第3節「林間合宿 後編」
「名前ちゃん、やっぱり無茶だ。君は既に限界を超えている」
「おかしいな、こんなはずじゃ……っ」
いーちゃんの怪我は異常だ。少しでも治癒しておきたいのに……!
何もできない自分に腹が立ってくる。
「僕の怪我は大丈夫だから。……それより、敵の目的が名前ちゃんともう一人、かっちゃんだって判明したんだ」
「苗字はUSJの時の件もあるから何となく察する事ができるが、爆豪は何故?命を狙われているのか?」
「分からない……敵はまだ他に目的があるかもしれない。とにかく、施設にいるブラドキング、相澤先生……プロ2名がいる施設が最も安全だと思うんだ」
「なるほど。これより我々の任務は苗字と爆豪を送り届ける事か」
「ただ広場は、依然プッシーキャッツが交戦中……。道なりにもどるのは敵の目に付くし、タイムロスだ。まっすぐ最短がいい」
「敵の数、分かんねェぞ。突然出くわす可能性もある」
「障子君の索敵能力がある。そして轟君の氷結……更に常闇君さえ良いなら、制御手段を備えた無敵の黒影……」
……えーっと、これは私とかっちゃんそっちのけで作戦会議をしているのかしら?
隣でかっちゃんがキョロキョロとしているのが可愛いらしい。
「このメンツなら……正直オールマイトだって怖くないんじゃないかな……!」
「何だこいつら!!!」
「お前中央歩け」
「俺を守るんじゃねぇクソ共!!!」
「名前、歩けるか」
「うん」
「無視すんな!!!」
もう……かっちゃんってば素直に守られればいいのに。変な所で意地張るんだから。
そんな事を思いながら立ち上がった。
「……っ!?」
刹那、急な立ちくらみに襲われた。
倒れそうになる身体を誰かが受け止めた。
「それで歩けるだァ……?」
「は、ははは……」
どうやら私を支えてくれたのはかっちゃんだったようだ。
かっちゃんは舌打ちをしたと思えば、私の前でしゃがんだ。
「乗れ」
「え、でも私重いよ……?」
「いいから乗れって言ってんだろ、アホ!!!」
もう、後から重いって言ったら許さないからね。
かっちゃんの厚意を受け取り、昔より広くなった背中に乗って首に腕を回した。
***
移動して何分経っただろうか。
やっぱり今走っている位置は施設から離れているんだろう。
「おい、寝てんのか」
「寝てないよ……。ただ、頭がボーッとしてて……」
「貧血か?」
「いや、個性の使いすぎで眠いだけ……」
前にはB組の子を負ぶっている焦凍君、いーちゃんを負ぶっている障子君、後ろには常闇君がいる。
こうして会話しているのは自分たちがここにいるという存在証明にもなる。危機感を感じていないって言われるかも知れないけど、黙って歩いているよりはマシだと思うんだ。
「……?」
何か音がしたような?
後ろを振り返るも、首を回せる場所には限度があり視界も限定される。
「?どうかしたか、苗字」
「いや、何でも……」
後ろを歩いていた常闇君が首を傾げて私を見つめる。
……気のせいだったかな。ちょっと警戒しすぎだろうか。
そう思って前を向こうとした瞬間だった。
「!!」
後ろから仮面を被った人物がこちらに向かって来ていたのを視界に捉えた。
「おやおや。……お姫様は感が鋭いようで」
瞬間、私の目の前は真っ暗に染まった。
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2023/9/16
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