第7節「二人のリスタート」
次の日
本格的に学校生活……高校生生活が始まった。
午前中は必修科目の授業。
「じゃあ、この英文のうち間違っているのは?」
……普通だ。ふっつうの授業だ。
最高峰の学校だから授業はどんなものだろう、と思っていたのだが普通だった。
そんな事を思いながら過ごした午前中の授業が終われば、次にやってくるのはお昼休みだ。
「お昼、一緒にどうかしら」
雄英には食堂があるらしいのだが、今日はお弁当を持参してきたので教室で食べようと思っていた。
そんなとき、私の机の上に来たのは長い髪を腰の辺りで蝶結びに結っている女の子だ。
「えーっと……」
「私は『蛙吹 梅雨』。梅雨ちゃんと呼んで」
私に話しかけてきたのは蛙吹梅雨ちゃんだ。
「私、ずっと貴方と話したかったの」
「え?」
「貴方、私と同じ試験会場だったのよ。知らなかった?」
し、知らなかった……。
試験に集中してて周りに人の事なんて全然覚えてないや……。
あ、でも飯田君の事は覚えてた!いーちゃんに注意してた人だよね!
「私、思ったことは何でも言っちゃうの。……名前ちゃん。貴女の個性、入試の時と違う気がするんだけど」
彼女の言葉に思いっきり反応してしまう。
えーっと、こういうときどうやって返せば……!!
『奏者よ。前に母殿と決めたであろう?個性について聞かれたら、とりあえずものまねする個性と言えと!』
そ、そうだった……!急な事で頭が混乱してしまったけど、そう決めたんだった……!
今日の護衛であるネロに感謝しなければ。
「わ、私の個性は擬態っていうの……!で、その擬態する対象がありとあらゆる職業……ほら!あのゲームとか小説に出てくる職業に擬態できるの!」
「なるほどね。なら、剣を使ってたのも納得だわ」
な、なんとか誤魔化せた……。
今までも……幼馴染み二人にもこのやり方でなんとか隠し通してきた。
英霊の存在を知られる訳にはいかない。……たとえ、同じヒーローを目指す仲間だとしても。
「私も気になる気になる〜!」
「わっ!?」
後ろから抱きつかれ、大きな声を出してしまう。
後ろを向くと、私に抱きついてきた本人がこちらをみててニシシッと笑っていた。
「私、『芦戸 三奈』!よろしくね、苗字っ!」
「よろしく、三奈ちゃん!」
女の子の友達がいたこと無かったからとても嬉しい。
勿論、小学校も中学校も、幼稚園でも女子はいた。だけど、ずっと同じ学校に進んでいるのはいーちゃんとかっちゃんだけだったはずなので、女の子の知り合いがいない状態で小学校と中学校は入学していたわけだ。
しかし、ずっと一緒に過ごしてきた彼と今日一度も話せていない。
このまま話す事なく一日が、一週間が……時間が過ぎてしまうのだろうか。
そのことを考えると、心が「寂しい」と言っている様な気がした。
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2021/07/02
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