタリヤは「あの仙人かぁ……」と何故かワクワクしていた。戦いを申し込んじゃダメだからね。
「確証はないけどね。でも、タルタリヤの話から考えると、仙術を使ったんじゃないかな」
本人も言っていた。死と同等のものを味合わせないと気が済まないと。……精神的に参ってるとは言ったが、言葉以上の状態になっていそうだ。
仕方ないね、
の大切な人を奪った挙句、実験の道具として使い、更には弱点である炎を使わせていた……むしろ殺されなかったことが奇跡だろう。
「全くあの人は……」
「名前の事を想ってなんだから、呆れてやるなよ」
「それは分かっているのですが、限度というものがあると思います」
「お前は優しすぎるぞ……」
パイモンの言う通りである。名前さんは被害者だったのだから、もっと怒って良い。……もしかしたら、彼女がこんな人だから
が代わりに怒りをぶつけたのかもしれない。名前さんの様子を見ていると、その説が濃厚な気がしてきた。
「ま、そんな訳で君を捕まえるっていう話は現時点ではないよ」
「良かったな、名前!」
タルタリヤの言葉にパイモンが喜びの声を名前さんに掛ける。名前さんは少し困った顔でパイモンに微笑んだ。
「では、現時点で争う理由はありませんね。過去に璃月の魔神を復活させた件については、既に解決しているようですし、私からは何もありません」
守りの要だと言われていた夜叉である名前さん。彼女があの時いたら、どのような展開になったんだろう。
「あっはは。でも、アレは俺も被害者だったと思うんだよねー」
そう言ってどこか不満そうな顔を浮べるタルタリヤ。確かに、あの時は彼が不憫だと思った。だからといって彼がやったことが許されるわけではない。
「……貴方は、どうしてファデュイに入ったのですか」
「うん? それは戦う事が好きだからだよ」
「それだけで、ですか?」
突然どうしたのだろう?
どこか探るような様子でタルタリヤを見つめる名前さん。対するタルタリヤは飄々とした様子を崩さない。心理戦が強い者同士の戦いを見ている気分だ……。
「……まぁ、誰でも言いたくないことの1つや2つあります。私が感じ取った
違和感
・・・
はそれに含まれるのでしょう」
名前さんの発現にタルタリヤは一瞬だけ目を丸くした。その反応は彼女の言葉に対し肯定とみなされる。
「……君が理解のある仙人で良かったよ」
「正直に言えば、人間の言葉を理解するのは難しいです。彼らは発言に込めた意味が、本来の言葉と違う場合がある……その意図を汲み取るのは本当に大変です」
前に
が言っていた。人の感情を読み取るのは難しい、と。今名前さんが言っていたのは、それに近いものなのだろうか。
「ですが、私は200年人間と誤認して生きました。その経験によって、ある能力を得たのです」
「能力?」
「はい。人間の言葉の真意を読む。それが200年の間に身に付けた私の能力です。仙人と人間は姿を似せることはできても、意思疎通は難しいのです」
名前さんが言う言葉は仙人と人間に限らないのかもしれない。人間も動物に含まれるが、同じ動物であるイヌやネコの言葉が分からない。彼らの反応・様子で推測しているだけなのだ。本当に分かるのは同じ種族だけ……きっと名前さんが言っている事に通ずると思う。
「そうか? 名前は話し上手だし、聞き上手だと思うぞ」
「それは全て、話している相手の言葉の真意を”ただ”読み取っているだけなのです。……だから、本当は理解できていないのかもしれません」
隠された本音を聞いたからとは言え、それを完全に理解できるのか。これは名前さんに限らず誰にでも言えるかもしれない。……結局は信頼というものが間に入るのだから。信頼していない人からの言葉に疑いを持ってしまうのは、その人物をまだ信じていないからだ。
「でも君は、俺にとって触れてほしくない内容だと感づいた。理解できていないって言ったけど、俺はできてる方だと思ったよ」
「……本当ですか?」
「うん。だって本当の事だったからね。君が感じ取ったっていうものは、俺にとって触れてほしくない事だったから」
「人間の言葉は難しいです。でも、こうして正解することができて、また少し人間について詳しくなれた気がします」
タルタリヤの言葉に嬉しそうに微笑む名前さん。これも過去に
に聞いた話だが、夜叉の中には人間と暮らしたいと言っていた者がいたという。……きっと名前さんはその夜叉達の考えに近いのかもしれない。
「じゃあそのお礼をしてくれない?」
「? お礼?」
どこかワクワクした様子でそう言ったタルタリヤと、彼の発言に首を傾げる名前さん。……何か嫌な予感がするのは俺だけだろうか。
「そうですね。こればかりは、実際に人間に触れなければ学べない事。分かりました、貴方は何がお望みですか?」
「そんなの1つさ___俺と勝負してよ」
言うと思ったーーーー!!!
