第3節「林間合宿 後編」
身体が揺れる感覚。
ぼやける視界。
……そして覚醒し、状況を判断しようと脳を回転させる。
「……!」
誰だ、この継ぎ接ぎの男性は。……まさか敵!?
私を担いでいるって事は……私を拉致する気!?
落ち着け、ここで慌てるな……!幸いにも敵は、まだ私が気絶していると思っている。まずはこの男性に担がれている状況から脱しないと!
「“強化魔術”……!!」
「!? 起きて……ッ」
自分に強化魔術をかけ瞬間的に身体能力を強化し、男性の背中を思いっきり膝蹴りする。……エドモンから体術を少しだけ教わっていて良かった!!
いくら力の弱い私でも、魔力によって強化されていれば威力は増し相手にダメージを与えられるさ……!
「ちっ……もう少しだってのに」
「……っ」
カルナの気配がない。私が気絶したばっかりに消えてしまったのか!!
誰かを呼び出したい所だけど、相手がそんな隙与えてくれるとは思わない。ならば、ここで少しでも足止めを!
「!!」
炎!!
……あの敵の個性は轟君と同じ炎の個性なのか!!
ただし、あの敵の炎は青。確か青い炎の方が温度が高くて、普段よく見る炎よりも威力が高いはず。……当たったらマズい!
「躱されたか。……思ってたより動けるんだな」
「……」
はっきり言って今この人を相手出来る状況ではない。
カルナが復活するまで逃げるしかない。……でも、逃げ切れるの?
「何か喋ってくれよ、英霊の姫」
「貴方と話す事なんてない……ッ!」
合宿の訓練で魔力は消費していて、多く残っているわけじゃない。だけど、この地は運よく多くのマナが滞在していた。合宿の訓練でも助かっているし、今この状況においてもかなり嬉しい。
つまり何が言いたいのかというと……
「!?どこだ……?」
「“ガンド”!!」
再び強化魔術を使って相手の視界から外れ、背後をとった。
そして敵の背中に向かって人差し指を指し、ガンドを放った。
「ッ!?なんだ、これ……!」
前世でも、このガンドには沢山の場面でお世話になった。
このガンドは強力なものは『フィンの一撃』と呼ばれるらしく、私はそのフィンの一撃に入る程の威力を誇るらしい。恐らくこの異常なまでの魔術回路によるお陰だと思うけど。
しかし、やったことがなくても身体が覚えているものだ。……上手くいって良かった。
ガンドは下手すれば相手を殺せる程の威力を誇る。
まあこれは使用者のセンスとか魔力とかによるんだけど、私の場合は異常な魔術回路を持つお陰でその威力はコントロールしないと本当に人を殺してしまうのだ。
さっきは気にしていなかったから、ちょっとドキッとしたけど動きを止めるだけに留まったようだ。
危ない危ない。敵といえど、殺してはいけないからね。
「もう一発……!」
大丈夫、コントロールはサーヴァント達のお陰で随分上手くなった。今度はさっきより威力を抑えて……!
「“ガンド”!」
鉄砲のように人差し指を敵に向け、ガンドを放った。……ガンドが敵に命中した瞬間だった。
「!?」
「あーあ、失敗しちまった」
なんとガンドが貫通したのだ。……どういう事?さっきより威力はかなり落としたのに……!
敵は最期に一言そう言葉を発して泥になってしまった。
「と、とりあえず助かったって事でいいのかな……?」
その場に尻もちを付き、息を吐く。
……しかし、ここでのんびりしている訳にはいかない。まず私は敵に担がれて運ばれていたから、自分が今どこにいるのか分からない。
誰かと合流したい所だけど、まずは誰かサーヴァントを呼び出したい所。
遠くからは爆発音とかが聞こえる。きっと、みんなもそれぞれ敵と交戦中なのかもしれない。……っていうか私、勝手に個性使ってた!
あれだけ保須事件の時に言われてたのに!!
「まあ、さっきのと今からのは、正当防衛ってことで許して貰おう……!」
右手に令呪が浮かび上がり、サーヴァントを呼び出そうとした瞬間だった。
「肉ゥ!!!」
「っ!?」
後ろから声が聞こえ、振り返る。
そこには歯が変形した人物がいた。……まさか、別の敵!?
どれだけの敵がいると言うの!?
「おい!そこに誰かいるのか!!返事をしてくれ!!」
遠くから誰かの叫び声が聞こえる。
それと同時に氷が敵に向かっていく。
「大丈夫か!?……って、名前!!」
「焦凍君!!」
叫び声と氷で誰かは分かっていたけれど、この状況で味方と合流できたのは嬉しい。
敵が怯んでいる間に轟君の元へと走る。
「って、かっちゃんも!」
「名前……!」
轟君の声がした方へ向かうと、そこにはB組の子とかっちゃんがいた。
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2023/8/13
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