第4節「神野区の悪夢」
※血流表現・暴力的表現あり
side.オール・フォー・ワン
脳無格納庫に現れたヒーローを吹き飛ばしジーニストに止めを刺そうとした時、姫の存在を思い出した。
折角だから彼女にお願いしよう。
彼らは苗字名前を良く知っているから、最期に見る顔が彼女なのはさぞかし驚くだろう。あぁ、考えただけで滑稽だ。
「おいで。早速命令を与えよう」
「はい、指令者」
「!?」
僕の隣に現れた姫を見て、ジーニストは「どうして」と言いたげな表情で彼女を見つめた。あぁ、楽しいねェ!!
「“奴に止めをさせ”」
「……命令を確認。実行に移します」
姫は手をジーニストに向けた瞬間、そこから強力な光線を放った。その威力はいとも簡単に彼の腹に穴を開けた。
彼の個性は弔の性に合わない個性だ、いらない。
「生命反応が消滅したのを確認。……まだ他にも標的がいるようですが、如何致しますか」
「う〜ん、どうしようかなぁ」
そろそろこちらに転送した者達がくる頃だ。
そう思っていた時、目の前に黒い液体が現れた。
「ゲッホ!!くっせぇぇ……んっじゃこりゃあ!!」
「げええ……」
「何なんですか……」
「くっせぇ!良い匂い……!」
目の前に現れたのは、今回攫った人物の一人…爆豪勝己君だ。
その後ろには弔と……敵連合。
「先生……」
「また失敗したね、弔。でも、決してめげてはいけないよ?まだやり直せばいい、こうして仲間も取り返した。この子もね……君が『大切なコマ』だと考え、判断したからだ」
弔に近づき、手を差し伸べる。
「いくらでもやり直せ、そのために僕がいるんだよ。全ては、君の為にある」
そう。
全ては弔の為。
「そして、彼女も」
姫も弔の為に引き入れたに過ぎない。
本当は英霊を上げたかったんだけど、仕方ない。方法は違えど、手には入った。
「おいで姫。紹介しよう、君の本当のマスターだ」
土煙の中ぼーっと浮いていた少女に声を掛ける。
こちらへとゆっくり降下してきた姫は裸足でこちらへと歩み寄って来た。
「……は?」
爆豪君の震えた小さな驚きの声が聞こえた。
対して弔は、目を輝かせて姫を見つめた。
「……これが、お姫様?」
「そうだよ弔。君のお姫様だ」
姫は弔の前まで歩き、目の前で止まった。
……そして、先程自分にも向けられた言葉を弔に問いかけた。
「……貴方が、私の指令者ですか」
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2024/02/10
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