第6節「個性把握テスト」


※50m走は出席番号順で三人に分けた設定です
本来なら葉隠、爆豪、主人公になってしまうのですが、峰田、八百万と走った設定でお願いします



1種目目:50m走



他のクラスメートがやっている所を見ながら、誰を使おうか悩んでいた。


「主殿、僕を使っては如何ですか?」

「……おぉ、そうだね。アサシン、貴方の力借りるね」


右腕に令呪が浮き上がる。


「擬態、”風魔小太郎アサシン”!」

『この力、主殿に』


声が聞こえたと思うと、私の身体に小太郎の魔力が入ってくる。……よし、安定した。
目を開けると赤い何かが目元を……。って、ああ。


「ヘアピン、襟の方に付けてて良かった」


彼に擬態すると、前髪が長くなっちゃうんだよね。
憑依したサーヴァントの特徴が自分の身体に反映されるので、分かってはいたが。
今日は寝坊したから段々はねてきたりして恥ずかしい思いをしたくなかったので一応ヘアピンを持ってきていたのだ。


『……申し訳ございません』

「大丈夫だよ」


動くときに稀に見れる鋭く赤い左目がかっこいいんだよなぁ。
普段は可愛らしいので、戦闘の時と普段の時のギャップが彼の良いところだと私は思っている。

私は一番右端のレーンに並び、軽くその場で動く。
マーリンの指導で既に全員と擬態済みではあるが、こうした戦闘とは違う事で個性を使ったことがない為新鮮だ。


「……ん?」


スターティングブロックに足をいれてクラウチングスタートの姿勢になるが、どうしても違和感しか感じない。……おかしいなぁ、中学の頃はなんともなかったのに。


『恐らく、僕の影響かと』


なるほど。忍だからスタートの姿勢なんて意識しないのかな?
たしか最初の方に走っていた男の子がこのクラウチングスタートを使ってなかったよね。……じゃあ私もスターティングブロック使わないでやろう!


「位置について。よーい」


その言葉の後にピストルの音が響いた。
自分の中では良いタイミングで反応出来たと思う。
普段の私の走り方とは違う。……これは小太郎の走り方だ。
そう思っていると、一緒に走った人の中では一番を取れた。


「4.02」

「わあ〜っ、すっごく早くなってるっ!」



ロボットから伝えられた結果に嬉しくなる。
私、個性無しだったら9秒台だからなぁ……。
それに、小太郎は私が契約したサーヴァントの中でも機動の高い子だ。……私が元々運動神経がない所為で小太郎みたいな早さではなかっただろうけど。



第2種目:握力


『……すみません、主殿』


小太郎が申し訳なさそうな声でそう言った。
記録は75kg。
私としては満足なんだけど、小太郎は気にしているんだろうなぁ。可愛い奴め!



第3種目:立ち幅跳び


「ほっ。……わあああああっ!?」


助走が思ったより速すぎた事と、跳躍が高かった事に驚いてしまいお尻から着地してしまった。


『大丈夫ですか?』

「……お尻が痛い」



第4種目:反復横跳び


「わあっ、中学の頃の何倍だろう……!!」

『主殿、結果がよろしくなかったんですね……』


小太郎がボソって何か言ってたけど、私は気にしないもんね!!!



第5種目:ソフトボール投げ


「……どうやって投げたら記録が伸びるかな」


先程相澤先生に言葉をぶつけていたあの女の子が記録∞を出したのを見て考える。


『……!主殿、僕に提案があります』

「ほんと?聞かせて?」

『ソフトボール投げというものを僕にさせて頂けませんか? 必ず良い結果を主殿に送りましょう』


小太郎には何か考えがあるようだ。……私には良い案が全く浮かばないので、ここは彼に任せよう。
私の前であるかっちゃんの測定が終わり、次に私の名前が呼ばれる。
ボールを受け取り、円の中へ入った。


