第6節「個性把握テスト」



「「「個性把握テストォ!!!?」」」


渡された衣服……体操服を着てグラウンドに出て来た所、相澤先生がそう言った。


「入学式は!?ガイダンスは!!?」

「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事出る時間ないよ」


可愛らしい女の子の質問に相澤先生はそう答えた。
私達は『個性把握テスト』というものをする為に呼び出されたのだ。……入学式に出ないで。


「雄英は自由な校風が売り文句。……そしてそれは先生側もまた然り」


先生の回答にざわめきが生まれる。


「お前達も中学の頃からやってるだろう?個性使用禁止の体力テスト」


普段は個性の使用を禁止されているので、体力テストは個性の使用を禁止した状態で行ってきた。


「実技入試成績のトップは爆豪だったな。……中学の時、ソフトボール投げ何メートルだった?」

「……67メートル」


かっちゃん、トップだったんだ……!
って、ソフトボール投げ67メートルって凄い……!かっちゃん身体能力高いからなぁ。


「んじゃ、個性使ってやってみろ」


相澤先生の指示でかっちゃんはソフトボール投げをする事に。……人前で。
円の中でなら何をしてもいいらしい。


「んじゃまァ……死ねええぇッ!!!!」


……死ね?誰が?……ボール?
かっちゃんの発現にポカーンとしていると相澤先生がこちらを振り返る。


「まず、自分の最大限を知る。……それがヒーローの素性を形成する合理的手段」


相澤先生が持つ端末には“705.2m”と表示されていた。……すごい!!
周りからも歓声が上がる。


「705メートルって、マジかよ……」

「何これっ!面白そう!」

「個性思いっきり使えんだ!流石ヒーロー科ァ!」


周りの声に私も同感だ。
面白そうだし、何より抑える必要がないんだ。思いっきりやれる!
そう思っていると……


「……面白そう、か」


相澤先生がそう呟いた。
その呟きに私は頭上にはてなを浮べる。


「ヒーローになるための3年間……。そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?」


相澤先生がニヤリと笑った。


「よし。8種類トータル成績最下位の者は“見込み無し”と判断し___『除籍処分』としよう!」


相澤先生の発言に私は勿論クラスメートから驚きの声が出、その叫び声はグラウンドに響いた。
入学早々こんな事になるなんて、聞いてないよ!!!?


「ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ!」


長い髪をかき上げ、相澤先生はニヤリと笑った。
その表情は冗談など言っていない……事実を述べていると言った表情に私は感じた。


「最下位除籍って……!入学初日ですよ!?いや……っ、入学初日じゃなくても理不尽過ぎる!!」


先程の可愛らしい女の子が相澤先生にそう言葉をぶつける。


「自然災害、大事故。……そして身勝手なヴィラン達。いつどこから来るか分からない災害……。日本は理不尽に濡れている。……それいうピンチを覆していくのが『ヒーロー』」


相澤先生のいう通りだ。
両親ふたりからずっと聞いていた事そのままだ……!


「放課後マックで談笑したかったのならお生憎。これから3年間、雄英は全力で君達に苦難を与え続ける。更に向こうへ、Plus Ultraさ___全力で乗り越えて来い」


折角雄英に来たんだ。
3年間、耐え抜いて両親ふたりのようなヒーローになるんだ……!
そして、誰かを守れるような力を___


「ぐぇ……っ」

「おい名前……」


突然襟を掴まれたと思えば聞き馴染みのある声が上から聞こえた。……かっちゃんである。


「止めたまえ! 女子に乱暴をするなんて……!!」

「なんで俺には言わねーんだァ!? あ゛ぁっ!!?」


眼鏡を掛けた男の子が止めに入ってくれるが、かっちゃんは聞く耳なし。


「い、いつも私に雄英行け行け言ってたの……っかっちゃんじゃない……っ」

「……そうだな」


急に手を離され、地面に尻もちを着く。


「大丈夫かい?」

「だ、大丈夫です……っ。慣れてるので」


手を差し出してくれた眼鏡を掛けた男の子にそう言い、ありがたく手を借りる。


「俺は『飯田 天哉』。君は?」

「あっ、私は苗字。苗字名前だよ。宜しく、飯田君」


眼鏡を掛けた男の子は飯田君と言うみたいだ。
私に聞くこと聞いて満足したのかかっちゃんはどこかへ行ってしまった。

さて、8種目の体力テストをどう切り抜けようか。





2021/07/02


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