第3節「林間合宿 後編」
side.爆豪 勝己
目の前には敵と思われる奴。
その側には誰かの手首が落ちていた。
「戦闘すんな、だァ……?」
こんな状況で逃げの一択だけだと?
ふざけんな……!!
それに敵って聞いたら、彼奴の顔が頭をちらつくんだよ……!
『かっちゃん』
俺にとって幼馴染というポジションにいる女…名前。
彼奴はとある事件をきっかけに敵連合っていう奴らに狙われている。
USJ事件と呼ばれるようになった、あの事件。
俺は直接見た訳ではないが、しっかり耳で聞いたのだ。……黒い靄の敵がはっきりと幼馴染の名前を口にしたのを。
『苗字が敵に狙われていた?!』
『えぇ。それに『姫』って呼ばれていたわ』
クラスの奴らの言葉で、名前が敵連合に狙われている事が確定した。
どうして彼奴が狙われる。
個性がすげーから?
昔に個性だと言われていた男がいたが、ガキだった俺には理解出来ず、分かっていたのはその男が俺の格上である事だけだった。
……そして、彼奴が個性について上手く誤魔化している事も。
『“英霊”と呼ばれる存在に擬態する。それが、私の個性』
真実を伝えられても、俺は驚かなかった。むしろ、納得していた。
敵が欲しがるほどの個性。ヒーロー基礎学の時にその強さがどれ程のものか分かっていた。個性だけならこのクラスの中で誰よりも強力である事は間違いない。
しかし、彼奴自身が戦闘慣れしていない為か、あの強力な個性は活きていない。言ってしまえば、身体に個性が合っていないと言った所か。
……そう思っていたんだ。
『あれ苗字か?』
『何かいつもと雰囲気違くね?』
体育祭
第2種目 騎馬戦
彼奴は他の奴と先に騎馬を組んでいて、イラっとしたがそのイライラが一瞬だけ吹き飛ぶ光景がそこにはあった。
前騎馬に彼奴は位置しており、炎やら鎖やらと明らかに目立っていた。
それだけなら良かったが、どうみても様子がおかしかった。
まるで操られているような……実際、騎手の男はそういう個性だったみてーだし。
でも、他に操られていた騎馬の奴らとは違う雰囲気を放っていた。それだけは分かった。
「……ちっ」
どうして今あの時の光景を思い出してしまったのか。
わかんねーけど、今は目の前の奴をどうにかしねーと。
……だけど、変な胸騒ぎが収まらない。
この胸騒ぎの答えは、最悪な結果で分かることになる。
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2023/8/5
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