第9節「敵連合」
次の日
午後のヒーロー基礎学の時間だ。
「今日のヒーロー基礎学だが……。俺とオールマイト、そしてもう1人の3人体勢になった」
「はーい!何するんですか?」
「災害水難何でもござれ。レスキュー訓練だ」
レスキュー訓練……!これなら私も個性を抑える必要はなさそうだ。
むしろ、私の個性はレスキューに向いていると思う。何となくだけどね。
「今回コスチュームの着用は、各自の判断で構わない。中には活動を制限するコスチュームもあるだろうからな」
相澤先生がリモコンを操作し、コスチュームが収納されている場所が姿を現わす。
「訓練場は少し離れた場所にあるから、バスに乗っていく。以上、準備開始!」
先生の言葉の後に、私はコスチュームが入ったケースを取りに席を立った。
***
『おかあさん、これからどこに行くの?』
「ちょっと離れた場所にある訓練場だよ。レスキュー訓練だから、アサシンの個性が役にたつかも」
『ほんとう!?わたしたち、役に立てる?』
「アサシンはいつも頑張ってくれてるよ」
『えへへっ』
姿は見えないけど、気配は読めるようになった。
今日の護衛であるジャックと会話(小声)しながら、ゆっくりしていると。
「1-Aしゅうごーう!!バスの席順でスムーズにいくよう、番号順で2列に並ぼう!」
ホイッスルの音にびっくりしたが、どうやらその正体は飯田君だったようだ。
「早速委員長らしいことやってる、飯田君」
『あの人うるさい』
「ははは……っ」
声からするに、びっくりして機嫌を悪くしてしまったようだ。
でも飯田君に悪気はないんだよ、ジャック。
座っていたベンチから立ち、飯田君の指示通り番号順に並ぼうと腰を上げた。
***
バス車内
「……くそぅ、こういうタイプだったか……!!」
そう言って項垂れている飯田君を視界に入れてしまい、苦笑いを浮べてしまった。
恐らく飯田君の中でバスの構造は観光バスによく見られるタイプだったんだろう。
残念ながら今乗っているバスは路線バスでよく見るタイプだね。私、バスを利用したことがそんなにないからわかんないけど。
「まあ派手でつえー個性っていえば、やっぱ轟と爆豪だな!」
賑やかなバス内で聞こえた声に反応し、顔を上げる。
私の前に座っているかっちゃんと、隣に座る響香ちゃんの頭が視界に入る。
切島君の会話に出てきた本人、かっちゃんはケッと言って窓の外を見た。もう一人である、私の隣に座っている轟君は無反応。……寝ているのだろうか。
何故轟君が隣に座っているのか。私にもよく分からない。
本当は霊体化したジャックが隣に座っていたのだが、轟君が「隣、いいか」と言ってきた為、断る理由がないので了承した。
これが隣に轟君が座っている経緯である。
ジャックはどうしたのかって?座ってるよ?私の膝の上に。霊体化してるけどね。
「爆豪ちゃん、切れてばっかだから人気でなさそ」
「んだとゴラ!!出すわ!!!」
「ほら」
前から思ってたけど、梅雨ちゃんど直球……!!
「この付き合いの浅さで、既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されているってすげーよ」
「テメーのボキャブラリーは何だコラッ殺すぞ!!!」
「ブフッ」
先程かっちゃんの性格をそう言ったのは『上鳴 電気』君だ。
彼の発言のお陰で私の腹筋は死にかけている。
「オイコラ名前……、何笑っとんだ」
「だっ、だって……っ」
ダメだ、抑えきれない。
再び吹き出すと、かっちゃんに髪を引っ張られた。だけどそんなに痛くない。
こんなに弄り倒されているかっちゃんを見るのは初めてだ。……本心では楽しいって思ってくれてたら嬉しいんだけどなぁ。
「なあなあ、爆豪と苗字って付き合ってんの?」
「あ、それ!前から気になってたんだよねー!」
かっちゃんにちゃんと座るように言ってると、上鳴君と三奈ちゃんがそう声を掛けてきた。
「違うよ、幼馴染み。かっちゃんといーちゃんとは幼馴染みなんだ」
「えー、つまんね」
「上鳴君、君は何を期待してたの……?」
「幼馴染みからの恋……!!漫画で良くあるパターンって事は……!!」
「ないよ、三奈ちゃん」
なるほど。2人はこういう恋愛話で盛り上がるタイプか。
本で読んだ限り、このようなタイプは否定をしても信じない子が多いらしい。まあ、大体はからかい心らしいけど。
「ほんとかな〜?実はどっちかに気があったりして?」
「響香ちゃんまで……。10年近く一緒にいたけどそんな事なかったよ」
ね?とかっちゃんに問うたが、そっぽを向いていたので表情が更に見えなかった。
訓練場へ到着するまで、響香ちゃんのニヤニヤした表情と対面していたのであった。
![](//img.mobilerz.net/sozai/1646.gif)
2021/07/03
加筆修正:2021/07/04
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