どうしよう、止めた方が良いのかな。
「さっき遺跡ハンターを倒す華麗な姿を見て、ずっと思っていたんだ! 君を捕まえるより、戦う方が楽しそうだってね!」
「それが貴方の本性ですね」
また武器を構えちゃった!!
しかも名前さんも乗り気だし!?
でも、”お礼”だから割り込んじゃダメだよね……。
「いいでしょう。妖魔ばかり相手にしていると、少しだけ感覚が鈍ってしまうのです。たまには対人戦も良いでしょう」
「そう来なくっちゃ。……そうだ。相棒、審判よろしく!」
「え、えぇ……」
……とりあえず
が来ない事を祈っておこう。そう思いながら「初めッ!!」と開始の合図を切った。
「タルタリヤが動いた!」
やはりと言うか。俺の開始の声と同時にタルタリヤは動いた。構えた弓は名前さんに狙いを定めている。対する名前さんはタルタリヤの様子を窺っている。
「余裕だね」
「いつでもどうぞ。あ、守りの力は使いませんので遠慮なくどうぞ」
なんと、名前さんは自分の得意分野である守りの力を使わないと宣言したではないか!
からは守る事に関して得意な事と、あまり戦闘を好まないとしか聞いていない。少しだけ不安だ。
「じゃあ……逃げられるかな!?」
タルタリヤが水元素を纏った矢を放った。前に弓を扱うのが苦手とか言っていたが、その矢は名前さんの顔目掛けて飛んでいる。___危ない!
「あぶな……えっ!?」
思わず声が出たパイモンが、言葉を止めた。何故なら名前さんがその矢を簡単に躱したからだ。なんて反応速度だ、タルタリヤの放つ矢が遅かったわけじゃない。むしろ速い方だ。
「では、次は私ですね」
そう言った瞬間、名前さんはタルタリヤの懐にいた。体勢を低くし、あの美しい槍の先をタルタリヤの喉元寸前で止めた。その動きは静かで、そして正確だった。まるで、一撃で仕留めるための動きだ。
「驚いた……速いね、君」
「これでも遅い方ですよ、私は」
参った、と言うようにタルタリヤが両手を挙げた。それを見て名前さんは武器を下ろした……名前さんの勝ちだ。
「すごいな名前!」
「そう褒められるものではないのですが……」
パイモンの言葉に名前さんは困った様子で答えた。彼女は褒められ慣れていないのだろうか?
そう思っていた時、タルタリヤが口を開いた。
「でも何か味気ないなぁ。君の動き、戦うと言うより……殺す為の動きに見えたよ」
タルタリヤの言葉でその場の空気は凍り付いた。……だけど、納得できてしまったんだ。だって、タルタリヤの言葉がその通りだと思ってしまったんだ。名前さんの動きは一撃で仕留める……つまり、相手を殺す為に一撃で終わらせる動きだって事だと。
「そ、そんなわけない……よな?」
「……ごめんなさい、パイモンさん。公子さんの言う通りです」
申し訳なさそうに名前さんはパイモンに謝罪の言葉を覚えた。……つまり、タルタリヤの言葉は事実だということになる。
「今では英雄と呼ばれているようですが、ただ綺麗に伝えられているだけ。……実際は、殺し合いをしただけなのです」
……そうだ。そうだった。
魔神戦争は文字通り戦争……当然、命の奪い合いをやっているもので、名前さんも例外なく誰かを殺している。前に
が戦いを好まないと言っていたのは、この経験が基づいているのだろうか。
「だから名前は戦う事が苦手なのか?」
「……そうですね、苦手です」
パイモンの問いにそう答えた名前さんが言った苦手というのは、文字通りの苦手とは違う意味に俺は聞こえた。
「だったら、殺す事じゃなくてただ武器を振り回すことだけを考えたらどうだい?」
「武器を?」
「そ。正直に言うと、さっきは君を試してたんだよね」
そういえばタルタリヤは弓だけで名前さんと戦っていた。彼は元素で武器を生成することができるのだが、本人によると本気なった時に使うらしい。……ということは、舐めていたのかも。しかも仙人、ましてや戦いに優れた夜叉相手に、だ。
「1回やってみない? 大丈夫さ、これでも俺は反射神経もあるし、今度は油断もしない……どう?」
タルタリヤはただ彼女と戦いたいだけなのか、それとも彼女の言葉を聞いて何か思うことがあったのか……その言葉の真意は分からない。
……けど。
「ただ武器を振り回す。……なるほど、考えた事ありませんでした」
「それは俺の誘いに了承したってことでいいのかな?」