「いくよアサシン。……擬態”精神憑依”!」



精神憑依
その名前通り、現在私の身体に憑依しているサーヴァントに精神も憑依させる。
感覚的には何も変わらないが、中身……身体の支配権利が小太郎に変わったのだ。

小太郎はボールを掴んで感覚を確かめている。
「おい、早くしろ」という急かす声をかけられたので、小太郎が反応して一度視界に相澤先生が入る。
小太郎は特に返事をする事なく、1回目を投げた。


「……60m」


待って!?何もしなくてもそんなに投げられるの、小太郎!?
自分が如何に運動神経がなくて、擬態による効果がどれだけあるかが分かった。
2回目を投げるべく、小太郎は相澤先生からボールを受け取った。


「先程投げた事で感覚を掴めました。……見ていてください、主殿」

『う、うん』


実はテレパシーで会話ができるとはいえ、それはサーヴァント達だけである。
私は受け取る事しかできないので、基本口に出さないと会話は成立しない。
なので今小太郎はがっつり声を出して私と会話をしているのだ。……ある程度声量は抑えてるみたいだけど、こんな静かな空間じゃ聞こえる人には聞こえてるよ……。

まあそんな事を言う権利は私にはない。
こちらはお願いしてやって貰っている立場なんだから。


2回目
小太郎は何かを取り出し、それをボールへ付けた。


『札……?』


確か、小太郎は武器庫を持っていたはず。その中の一つだろうか。
小太郎は数回その場でボールを軽く遊び、


「ふッ!」


ボールを高く上に投げて……



「爆破ッ!!」



___投げたボールが爆発した。
違う、ボールが爆発したんじゃない。あの札が爆破したんだ……!


「主殿の幼馴染みの方のものを参考にしたのですが……」


ピピッと計測完了の音が鳴った。


「それなりの結果だと思います。……如何でしょうか、主殿」


視界に映った端末には”705m”。
周りから歓声が上がる。


「主殿。お身体、お返しします」

『ありがとう、小太郎』


小太郎がそう言ったと同時に自分に身体の支配権利が戻ってくる。
しかし、かっちゃんの反応が怖いな〜…と思っていたのだが。


「……なるほどなァ」


こちらを見て笑っていらっしゃいました。
何となく彼の近くへ行こうと移動する。
……私の次は


「頑張って、いーちゃん」

「う、うんっ」


いーちゃんだ。
すれ違うときにハイタッチを求めると返してくれた。


「……」


今までいーちゃんは何処か飛び抜けた記録を出せていない。
……それもそうか。いーちゃんには個性がないのだから。


「惜しかったなァ。ま、今の所俺の圧勝だ」

「むーっ。でも50m走は勝ってるし、圧勝ではないよね」

「だが、俺の勝ちは確定だな」


嬉しそうに私の頭を小突くかっちゃん。抑えてはいるんだろうけど、叩いてる箇所が角だから地味に痛いんだよなぁ……。


「緑谷君はこのままだとまずいぞ……」

「あぁ?ったりめーだ、無個性の雑魚だぞ」


飯田君の言葉にかっちゃんは私を小突くのをやめて、彼にそう言った。
……何もいえない。かっちゃんの言っている言葉は言い方はよくないけど間違っていないからだ。


「無個性……!?彼が入試時に何を成したか知らんのか?」

「え?」


飯田君の言葉に思わず反応する。
いーちゃん、何かやったの?


「飯田君、何か知ってるの?」


私が飯田君にそう問おうとした瞬間、


「46m」


ロボットが記録を伝える声が聞こえた。
しかし私はそこに驚いているのではない。


「___個性を“消した”」


相澤先生が放った言葉に驚いたのだ。
個性を消した?


「どういう事……?」


困惑しているいーちゃんと、彼と対面している相澤先生を私は呆然と見つめる事しかできなかった。





2021/07/02


prev next

戻る














×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -