ブルーの猫


※色々捏造あり



現在、俺は現世にいた。勿論任務として、だ。
数日前から動きが活発化している存在、破面(アランカル)。破面との本格戦闘に備える為、俺を含めた6名……松本、阿散井、斑目、綾瀬川、朽木ルキアは現世の死神代行、黒崎一護と合流せよ、と命令が下った。

普段は学生に紛れて生活をしている。今は報告書を書いていたところだったが、松本に邪魔をされてしまった。


……今は俺の部下である松本は、俺よりも長く十番隊にいる。
であれば、あいつについて知っているのだろうか。……過去に十番隊隊長を務めていたと記録があった名前について。

初めに俺が目にした資料……名前が行方不明であり、重罪人となった記録に書いてあったのだ。俺がまだ三席だった頃、隊長であった人の前の十番隊隊長が名前だったということが。


……これも何かの縁なのだろうか。ふと、そう思っていたときだ。


「あら? かっわいい〜!! 隊長、猫ですよっ」


先程まで破面について真面目な話をしていたというのに、また巫山戯た態度に戻りやがって……。
そう思っていたが、やつが口にしたのは動物の名前だった。


「あぁ、そいつか。さっきからいたぞ」


なんだったら、真面目な話をしている間もずっといた。
猫の種類については詳しくないが、毛色はグレーで青色の瞳だ。身体はわりと細いラインをしている。


「あら大人しい。この子、野良かしら?」

「さあな。俺が帰る頃にはいなくなるんだよ」

「もしかしてずっといるんですか?」

「いつの間にかいるんだよ。俺を認識しているのかどうか分からないがな」


現世に来て数日。適当な場所で休めていたとき、この猫は現れた。最初は適当にあしらっていたんだが、何故か懐かれてしまった。特に何もしていないと思うんだが……まあいいか。


「綺麗な子ね〜。野良なのがビックリだわ」

「そうなのか?」

「そうですよ! 恐らくブルーの猫じゃないですかね」

「ブルー? そいつはどう見てもグレーだろ」

「猫の毛で青みのある灰色の毛をブルーって呼ぶんですよ。だから野良なのがビックリで」


ブルー……青、か。
青と言えば思い出すのは……名前のことだ。彼奴を色で表すなら、間違いなく青と俺は言う。


「けど、なんだろう……」

「? 何がだ」

「いえ、猫に思うのも変な話なんですけど、この子を見ていると懐かしい人を思い出してしまって」

「懐かしい人?」


松本の腕から降りた猫は、足を持ち上げてペロペロとなめていた。よく見る猫の仕草の1つだ。
それを見つめていた時、ふと松本がそう言葉を落としたのだ。


「はい。隊長はご存知ないと思いますが、志波隊長の前に十番隊隊長を務めていた方を思い出していたんです」


___志波隊長の前って言ったら……彼奴のことじゃないか?
松本は、名前が隊長だった頃を知っている。


「……そいつは、どんなやつだったんだ?」

「あたしが配属されてから1、2年ほどしか関わりはなかったんですけど、良い人であることは間違いないですよ。ちょっと男勝りな所がありましたけど」


男勝りな所、か。確かにそれは言えてる。
笑みがでそうになるところを必死に堪えて、松本に続きを催促した。


「何よりも人との繋がりを大事にしていました。十番隊だけでなく、他の隊にも気に掛けていらっしゃった方ですから」

「ほう」

「あと、何でもそつなくこなすから『天才』とも言われてました」


その点は隊長と一緒ですね!
そう言う松本の声を聞きながら考える事は、幼き頃に雛森……桃に稽古を付けていた名前を思い出す。

彼奴の動き、一つ一つが洗練されていて、静かだった。
今思えば分かる……確かにあの動きは隊長格でもおかしくない。


……そうか。
俺と初めて会ったあの時点で、名前は十番隊の隊長だったんだな。

そう思った瞬間、普段身に付けている十番隊の隊長羽織がただの羽織だとは思えなくなった。いや、元々ただの羽織だとは思ってなかったが、その……名前も着ていたという事実を実感して……繋がりを感じた気がしたんだ。



「あれ、なんだか隊長嬉しそうですね」

「気のせいだろ」

「それもそうですね。あの人がいた頃、隊長はいませんでしたから」

「そういや、なんで前の隊長の話になったんだったか?」

「あぁ、そうです! 実はこの子の目の形と色! その人にそっくりなんですよ!」


そう言って再び抱きかかえ、こちらに見せてきた松本。
松本に抱えられた猫と目が合う。


「……そうか」


必死に知らないフリをした。
……松本の言う通り、その猫の目の形も色も、名前にそっくりだったから。

ボロが出ないように、冷静になることだけ意識した。……何故なら、松本は俺と名前が顔見知り……いや、共に過ごしていた時期があったことを知らないのだから。






続きます

2023/10/1


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