第4節「神野区の悪夢」


side.オール・フォー・ワン




「僕は代理さ。他に君のマスターがいる」

「……代理の指令者マスターと認識。では指令者マスター、指示をどうぞ」


様子がおかしくなったと思えば、従順になりすぎだ。
あの男は彼女を兵器として生みだしたと言っていたが、まさかそれが関係しているのだろうか。
試しに先程貰った個性“サーチ”で彼女を調べる事に。


「……へぇ、なるほど」


どうやら彼女の奥底に“とある側面”が隠れていたようだ。
その側面というのは___機械のように命令を受け、それを淡々と実行していくプログラムのような側面だった。

これを見て体育祭での様子に納得がいった。……あの時はこの側面が現れていたのだ。
その側面を呼び起こす為に必要なトリガーは、自身を操る存在…相手を思うがままに操る事を可能にする個性が必要たっだという事だ。


「命令が欲しいのかい?」

「はい。指示された事をこなし、指令者マスターの役に立つことが何よりの喜びですから」


何が喜びだ。
感情の篭もっていない言葉にニヤリと笑う。


「さあ指令者マスター。私に指示を」


無表情で機械染みた口調。
生気の感じられない瞳が僕を見上げる。


「では、もう一度問おう。……僕の為に戦ってくれるかい?」

「それが貴方の望みとあらば」


これだけ従順だと面白くてしょうがない。
連れてくるだけでこんなにも簡単に手に入れられてしまうなんて。にやけが止まらないよ。


「!?」

「僕の望みを叶えてくれるんだろう?なら、その英霊達を使って、役に立ってくれ」


変形させた指を姫の身体に刺し、個性を強制発動させる。
彼女は小さくうめき声を上げて痛みに耐える様な表情を見せた。……へぇ、痛いと思うんだ。あんなにも感情のない表情をしているというのに、面白いなぁ。

なんて事を思いながら姫を観察していた時、彼女の右腕に赤い痣……いや、入れ墨?模様?何かは分からないが、独特の形をしたものが浮き上がった。
それは姫の右半身全体へと広がっていった……瞬間。


「……おぉ」


先程まで上半身を起こしてこちらを見ていた姫が、周りにあるものを粉々に破壊しその場に存在していた。
脳無にでもしようと思って衣服を取っていたんだけど、あの一瞬で着込んだのか目の前にいる姫は白い無地の服を靡かせて僕を見下ろしていた。

ああ、ダメだ。
嬉しくて、楽しくて笑いが止まらない!


ヴィラン連合の偶像たる存在___姫の誕生だ!!」


準備は整った。
さあ始めようか……戦いを。





2024/02/10


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