第3節「雄英体育祭:後編」


微裏表現あり



「……う、っ……」


あれ……、さっきギルに魔力を分けて貰ったばかりなのに、こんな……。


「その疑問、答えてあげようか?」

「!?」


聞こえた来た声に顔を上げる。


「な、なんで普通に出てきてるのよ……」

「流石にあの様子を見ていたら教えてあげた方がいいと思って」


目の前で私を見てニコニコとしている男性は、私のサーヴァントの1人であるマーリンだ。
……で、さっきのレクリエーションの時もそうだったけど、なんで普通に姿出してるの。


「前の世界だったらバレるだろうけど、この世界は様々な姿の人間がいる。私のような存在も気にはしないだろう」


あ、答えてくれた。
まあ異形型の個性の人で感覚が慣れてきて、それが普通だと認識しているんだろうって事か。


「さ、私がここまできた目的を話そう」


壁に寄りかかって座り込んだ私の隣にマーリンが並ぶ。


「大分英雄王の魔力を貰ったようだね。それならあの試合で見せた威力も納得がいく。……今も尚、自分のものだと主張してるように残っている魔力が気にくわないけど」


面白くなさそうなマーリンの瞳が私を見下ろす。


「まあ先程の試合で君が擬態したのはエルキドゥランサーだ。出身地が同じサーヴァントだから相性が良かったんだろう」

「……キャスターは何しにきたの?」

「何しにって、君の今の状態を見てやることは1つだろう?」


舌舐めずりしながら同じ目線になるように屈むマーリン。
綺麗な顔が目の前に来て、その近さに反射的に首を少し後退する。


「動揺していたんだろう?英雄王に魔力を貰ったばかりなのに、こんなに消費しているのか、って」

「!!」


マーリンにはなんでもお見通しだったって事か。
今から3試合目があるのだから、別に魔力供給して貰わなくても休んでれば……ッ!!?


「んむっ!?」

「ん……っ」


後頭部を固定され、逃げることを封じられた。
唇を割って口内に侵入される。
舌を吸ったりしたり絡めたりする事で発生する水音に耳を塞ぎたくなる。


「ぷはっ、はぁ……ッ」

「久しぶりのキス、ご馳走様」


キッと睨み付けても目の前のこの男は痛くない、と言いたげな表情だ。
なんならさっきよりニコニコしている。


「私達からの魔力供給はあくまで”応急手当”だ。君の魔力じゃないから消費が激しくて当然。……それも、擬態したサーヴァントとの相性が良かったら尚更持っていかれるよ」


もっと早くに教えて欲しかった……!


「今の私の魔力量じゃ、擬態出来る回数がまだまだ少ない……。それに、擬態状態がどれだけ保っているかでも擬態し直せるかも変動する……」

「性能だけならピカイチだと私は思うんだけど、それに伴う魔力消費が多すぎるのは問題だね。はっきり言って、長期戦向きではない」

「……」


気にしているんだから言って欲しくなかった……。
マーリンの言葉で思ったことを心の中で留めておく。まあバレてるんだろうけど。


「気にすることはない。長期戦向きではないけど、私達から魔力を与えられる事で再び戦う事はできる。だけど、そう長くは持たないと思っていたほうがいい」

「……それは分かってる」


分かっている
だから障害物競走ではジャックの力だけで突破しようと頭を回転させた。
強化による補助もそう長続きさせない程度に魔力を消費して使った。結局2回使うはめになったけど。

宝具を一度使ったけれど、そう考えてたら障害物競走が終わった後に残っていた私の魔力はまだ1回くらいは擬態状態を保てるくらい残っていたはずだ。
だとしたらあの時……心操君に操られていた時の私がどんな行動をしていたのかが気になる。
擬態1回分程に残していた魔力がほとんどなくなっていたんだ。
……記憶にない私は何をしていたの?

サーヴァントのみんなは知らないだろう。
だってみんなは私の個性の一部として存在している。従わせているって感じではあるけれどサーヴァントのみんなを拘束している訳でもない。
だが、私の個性である以上逃れられないものがある。それは私の意識がなくなったとき、みんなは現界できない、と言う事だ。

でもクラススキルでギルは単独行動を、どう聞いても荒行で獲得したとしか言ってない単独顕現というスキルを目の前にいるマーリンは保有している。
……と言うことは、この世界では2人のスキルは弱体化あるいは消滅している?


「さあ、いつまでも戻ってこなかったら心配されるんじゃないかい?」

「そうだね。……別に頼んでなかったけど、魔力ありがとう」

「どういたしまして」


……今考えたら、私人が通るかも知れない場所でマーリンとキスしてたって事!?
ああ、今絶対顔赤い……っ。


「その真っ赤な顔、からかわれたくないのなら隠した方がいいよ?」

「一体誰の所為だと……あ、こら〜っ!!」


あの魔術師、霊体化で逃げた!!もぉ〜ッ!!





2021/07/10


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