第1節「体育祭に向けて」


※百合表現あり。苦手な方はご注意ください。



「まさか5分も持たぬとは……」

「昨日より短かった気がする……」


擬態状態が解け、仰向けに倒れている私をネロが腰に両手を宛てながら覗き込む。
雄英へ進学してからサーヴァント達との対人戦に変わった訓練のお陰で段々戦闘慣れはしてるはず……。
だけどやはり英雄と言われた人達だ、全く歯が立たない。


「普段通りなら別のサーヴァントに擬態して2回戦に入る予定なのだが……」

「も、もう……動けない………」


ゼエゼエと息を切らしている私にネロは溜息をついた。
ネロの言う通り、いつも通りなら別の子に擬態して2回戦を行っているのだ。
通常の擬態状態では2回までの擬態が可能になるまで個性が鍛えられているようだけど……。

先程の擬態状態を5分も保てなかった私は、昨日の訓練もすぐに魔力を消耗して動けなくなってしまったのだ。
なのでその日は私の魔力切れで訓練は切り上げになった。昨日見てくれていたエドモンには悪い事をしてしまった……。


「雄英体育祭という奴が近いのだろう?このままではいけないのではないか?」

「そ、そうだね……」

「うぬ!と言うことで、訓練は続けるぞ!」

「も、もう擬態できる魔力が残ってないよ……」

「何を言っておるのだ奏者よ、魔力ならまだあるではないか」

「え?」


一体ネロは何を言っているんだ。
そう思い、言い返そうと思った時だった。


「んむっ!!?」

「……こら奏者、暴れるでない」


私の唇を塞いだのは、形の良いネロの唇だった。
私の顎に手を添え、逃がさないと言いたげな瞳で私を見つめる。


「んん……っ、ふぁっ」

「良い反応だ、奏者……んっ」


一度離れた唇は再び重なり、元々息切れを起こしていた私は更に呼吸を乱してしまう。


「魔力は有り余っておる。……さあ奏者、第二グラウンドと行こうではないか」


そう言って怪しい笑みを浮べるネロ。
こんな艶やかなネロ、初めて……ではない!!!


「な、なんでき……ッ!?」

「余がしたかったからだ!ダメなのか?」

「べ、別に魔力供給はそれじゃなくても……!!」

「奏者はいつまで経っても初初しいな!そんな奏者も大好きだぞ!!」


た、確かに生前も魔力供給という事を口実にされたことはある……。
というか、それを口実にしてやってくる子しかいない!!!
目の前にいるネロもその1人である。


「恥ずかしいから嫌だって言ってるじゃんかぁ……」

「そう言っておきながら、奏者も嫌がってないではないか!!」


ケラケラ笑うネロの言う通り、本気で嫌って訳ではない。
それに大好きなみんなを拒む理由がない。


「さあて!第二グラウンドと行こうぞ!!」


そう言って真紅の剣を構えたネロ。
まだまだ訓練は終わらない。





2021/07/04


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