第5節「入試」



次の日

特に身体には異常が無かったので普通に学校に行くことにした。
そもそも私は受験生なのだから休んでは受験に響く。



「じゃあ行ってきます!行くよ、カルナ!」

「承知した」



今日の護衛であるカルナに声を掛け、家を出る。
おしゃれな門を開けようと手を伸ばすと、そこには人影が。



「あれ、かっちゃん。おはよ」

「……おぅ」



家のフェンスに寄りかかり、かっちゃんはそこにいた。
挨拶をすると小さく返事が返ってきた。



「大丈夫だった?」

「……それはこっちの台詞だ。テメェの方が……っ」



かっちゃんはそう言って言葉を詰まらせた。
やはり、かっちゃんにはジャックのスキルが効いてないみたいで、昨日の事を綺麗に覚えているようだ。
視線を泳がせており、何を言おうか迷っているようだ。



「私は大丈夫だよ。ほらっ、この通りピンピンして……!?」



自分は大丈夫だという事を伝えようとした瞬間、身体を引き寄せられた。



「良かった……ッ、名前が生きてて……ッ」



気付いた時には私はかっちゃんの腕の中にいた。
初めて聞いた彼の弱々しい声に、申し訳ない気持ちになる。
しばらくの間私はかっちゃんの腕の中から解放して貰えず、通行人からの目線に耐えるしかなかった。



***



流れでこのまま一緒に登校する事になった私とかっちゃん。
かっちゃんは教室に入るなり昨日の事件についてクラスメートに言われていたが、私は何も言われなかった。
……という事は、ジャックのスキルがきちんと発動され機能していると言うことだ。



「……あれ?」



まだ来ていない隣の席を見る。この時間なら来てても可笑しくないんだけど……。
そう思っていると、教室の後扉が開く。



「あっ、いーちゃん。おはよう」

「おっ、おはよう名前ちゃん……!」



入ってきたのはいーちゃんだった。
いーちゃんは頬を染めながら挨拶を返してくれた。



「名前ちゃん、昨日は大丈夫だった?」



やはりいーちゃんにもジャックのスキルが効いていないようだ。
……こんなにも多いと、疑問が湧いてしまうな……。



「うん、大丈夫。……そんな事よりも、勝手にいなくなったからびっくりしたんだよ〜?」

「えっ!?ご、ごめん……っ。あは、あはははは……っ」



ぎこちない笑みを浮かべるいーちゃんを見て、私もつられて笑う。

……このときの私は知らなかった。
私とかっちゃんが助かったのは彼のお陰だという事に。





2021/04/29


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