第6節「個性把握テスト」



「…ろ。……きろ。………えぇい、起きぬか名前!!!」

「いだッ!?」


怒鳴り声が聞こえたと思えば頭に走った痛み。
お陰で睡魔から一気に解放された。


「あ、おはようギル……」


目の前には不機嫌そうなギルが。
ギルは無言である場所を指さした。
その方向にはたしか、時計が設置されているは…ず……。


「今日は何がある日だ?」

「……入学式」

「この時間を見て何を思う」



…………遅刻だあ〜ッ!!!?
顔が青ざめる感覚を感じながらギルを置いて先に部屋を出る。


「あ、名前。急がないと遅刻するわよ……」

「あーっ、食パン1枚でいいよっ!!!」

「え、えぇ……?」


やってしまった。
今日は入学式だと言うのに寝坊するなんて!!!
机に置かれていた食パンを咥え、鏡の前に立つ。……運が良いことに整ってる!よし、そのまま行こう!!

食パンを食べながら制服に着替える。
中学校はセーラー服だったが、雄英高校はブレザーのようだ。
……と、着た感覚を味わう暇もなくバッグを持つ。
バッグの中身は昨日のうちにちゃんと準備をし、10回ほど確認した。大丈夫。


「お寝坊なマスターさん。私の魔術で雄英高校まで飛ばしてあげようか?」

「お願いしますっ!!!」


マーリンの言葉に疑いもせずそう答える。緊急事態なんだ、疑っている暇はない!!
食パンを全て口に入れて、コーヒー牛乳を飲み干す。


「名前、忘れ物はない?」

「昨日のうちに確認したからないはず!」


お母さんの言葉にそう返事する。
何度も確認はしたけど見落としがあるかもしれない。その時は誰かに持ってくるようにするようだ。


「……うん、よく似合ってるわ」

「!……ありがとうっ」


私に近づいて来たと思えば、少し乱れがあったらしい。
それを整え、お母さんはそう声をかけてくれた。


「じゃあいくよ〜」

「うんっ」


私がマーリンの側に近づくと、隣に誰かが現れた。
今日の護衛である小太郎だ。


「主殿、転送された後は僕が教室の前までお送りします」

「お願いします……」


小太郎とそう会話をしている間に私達の足下に魔法陣が現れる。


「いってきます!」


前を向いてそう言うと、それぞれ私に声を掛けてくれた。
眩しくなる光に思わず目を瞑った。



***



生徒玄関前に転送された私。急いで室内用の靴に履き替える。
やはりそろそろ入学式だからなのか、人通りが全くない。


「こた……アサシン。雄英の構造分かるの?」

「こういう事もあろうかと、既に確認済みです」


優秀だ……!
うちのサーヴァントが優秀すぎてマスター感動したよ……!!


「主殿、失礼します」


そう言って小太郎は私を横抱きする。
偶に思うのだが、重くないのかな……。みんな遠慮してくれているのか、軽い軽いって言ってくれるけど……。


「すみません主殿、扉の前に人がいたので離れた場所に……」


視界に入ったのは、恐らく私が所属するクラス……『1年A組』。
その教室の入り口前に誰かが立っている。制服を着ていないし、おそらく担任の先生だろう。


「大丈夫だよ、ありがとうアサシン」


小声で礼を言うと、小太郎はお辞儀をした後に霊体化した。
私は黒い服の人が入っていった場所に向かって走り、


「す、すみませんっ遅れました!!」


頭を下げて謝罪する。
……来るはずの言葉が中々こないと思い、顔を上げる。


「……まだ遅刻ではないな」

「よ、よかった……」

「もう少し遅ければ遅刻だったけどね」

「……」


何も言えず、思わず目を逸らす。


「担任の『相澤消太』だ。宜しくね」


私の所属するクラスの先生の名前は相澤先生、っと……。
そう思っていると視界に見知った人物が入る。


「あっ! いーちゃんだっ!」

「ひゃっ!!?」


逸らした視界の先に幼馴染みの姿を捉え、嬉しくて手を掴んでしまった。


「合格してたんだね……! 良かったぁ〜…」

「名前ちゃ……っ、みんな見てるよっ」

「あ、ごめんっ。嬉しくって」


いーちゃんにそう謝る。……騒いじゃダメだよね、と思っていると後ろから溜息が聞こえ、その後にガサゴソと物音が鳴った。
その音が聞こえる方へ振り向くと


「早速だが、これ着てグラウンドに出ろ」


相澤先生が衣類を持って指示を出していた。……what?





2021/07/02


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