第2節「雄英体育祭:前編」



競争なのだから、早くゴールに着いた者が勝ちだ。
しかしこの第1種目は予選なのだ。何人が残れるか分からない。


3つのランプが順序よく消えていく。
……まずは先に人を行かせる!


「スタート!!」


ミッドナイト先生の合図の声が聞こえた。
その声を合図に、右腕に隠していた令呪を浮き上がらせる。


「擬態……“アサシンジャック・ザ・リッパー”」


小さく呟き、擬態の意思を告げる。


『わたしたち、おかあさんの力になるよ!』


ジャックの魔力が流れ込んでくる。
可愛らしい声が聞こえ、目を開けた。

目の前は一気に多くの人が動いた影響でぎゅうぎゅうの状態だった。スタートが遅れた私には進む道がない。……いや、壁がある!

目の前の人集りを飛び越え、壁を蹴りながら進んでいく。
これはジャックの身軽さがあるからこそできる芸当だ。
おまけに物音もそんなに鳴らない。下が騒がしいから聞こえない、って事もあるだろうけど。


「……?冷気……?」


寒気を感じ、後ろを振り返る。
そうか、この冷気は……!!


「轟君か……!!」


そういえば彼は私と透ちゃん、尾白君でチームになったときの相手チームだった。
その時と同じ攻撃方法だ……!


「一度見たことがあるし、何より体験してるから分かっちゃうんだよねッ!」


足を取られないように、迫ってくる氷を避ける。
これは知らなかった子には鬼畜だねぇ。


「……!」


横を見るとかっちゃんと百ちゃん、切島君がいた。更に奥から青山君も現れた。
どうやらA組には効いてないみたいだよ、轟君?


「うおっ、っととと……!」


轟君の個性によってここ真っ直ぐは氷のフィールドだ。……普通に走るのは無理だ。
ならばジャンプしていこう!走るよりはマシなはず!!



「ん?なんだろあの紫色の奴」


所々落ちている紫色の玉。
なんとなくだけど触っちゃいけない気がする。
それを避けつつ進んでいく。


「はぁ、やっと普通の地面だ……」


一度立ち止まり、体勢を立て直そうと思った時



「ターゲット……大量!!」


目の前に巨大なロボットが。
いや待って、これ何処かで見たことある……!


「さあーいきなり障害物だー!!まずは手始め、第一関門、ロボインフェルノ!!」


マイク先生の実況の声が響く。
それと同時に周りから「入試の時のロボット!?」という声が聞こえる。
そうだ、入試の時にいたあの0Pヴィランだ。まさかこんなにいるとは……!


「……!」


突如、視界にあったロボットが氷に覆われた。……轟君の仕業か!!
先程実況で「攻略と妨害」と言っていたが、確かにその通りだ。
ここで妨害できればライバルを減らせる。
しかし、ジャックの力ではあのロボットには適わない。
どうするか考えていた時


「おい、誰か下敷きになったぞ!?」

「死んだんじゃねーか!?」


周りからそんな声が。流石にそんな事は……っ。
身体に寒気が走る。


「死ぬかああああッ!!!」

「き、切島君!?」


なんと倒れたロボットの下から切島君が出てきたのだ。
そうか、確か切島君の個性は『硬化』。
身体を硬化させる個性だと本人が言っていた。しかしあの大きさのロボットが倒れてきたのに平気だったとは……。


「A組のヤローは……、本当にやな奴ばっかりだよなァ!?」


切島君の隣に出てきたのは……あれ、何処かで見覚えが……。
あ、2週間前に教室の前に集まってきた他クラスの人達の中にいた人だ!
確か、B組の人だったはず……ごめん、名前は知らないや。

他人の心配をしている場合ではない。
例え同じクラスであろうとみんなライバルなのだ。
しかし、あのロボットをどうしたら……


「……あれは、かっちゃん?」


ロボットの近くを飛ぶ人物を発見する。あの髪は……かっちゃんだ。
なるほど。飛んで超えた、と。


「なら私も!」


参考にするね、かっちゃん!!
近づいて来たロボットの手を躱し、その腕を駆ける。
ジャックの素早さは私のサーヴァントの中でも上位に入るのだ。あっという間に超えられた。


第一関門、突破だ!





2021/07/04


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