第7節「二人のリスタート」



「それでは!屋内対人戦闘訓練、第二戦!スタート!!」


始まった。
さて、早速使わせて貰おうか。千里眼を。

先に入ってきたのは身長の高い男の子だ。
……何だろ、あの腕。耳が付いてる。もしかして、私達の場所を音で探り当てている?
残念ながら透視能力だけでは相手が何を調べているか知るには情報が少なすぎる。
私は口の形で何を喋っているか推測する事もできないので、相手の出方を窺うしかない。


「……氷君だ」


次に入ってきたのは氷の個性を使う男の子だ。
彼が壁に手をつけた、と思えば。


「!!」


なんと氷で壁を凍らせ始めたのだ。
その氷は壁から床、更にはこのビル全体に浸食し始めた。


『名前ちゃん!足凍らされちゃって動けない!!』

『俺もだ……!なんだこれっ!?』


2人から通信が入る。
どうやら2人は私がこの個性の使用目的に気付く前に行動不能にされてしまったみたいだ。


「なるほど、凍らせて動きを封じようとしたって訳か……!」


向かってくる氷を軽く飛んで躱す。
2人の報告がなければ私も凍らされてた……!


「…!」


氷を踏みしめる音が聞こえる。
視線を音の聞こえる方……この部屋の入り口へと向ける。


「……なんだ、凍ってなかったのか」

「2人の報告のお陰でね」


入ってきたのは氷君だ。
私は杖を構え、攻撃態勢に入る。


「そう簡単に触れさせないよ」

「……へぇ」


私の言葉に一言そういった彼は、こちらに向かって氷を生成した。……遠距離タイプか!
聖剣を取り出し、向かってきた氷を迎え撃つ。
いやあ、マーリンは魔術師のくせに筋力あるからね!お陰で私の筋力も大幅に上がってるよ!


「わぁ、本当に氷なんだね。固いや」


正直な感想を言ったつもりだったのだが、氷君は眉間に少し皺を寄せた。
個性の関係上、遠距離攻撃にしか向いていないという事だ。
ならば間合いに入れば……!

聖剣を床に突き刺して光線を飛ばす。
それに相手が怯んでいる間に拘束してしまえば……!!


「あれ……っ!?」


予想していた場所に氷君がいない。
そう思った瞬間、


「ッうぐっ」

「手間取らせやがって」


そう声が上から聞こえたと思えば、手首辺りを凍らされた。
どうやら上をとられ、押さえつけられたみたいだ。


「ヒーローチームWin!!!!」



ヒーローチームの勝利というオールマイト先生の声が聞こえる。
どうやら私達ヴィランチームの負けみたいだ。


周りの氷が溶けていく。それを感じなながら視線を動かす。
氷君の方を見ると、彼が手を当てている核から湯気らしきものが出ている。
氷を出して、その氷を溶かす事ができる。……一体、どんな個性なんだろう。

氷君の様子を観察していると、こちらにやって来た。
不思議そうに彼を見つめると、腕に感じていた寒さが消えた。どうやら拘束を解いてくれたらしい。


「あ、ありがとう……」


お礼を言うが反応無し。無愛想だな。
立ち上がって擬態を解除する。氷君がいるからマーリンにお礼が言えなかった。帰ったら言おう。


「……お前の個性」

「?」


急に話しかけられ、ちょっと驚く。
一応、ここにいるのは私だけ……だよね?


「お前の個性はなんだ」


こちらを振り返って氷君はそう質問した。
やはり彼も尾白君と同じく、私の個性を疑問に思っていた人か。


「体力テストとは明らかに違う。それに……何なんだ、お前の個性」


……ん?
氷君、何か言いかけようとしたかな……?
まあいいや。質問に答えてあげないと。


「私の個性は『擬態』。空想の職業を使うことができるんだ。だから今は、体力テストの時とは別のものに擬態してたよ」


質問にそう答えると氷君は私をしばらく見つめた後、この空間から退出した。


『良く分からない奴だな』

「うん。……それに、なんか私すっごく睨まれてたんだけど」

『奏者の美貌に惚れたのではないか?』

「絶対無いと思う」

『余もそう思う!何たって奏者は余のものだからな!!』

「……」


様子を見て話しかけてきたであろうネロの発言に呆れる。
私、氷君に何かしただろうか……。あ、あの時言った言葉が煽りと捉えられたのかな!?


『しかし奏者。”勝てる”と油断したであろう?』

「ぐっ……」

『まあ策は悪くなかったがな!あの氷の者も中々手慣れであったと思うぞ!』

「経験の差、かぁ……。私、サーヴァントみんなに鍛えられてるから自信あったのに……」

『奏者の幼馴染み殿のように、才能のある者かもしれんな!』

「あ、かっちゃんの事か……」


そんな事よりも、私の立てた作戦で敗北させてしまったことを2人に謝らなくては。
私は急いでモニタールームへと向かった。
待っているのは講評だ。



***



私達の講評が始まった。


「苗字少女。轟少年との対人で少し油断したね」

「うっ」

「自覚ありか!それは結構!油断は禁物だから気をつけるように!」


先程ネロに指摘されたことをオールマイト先生にも指摘された。
私への講評を最後に次のチームの対戦へ移った。


「ごめんね2人とも。私の作戦の所為で……」

「そんなことないよ!相手が悪かったんだよ!!」

「そうだね」


透ちゃんの言う通り、相手が悪かったのもある。
しかし私はクラスメートについて知らなさすぎる。もっと念入りに観察とかしておかなければ。……いーちゃんのように。


「しかし、苗字さん守備もできるなんてすごいな」

「そうかな。ありがとう」

「だって推薦入学者とやり合ってたんだもん!すごいよ!」


どうやら透ちゃんが言うには、氷君……『轟 焦凍』君は推薦入学者だったらしい。そりゃあ強い訳だ。
で、もう1人の背の高い男の子は『障子 目蔵』君といい、個性は『複製腕』というものだったようだ。
この世界で生きて15年。まだまだ個性について分からない事ばかりだ。

私は二人の元を離れてかっちゃんの元へ行った。
まだどこかぼーっとしている所があり、授業が終わるまで私は黙ってかっちゃんの隣にいた。





2021/07/02

加筆修正:2021/07/04


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