第4節「神野区の悪夢」


side.ギルガメッシュ

※血流表現あり



「さて……」


名前のお気に入りである雑種共がいなくなった。
ならば後は目の前にいる名前……の姿をした誰か・・と思う存分にやり合える。


先程、名前の急所を貫き、擬態状態を解除させたつもりだったのだが……まだサーヴァント反応が残っている。……それも、1つではなく8つ。

9つの反応は、我と魔術師以外のサーヴァントの事だろう。1つ減ったということは、その内の誰かが解除されたと見るのが正解か。


「本来なら、彼奴の相手をしたい所だが……」


見下ろす先にいるのは黒いマスクを被った雑種。……名前をこの状態にさせた張本人。
この我が直接手を下したい所だが、今の名前を放っておくわけにはいかん。
まあNo.1ヒーローという奴が相手にしているから、あやつに任せてやろう。


「あの姿は……ルーラーではないな」


所謂褐色肌と呼ばれる肌をしているのはルーラーのみ。しかし、あの小僧は白髪で目は澄んだ黄色だったはずだ。
それにあの右目……令呪が目にまで侵食しているではないか。


「……チッ」


飛んでくる黒鍵やナイフ、苦内を躱し宝物庫から武器を飛ばす。
元に戻す方法はもう分かっている。……名前を残り8回殺す・・こと。


「何故……何故だ」

「!? ごほ……ッ!」


……7。

名前の身体に剣が突き刺さる。その衝撃で名前は口から血を吐き出す。
自身の霊基に記録として刻まれているものに似た光景……再生していく名前の身体を見て苛立ちと怒りのようで違う感情が生まれる。


「何故我が……お前を殺さねばならん……!!」


分かっている。
都合の良い事に、擬態中の名前は元の身体……名前自身の身体には一切の傷は残らない。

それでも、どうして愛おしい女を自分の手で傷つけなければならんのだ!
全てはあの雑種の仕業……やはり後で首を落とすとするか。


「げほッ!」

「……6」


嗚呼。
このような状況でなければ、お前の血でさえも愛おしく感じると言うのに。

だが、もうすぐだ。
どうやら殺せば殺すほど取り込んだサーヴァントが消滅する故、弱くなっていくらしい。動きも使う武器、能力も減っている。

先程までの投擲武器を使ってこないのを見るに、アサシン共とルーラーが名前の中から消滅したとみた。


「これは後で、たんまり報酬を貰わねば割が合わんよなァ……名前よ」


ピシャッと自分の頬に返り血が付く感覚がした。



***



「これで最後だ」


取り込むほど使える能力が多く、消滅していくと弱体化し弱くなる。
世の理に適った出来だ。


「……今度こそ名前を返して貰うぞ」


我の宝物庫に入っていない宝具……エクスカリバーが名前の手から離れ落下しながら消滅していった。

……このような状態であろうと、貴様は自身が名前にとって一番だと思っておるのか、セイバーアーサーよ。


意識を失って脱力した名前の身体を捕まえ、さっさとこの場から撤退しようとした時___


「っ!?」


腕に走る痛み。
自分の腕を見れば矢が刺さっており、それを握っていたのは___名前。

おかしい
名前が契約したサーヴァントは我を含めて11人。
そのうち我と魔術師は取り込まれる事なく弾かれ、残り9人のサーヴァントが名前の中にあったはず。もう名前の中にサーヴァントはいないはず……いや。



「サーヴァント反応……!?」



名前の左手に現れたのは___弓。
突き飛ばされたと思えば、その弓の両端には刃が。咄嗟に躱したので当たることはなかった。


「おい魔術師。これは一体どういう事だ」

「それは私も知りたいよ」


花弁を散らしながら現れた魔術師の顔は、珍しく驚いている様子。

対面している名前のみすぼらしい衣服が、流麗な羽衣へと変わっていく。その衣服は我達で言うなら…武装化という奴だ。


「待って……あの姿、覚えがある」

「む。知っているのか」

「直接対面したわけじゃないんだけど……まさか、この英雄とも契約していたとは。いや、施しの英雄がいた時点で察しはついたかもしれない」


名前の姿をした人物は、自身よりも大きい弓で矢を放った。
初めは躱してしまおうと思っていたのだが……


「!?」


この矢は躱すより相殺した方がいいと判断した。
……どうやら名前を巣食っている者は、かなり弓術に長けているようだ。


「ほう、私が放った矢を撃ち落とすとは」

「……貴様、何者だ」


この世界に現界してから、名前が契約しているサーヴァント以外のサーヴァントの反応はなかった。エルキドゥを連れて何度も確認している為、間違いない。

となれば、目の前にいるこのサーヴァントはどのような手段でこの世界へと現界した?



「我が真名を知りたいと……いいでしょう」



名前の姿をしたサーヴァントが告げた、その真名は……。



「___サーヴァント、アーチャー。真名……『アルジュナ』。我がマスターに仇なすものはこの弓…炎神の咆哮アグニ・ガーンディーヴァで打ち落とす!」





2024/04/21


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