「ええ。……私にも夜叉の血が流れています。ですから、戦いと言われると自然と本能が刺激されてしまうのです。……私はそれが嫌いでした」
「名前……」
「ですが、貴方は心の底から戦う事が好きなようですね。……もし、貴方に夜叉の武芸を受け止める覚悟があるというのなら……殺す勢いで私に掛かってきてください」
そう言って名前さんは武器を顕現した。彼女の返答にタルタリヤはニヤリと笑みを浮べ、双剣を生成した。
「勿論さ。……夜叉と戦えるなんて光栄だよ。それも、あの戦争の経験者である存在なら尚更!」
___もしかしたらタルタリヤは分かっていたのかもしれない。名前さんが戦う事が嫌いだということ。それでも、本能には抗えないことを。
それを理解した上で名前さんを受け止めたいのだろうか。まぁ、その理由が楽しみたいからだとしても。
「……それが貴方の本気ですか!?」
「いいや! まだまだこれからさ!!」
自分の血に怯えていた名前さんの心を救っていると思うんだ。証拠に、先程はすぐに戦いを終わらせる動きをしていた名前さんが、タルタリヤと武器を交わらせ金属音を鳴らせている。……そして、表情もどこか楽しそうに見える。
なんだかんだ相性はいいのかもしれない。
「おわっ!?」
「また私の勝ちですね」
しかし、いくら戦う事が好きといっても、その経験値は当然名前さんの方が高いわけで。勝負は名前さんの勝ちだ。だが、夜叉相手にあれだけ着いていけたタルタリヤもすごい。
「……見た目は歳下なんだけどなぁ」
「私は貴方の何千倍も生きています。経験の差は大きいですよ」
座り込んだタルタリヤに名前さんが手を差し伸べる。その手にタルタリヤは自身の手を置いた。それを確認した名前さんは、自分より背の高いタルタリヤを引っ張って立ち上がらせた。……華奢に見えるのに、結構力あるんだなぁ。
「戦う事が嫌いって嘘でしょ……」
「本当の事ですよ。というより、貴方が悪いのですよ」
「え?」
「夜叉の本能を少しだけ引き起こしたのは、他でもない貴方です」
クスクスと笑う名前さんと、少しだけ困った顔を浮べたタルタリヤ。初めは合わないかもと思ったけど、今では良い関係になれそうだ。
「貴方さえよければ、またこうして対人戦をしませんか? 貴方と戦えば、夜叉の血を受け入れられるかもしれません」
「それは光栄だ。俺は欲を満たせる、君は克服できるかもしれない……一石二鳥だね」
「ありがとうございます、公子さん。……いえ、タルタリヤさん」
初めてタルタリヤと呼んだ名前さん。……ずっと公子と呼んでいたのは、壁を作っていたからなのかもしれない。けど、俺と同じくタルタリヤと呼んだと言う事は……少しだけ信用したって事かな。
「それはこっちの台詞でもある……えーっと、君の事はどう呼んだら良い?」
「名前とお呼び下さい。貴方にはこの名で呼んでもらいたいのです」
「名前ね。オーケー」
確かその名前は鍾離先生が付けたものだったはず。鍾離先生と交流のあるタルタリヤだからその名前で呼んで欲しいのだろう。
「……じゃあ、仲良くなった記念にもう一戦しよう!」
「良いでしょう、夜叉の体力に着いて来られますか?」
「余裕。まだまだ戦い足りないんだ」
……これ、いつ終わるんだろう。
また武器を構えて戦い始めた名前さんとタルタリヤに苦笑いが出てしまった。
「……そろそろ
を呼んだ方がいいんじゃないか」
「いや、呼ばなくても来ると思う」
俺とパイモンは
の事を思い浮かべた数分後、武器を構えて接近しようとしていた2人の間に落下攻撃で
が登場することになる。
***
オマケ
好感度で開放されるボイスネタ
〇〇について
名前→タルタリヤ
「もし彼が夜叉で、私達と同じ時代を生きていたら……間違いなく戦力の要を担っていたでしょうね。それに、あれはまだ強くなりますよ。いつ私に勝てるのか楽しみですね」
タルタリヤ→名前
「戦う事が嫌い? あんなに楽しい勝負をしてくれるのに嫌いだなんて勿体ないなぁ。俺が楽しさを再認識させてあげないとね」
※まだ書き足りないので第二弾を執筆予定です
2023/02/05
戻る
すごく面白かった!
面白かった!
頑張って!
Clap!
push!
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -