第3節「林間合宿 後編」


side.轟 焦凍



「そんじゃ、お後がよろしいようで。……ぐはァ!?」


こちらにお辞儀をしていた仮面のヴィランの顔に見覚えのあるビームが直撃。


「青山君!!」


そのビームを放った本人、青山が木陰に隠れていたのだ。そのビームが直撃した衝撃で、口の中に隠されていた3つの玉……常闇、爆豪、名前が閉じ込められている玉が飛び出てきた。
俺の目の前には2つの玉が。手を伸ばして玉を掴もうとしたが……


「!?」

「悲しいなァ……轟焦凍」


継ぎ接ぎのヴィランの方が早く、取ることができなかった。
勢いよく走っていたお陰でその場に転がりこんでしまった。


「確認だ。解除しろ」

「俺のショーが台無しだ……!」


指を鳴らした音が響く。
障子がキャッチした玉からは常闇が、継ぎ接ぎのヴィランがキャッチしたのは___爆豪と名前。


「姫はこちらに」

「ああ」

「っ!?」


ワープのヴィランが近くに現れたと思えば、継ぎ接ぎのヴィランが名前を突き飛ばした。
その先は……ワープゲート!


「名前!!!!」

「……! 焦凍君ッ!!!」


俺の声に反応した名前がこちらを見て手を伸ばす。


「……ッ!」


その光景はスローモーションのように見えた。
伸ばした手は、伸ばされた手を掴む事ができず空を掴んだ。
ワープゲートは名前を連れ込んだ痕目の前で消え、彼奴が履いていた片方の靴だけがその場に残った。


「あ、あぁ……っ、うわああああああああッ!!!!」


目の前にいた名前の手を掴む事ができなかった。
初めて見た彼奴の助けを求める目、表情。……俺は応えることができなかった。

近くで緑谷の叫び声が聞こえる。
その声が現実を更に実感させた。



ヴィランは跡形も無く消えた。……爆豪と名前を連れ去って。
___俺達は、ヴィランに完全敗北したのだ。



***



ブラドキングの通報により、ヴィランが去った15分後救急や消防が到着した。
生徒40名のうちヴィランのガスによって意識不明の重体15名、重軽傷者11名、無傷で済んだのは13名だった。
___そして、行方不明2名。

プロヒーローは1名が頭を強く打たれ重体、1名が大量の血痕を残し行方不明。

ヴィラン側は3名の現行犯逮捕。彼らを残し、ヴィラン達は跡形もなく姿を消した。


こうして、俺達の林間合宿は幕を閉じた。



第3節「林間合宿 後編」 END





2023/10/13


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