第4節「神野区の悪夢」
side.アクア
夕方
アクア事務所
「アクア、警察からお電話です」
「繋げてくれ」
ピッ、と電子音が鳴る。
受話器を耳に当て電話主に「もしもし、アクアです」と口にした。
『もしもし、警察の塚内というものです。アクア、貴方に緊急出動を依頼したい』
「緊急出動……はい。分かりました」
緊急出動……一体どんな内容なんだろうか。
「どんな内容だったの?」
「詳しい内容は聞かされていない。緊急だって事だから、あまり大っぴらに言えないんだろう」
「そう。なら此処を開けるのね」
「ああ。僕がいない間、ここを頼むよ」
「任せて」
名前が行方不明になって二日目
サナーレの表情は明らかに落ち込んでいて、あの子がいなくなった事を引きずっている。
本来は職務中に……それもヒーローがこのような態度ではサイドキック達を……市民達を不安にさせてしまう。
実際サイドキック達は名前がさらわれた事に対して心配の声を掛けてくれた。
その声は嬉しかった。だが、公私は分けなければならない。
例え娘が敵にさらわれてしまっても、日常はいつも通り過ぎていく。……できればあの子を取り返すのは僕でありたいけれど、この個性を私情で使う事は許されない。
……思っていた以上に難しいな、親とヒーローの両立は。
「いってらっしゃいませ、アクアさん」
「ああ、いってくるよ」
***
side.×
「……さて」
暗い部屋の中
そこには1人の男性と、その目の前には何一つ身に纏っていない少女が首、手首、足首を拘束された状態で寝かされていた。
「やっと会えたね、姫。早速、君の騎士達を貰おうか」
男性が少女の身体へと手を伸ばす。
その瞬間、少女が痛みに耐えるようにうなり始めた。
その光景を男性は不気味な笑みで見つめる。
「あああああああああッ!!!!」
少女は悲鳴を上げたあと、電源が切れたかのように動かなくなった。
男性の笑みが不気味さを増す。
「やっと手に入れたぞ、英霊……!この個性があれば…………ん?」
喜んでいた男性が突然、おかしいと言いたげに首を傾げた。
そして、『理解した』と言うようにニヤリと笑った。
「なるほど、そう言う事か!英霊は個性ではなかったと!これはやられた。だけど、それも想定内だ」
男性の手が再び少女に向けられる。そして、怪しげに輝きだした。
「ならば___“プラン2”だ」
2023/11/05
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