第2節「林間合宿 前編」



身体を揺さぶられる感覚で意識が浮上していく。


「マスター、時間だ」

「んんぅ……、わかったぁ……」


完全に寝起きだという声で返事をし、怠い身体を起こす。

カルナから魔力を分けて貰った後に睡眠を取った事で自分の魔力もある程度回復したようだ。
使用した布団を畳み、自分の服装をある程度整えた後部屋を出た。
寝相は悪い方ではないので、みんなに迷惑かけないと思う……多分。
そんな事を思いながら施設の玄関を潜る。

前方には相澤先生とその先にピクシーボブさんがいる事が確認できる。
足音に気付いたのか、相澤先生がこちらを振り返り話しかけてきた。


「おはよう。もう良いのか?」

「はい。さっきよりも元気ですっ」


ジェスチャーしながら伝えるが、相澤先生は特に反応される事なく視線を前に向けてしまった。
……ちょっと恥ずかしかった。
相澤先生の隣に移動すると、私の隣にカルナが移動した。
それと同時にマンダレイさんが出てきた。


「あ、起きたんだね。具合はどう?」

「大丈夫です。具合は元より良好でしたので」

「そっかそっか。ヒーローは身体が基本だからね」


マンダレイさんはわざわざ近づいて来てくれ私に話しかけてくれた。
彼女と会話している時に、マンダレイさんの背後を小さい影が通った。
その影の正体を確認しようとした瞬間。


「おっ、やっと来たにゃ〜!」


ピクシーボブさんがクラスメイトが帰ってきたと言った。

現在の時刻は……5時20分。
よく見たら辺りはオレンジ色に染まっている。
……相澤先生と話すまで寝ぼけてたのかな、私。
でも会話したお陰で頭は冴えた。脳を働かせないとね。


「……あっはは……」

「ボロボロだな」


私の苦笑いとカルナの率直な感想がクラスメイトに投げられる。
森の奥から現れたクラスメイト達は、制服に泥が付着していたり所々ボロボロになっていたり、個性のキャパオーバーがでていたりとそれはもう悲惨な光景だった。

……すごく申し訳ない。
まあ私もある意味地獄見たから……11騎分のサーヴァント達に魔力を供給してたから。中には魔力燃費が悪い子もいるし……。


「……すまない、マスター」

「えっ、いや……」


心を読まれた……。
別にカルナを悪く言った訳じゃないんだよ?ほんとだよ!?


「何が3時間ですかー!!」

「それ、私達ならって意味!悪いね〜」

「実力差自慢の為か……やらしいな……!」

「腹減ったー!死ぬー!!」


切島君のお腹空いた発言で私もお腹が減ってきた。
今になって食欲が戻ってきたようで、流石に少ししか食べていなかったから胃が悲鳴をあげているんだろう。


「でも正直もっとかかると思ってた!私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されちゃった!……いいよ君等!特に……そこ四人!」


ピクシーボブさんが指を指したのはいーちゃん、かっちゃん、飯田君、焦凍君だ。


「躊躇のない所は経験値によるものかしら〜?」


A組はUSJ事件で早くにヴィランとの戦闘を経験した。
いーちゃん、飯田君、轟君は職場体験で『ヒーロー殺し』と呼ばれるヴィランと遭遇し戦闘をした。
かっちゃんは元々のセンスのお陰で戦闘に関しては才能がある。
確かにあの四人はクラスの中でも経験値は多い方だと思う。
……と思っていた時だった。


「3年後が楽しみ!!唾付けとこ!!!」


ピクシーボブさんが四人に向かって飛びつく勢いで走って行ったと思えば、なんと四人に向かって唾を飛ばし始めた。


「マンダレイ……あの人、あんなでしたっけ?」

「彼女焦ってるの。適齢期的なあれで」


隣で行われている相澤先生とマンダレイさんの会話が耳に入る。
……って、え?唾付けるってそう言う意味!?


「……私も成長したらあんな風に言うようになるのかな……」

「大丈夫だマスター、俺がいる」

「ら、ランサー……!」


カルナの発言にときめきが止まらない。
この子良い子過ぎる……!
カルナと見つめ合っていると遠くから「あああ〜っ!?」と叫び声が聞こえた。


「名前ちゃん!!先に着いてたの!?」

「う、うん。実は……」

「オイコラ名前……!どーいう事だァ……」


いーちゃんからは驚かれ、かっちゃんからは睨まれる。
かっちゃんの表情は完全に人を殺せるレベルだ。
何かの危機を察しカルナの背後に回る。
こちらを見下ろして首を傾げているカルナが可愛い……じゃない!


「姿が見えなかったので心配してましたのよ?」

「心配掛けてごめんね」


百ちゃんにそう声を掛けると安心した様な表情をこちらに向けてくれた。
疲れた様子のみんなを見て、荷物運びを手伝おうと申し出たのだが相澤先生に止められてしまったので、食事の準備を手伝いに向かった。





2022/2/17


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