第3節「林間合宿 後編」



「無事だったか!さっき、マンダレイのテレパスで、お前が攫われたって言われてっ」

「さっきまでヴィランと交戦してたんだけど、何とか無事。とりあえず、状況が知りたい」


まずは突然のヴィラン襲来。
私達はヴィランが襲来するまで肝試しをしていた為、それぞれバラバラになっている。

私と合流する少し前に、相澤先生から個性の使用許可が出たそうだ。……私はマンダレイのテレパスを聞いてすらないので、さっきのヴィランと戦闘する前に言われたのだろう。タイミングはばっちりだったけど状況は嬉しくなかったって訳か。
そして、私とかっちゃんがヴィランに狙われている事も判明しているという。

最低でもA組はペア同士だった二人くらいには纏まっているだろう。だがB組がどんな配置で此処にいたのか分からない。もしかしたら今も単独で行動している人がいるかもしれない。…さっきの私みたいに。

そして、今の私達のようにヴィランと対面してしまい、戦闘せざるを得ない人もいるだろう。
相澤先生が何故個性の使用許可を許したのか。……きっと身を守るために使えって事だと思うんだ!


「二人の個性は自然の多いここでは使いにくい。なら私が……!」

「ダメだ! 相手はお前を狙っているんだぞ!?不意に近付けばまた捕まるぞ!」

「なら、相手の攻撃を防ぎつつ後退していくしかないね……!」


相手の個性は見ての通り自分の歯を刃物のように変形させる個性だろう。
一対一ならばアーサーとかネロと言った武器を持つ子でいいだろうけど、あのヴィランが厄介なのは全ての歯を変形させて来る事。今挙げた子達の力だけではかっちゃん達を守り切れない。

ならば、この地形を利用できる者に擬態する他ないよね……!


「擬態、“エルキドゥランサー”!」


マナを取り込む事で個性を発動させる。
私の前に氷が生成され、ヴィランの攻撃を防いだ。……ありがとう、焦凍君!
昼間の訓練で思っている以上に身体が疲弊しているのか、擬態に時間がかかったが何とか成功した。

瞬間、ヴィランの歯がこちらへ向かって来た。
咄嗟に地形をドーム状に変化させ、攻撃を塞いだ。


「助かった!」

「それはこっちのセリフだよ。擬態に思ったより時間が掛かって、危うく刺されるところだったもの」


このまま引いてくれたら嬉しいんだけど、そう簡単に引いてはくれないか。


彼女の声が聞こえなかったな……」


応えてはくれたけれど、声が聞こえなかった。カルナが復活していないのを見ると、エルキドゥ含む家に残してきたサーヴァント達もまだ復活していない可能性がある。

こちらの世界でサーヴァントは個性となっている。別に現界していなくても擬態する事は可能だそうだ。……それでも心配な事に変わりはない。
こちらの世界でのサーヴァントかれらの扱いがどうなっているのか、個性が発現し彼らと再会して9年間。まだまだ分からない事だらけだ。


「肉ゥ……肉めえん……肉ウウウウゥーーーー!!!」

「っ!!」


ヴィランの攻撃は止まる事なく降り注ぐ。
相手の攻撃を私と焦凍君で何とか止めるも、限度がある。……体力的には私はとっくに限界を超えている。焦凍君も段々身体に霜が降りてきている事から、限界が近いのだろう。


「近付けねェ!!くっそォ!!最大火力でぶっ飛ばすしか……!」

「ダメだ!」

「火燃えても速攻で氷で覆え!!」

「無茶言わないの、かっちゃん!!」

「爆発はこっちの視界も塞がれる!仕留めきれなかったらどうする!!」

「名前! 鎖!!」

「オッケー……! 焦凍君、一旦防御は任せた!!」


ヴィランの周りに砲門を展開し、鎖を射出した。
しかし相手は咄嗟の反応で射出された鎖を躱した。


「ダメだ、射出速度が遅い……ッ!」


どうやら自分で思っている以上に身体に負荷が掛かっているらしい。あまり砲門を展開しすぎると擬態状態を保てない。


「身のこなし……個性の使いこなしから見るに、結構な場数踏んでそうだね……!」

「……チッ!」


やはり無理に攻撃するのは良くないか。
しかし防戦一方だけでは完全にこちらが不利。何か打開策は……!


「!」


エルキドゥのスキル『気配察知』で、何かがこちらに来る事を感知した。
すると横から大きな音が聞こえ、そちらへと首を回す。


「いた! 氷が見える! 交戦中だ!!」


その音の本体はどうやらこちらに向かって来ているようだ。
気配は3つ。大きなものと小さなもの……誰かが追われている?
っていうか、今の声は……いーちゃん?


「! ……障子君、常闇君!?」


この気配は3つクラスメイトのものだ。
そして一番感知しずらかったのは……いーちゃんか!


「爆豪! 轟! どちらか頼む!! 光を!!」


そこには巨大な黒い影に追われている障子君と、彼に抱えられていたいーちゃんがいた。





2023/8/13


prev next

戻る














×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -