第4節「神野区の悪夢」


side.緑谷 出久



「狭いですわ……つっかえそう」


僕達は人が横向きになってやっと通れる狭い細道を進んでいた。


「安全を確信できない限り動けない。ここなら人目はないし……!」


見上げていると塀に登れば見えそうな位置に窓を発見。


「この暗さで見れるか?」

「それなら私、暗視鏡を……」

「いや、八百万。それ俺、持ってきて来てんだな実は」

「ええすごい!何で!?」

「やれること考えた時に……要ると思ってよ」


切島君の表情は険しく、此処に来るまでの事をかなり考え込んでいたんだろう。
暗視鏡なんてめっちゃ高いのに……。切島君の覚悟がどれだけのものなのかすごく伝わってくる。


「よし。じゃあ緑谷と切島が見ろ。俺と飯田で担ごう」


僕は轟君の肩に足を乗せ、切島君は飯田君の肩に足を乗せて窓の中から建物の中の様子を見ることに。


「様子を教えたまえ。切島君、どうなっている?」

「んあー…、きたねーだけで……特に、は……うおっ!!」

「切島君!?」


隣で暗視鏡を構えて中の様子を見ていた切島君が突如バランスを崩した。
その表情は恐ろしいものを見たかのようだった。


「おい! どうした、何が見えた!? 切島!!」

「左奥……緑谷、左奥!! 見ろ!!」


切島君から手渡された暗視鏡を使い、言われたとおり左奥を覗く。
……そこには見た事があるものがあった。


「ウソだろ……!?あんな無造作に……アレ、全部___脳無!!?」


まさかここで脳無が作られているとでもいうのか……!?


「?……おいっ!」


切島君から声を掛けられ、反射的に彼の方へと視線を向けた。
その向こうには、トラックが持ち上げられていて……


「!? あれは……!!」


瞬間。破壊音が響き渡り、風圧が僕達を襲った。
僕はバランスを崩して身体を強く打った。


「いっててて……」

「ど、どうなってるだ!?」


僕は八百万さんを担ぎ、飯田君が切島君を担いで、二人に様子を見て貰うことに。


「Mt.レディにギャングオルカ……No.4のベストジーニストまで……!」

「虎さんもいますわ……!」


どうやら先程の破壊音はMt.レディによるものだったようだ。
つまり、ヒーロー達がこの場所へとやってきたんだ……!



「ヒーローは、俺達などよりもずっと早く動いていたんだ……!」

「すんげえ……」

「さぁ、すぐに去ろう。俺達にもうすべき事はない!!」


オールマイトの方……かっちゃんと名前ちゃんはそっちにいるのか。


「オールマイトがいらっしゃるのなら、尚更安心です!さァ早く……」

「ああ」


此処にいても意味はない。オールマイトがいるなら二人は大丈夫だ。
そう思いながら来た道を返していた時だ。


「……すまない虎。前々から良い“個性”だと、丁度良いから……貰う事にしたんだ」

「止まれ、動くな!」


誰だ……?
聞こえた声に耳を傾ける。


「連合の者か!」

「誰かライトを……」

「こんな身体になってから、ストックも随分と減ってしまってね……」


ギャングオルカと虎の声が聞こえる。
もう一人の声は聞いたことがない……ギャングオルカの言う通り、ヴィラン連合の仲間?
コツコツと聞こえる足音が大きくなる。


「ちょ、ベストジーニストさん!もし民間人だったら…」

「状況を考えろ。その一瞬の迷いが現場を左右する。……ヴィランには何もさせるな」


次に聞こえたのはMt.レディとベストジーニストの声。
___その瞬間、大きな破壊音が響いた。


「せっかく弔が自身で考え、自身で導き始めたんだ。できれば邪魔はよして欲しかったな」


振り向くことさえ!一瞬の出来事……何が起きたのか。一瞬、一秒にも満たない!
それでもその男の気迫は、僕等に死を錯覚させた。

いつかオールマイトに言われた言葉を思い出した。……『君はいつか奴と……巨悪との対決しなければならない……かもしれん』と。

先程あの男は『弔』と言った。……死柄木の事だ!!
なんだよ……ウソだろオールマイト……。まさかじゃあ、あれが……あれが___オールフォーワン……!!


「流石No.4ベストジーニスト!!僕は全員消し飛ばしたつもりだったんだ!!皆の衣服を操り瞬時に端へ寄せた判断力、技術…並の神経じゃない!」


響く拍手の音。
状況を知りたいけれど、そんなことしたら……殺される!!!


「折角の機会だ。の性能を試すとしよう」


姫……?
………待って。『姫』っていうワードって、まさか……!!


「おいで。早速命令を与えよう」

「___はい、指令者マスター

「!!!」


聞き覚えのある……いや、聞き慣れた声。
これは、これは___名前ちゃんの声だ!!





2024/01/01


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