第1節「再会」



お父さんに前世の記憶があることを話し、お母さんと同じようにサーヴァントみんなについて説明した。
やはりサーヴァントみんなはお母さんの時と同じく、受け入れる子と様子見の子に分かれた。

ご飯ができるまで私はリビングである遊びをしようとサーヴァントみんなに提案していた。
どうやら肉体の年齢に釣られているようで、何かをして遊びたくて落ち着かないのだ。



「トランプ?」

「うん!こんなに人数が多いんだから絶対に楽しいよ!」



前の世界ではこんなに呑気に遊べる暇なんてなかったから。本の知識としてトランプの存在は知っていたが、遊んだことはない。



「わたしたちはおかあさんのしたい事ならなんでもいいよ」

「ひ、暇だから付き合ってあげても良いわよ?」



ジャックとジャンヌの答えを聞いて早速準備を始める。しかし、この家は本当に広いな……。私とお父さんお母さん、そしてサーヴァント達含めたら結構な人数がいるのに全然余裕がある。
もしかしてヒーローという職業は結構稼げるのかな……?カルデアも割と収入は良かった方だけどね。



「主殿、トランプをご存知なのですか?」

「……名前だけ」

「………」



私の回答に小太郎がジト目でこちらを見つめる。だ、だって大人数で遊ぶゲームって事しか知らないんだもん……!



「ははっ、なら僕も参加させて貰おうかな」

「お父さん……!」

「ついでにトランプ教えてあげる」



私を膝の上に乗せ、お父さんはカードを切り始めた。
サーヴァントみんなもトランプを知らないのか、お父さんが切っているカードを興味津々に見ている。
因みにトランプに参加しているのは私、お父さん、ジャック、ジャンヌ、小太郎、四郎、ネロ、マーリン、エルキドゥだ。

アーサーはお母さんの手伝いへ向かい、ギルとエドモン、カルナは別のソファーの場所に仲良く(?)座っている。
どうやらギルとエドモンはお互い何か飲み物を嗜んでいるようだ。カルナは部屋を見渡したり、ボーッと一点を見つめたりしている。多分リラックスしているだけだと思う。



「いくら精神と身体が噛み合っていないとはいえ、名前は僕達の子供である事に変わりないからね。子を導くのは親の役目だ」

「そうなの?」

「ああ。例え嫌われても親は子を守るものなんだよ」



ああ。どうやら私は、前世では貰えなかった『本当の愛』というものを生まれ変わった事で手に入れたようだ。



***



私のお祝いとして作られた食事の量はとても多かった。
まあ私のサーヴァント達の中で一番大食いであるアーサーがいたから問題無かったけど。

そんな事よりも私は自分の個性が気になって仕方なかった。
サーヴァントみんなが個性の一部ってどういう事なんだろう。
目の前の事を楽しみつつも頭の隅にはその事がずっと残っていた。
テラスに出て設置されていた椅子に座って夜空を見ていた時、誰かが隣に立った。……ギルだ。



「ねぇギル、私の個性ってどんなものなの?」

「……気になるのか?」



お母さんに私の個性について話していたのはギルだ。もしかしたら、既に私の個性がどんなものなのか把握しているのかも知れない。



「焦らずとも明日になったら教えてやる」

「絶対に教えてくれる?」

「ああ。だからもう休め」



確かに色んな事があって疲れた。魔力も結構消費しているからか、かなり疲労を感じる。



「そういえばギルは誰よりも早く現界してたよね?なんで?」

「我を舐めるなよ名前。我に出来ぬ事などない」



……なるほど、教える気はないと。思わず苦笑いを浮かべていた時、自分の頭に何かが乗る。見上げるとギルの腕が私の頭に伸びていた。



「同じような結末にはさせん。……必ず」

「……うん、ありがとう」



この世界は前の世界と比べて平和な気がする。殺し合いなんて当たり前、誰かが犠牲になるのも当たり前だったあの世界が嫌いではなかったけど、好きでもなかった。

お父さんとお母さんは完全な平和とは言い切れない、と言っていたけれど。まだ私がこの世界の“悪”を知らないだけで、思っている以上に悪という存在は間近にあったりするのだろうか。………どこであろうと、“悪”という存在はいるんだね。

私はきちんとした人間として新たに生まれ変わった。……ねぇ、もしかしたら私と同じようにこの世界に貴方は来てるのかな。
あの人の事を考えたら少しだけ胸が苦しくなった。



第1節「再会」 END





2021/03/16


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